異なる宿主種の抗体を複数用いたマルチプレックス免疫蛍光染色 (IF) は、凍結固定脳組織などの同一組織切片における複数の細胞標的を可視化できる強力な手法です。しかし、これはラビット以外の試薬の供給の可否や、その特異性および性能といった制約を受ける戦略です。そのため、長い間、解析する標的数を増やすためには様々な宿主種由来の一次抗体を発見する必要がありました。
キメラ抗体は、データの質を維持しつつ柔軟なマルチプレックスIFパネルの設計を可能にする優れた試薬です。CST®キメラ抗体は、遺伝子クローニング技術を用いてin vitroで製造される動物由来の成分を全く含まないリコンビナントモノクローナル抗体であり、特異性の高いラビット抗体の結合ドメインを、ウマやマウス、ネコといった異なる宿主種抗体の定常領域と組み合わせて設計されています。
このキメラ抗体の登場により、既存のIFプロトコールで機能する柔軟性と信頼性の高い製品ラインナップの提供が可能になりました。CSTキメラ抗体を用いることにより、神経細胞やミクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの主なマーカーを標的とする神経特異的なパネルを構築し、データの質を維持しながらマルチプレックス解析の対象を拡大できます。
実験を設計する準備はできていますか? CSTキメラ抗体をご覧ください。
キメラ抗体を用いたマルチプレックスIF実験の設計方法
CSTキメラ抗体は、親抗体の結合ドメインを含みます。つまり、親抗体と同じ結合プロファイルを示します。これらのキメラ抗体は、一般的な固定、透過化、インキュベーションのワークフローを実施した凍結固定脳組織の低プレックス (3-4種類の標的) 免疫蛍光染色に適しています。
神経細胞とグリア細胞の特性解析
キメラ抗体を用いることにより、1つの切片上で神経細胞、アストロサイト、ミクログリアを簡単にプロファイリングできます。例えば、一次抗体反応ステップの際に、マウスキメラβ3-Tublin抗体を用いて神経細胞を、ラビット抗GFAP抗体を用いてアストロサイトを、ウマキメラIba1抗体を用いてミクログリアを同一のスライド上で標識して可視化できます。/70668_B3-Tubulin%20Mouse%20Chimeric%20Antibody.png?width=520&height=350&name=70668_B3-Tubulin%20Mouse%20Chimeric%20Antibody.png)
マウス脳組織における神経細胞とグリア細胞の検出:凍結固定マウス小脳組織を、beta3-Tubulin (D71G9) Mouse Chimeric Monoclonal Antibody #70668 (緑)、Iba1/AIF-1 (E4O4W) Horse Chimeric Monoclonal Antibody #23757 (グレー)、GFAP (E4L7M) Rabbit Monoclonal Antibody #80788 (赤)、ProLong Gold Antifade Reagent with DAPI #8961 (青) を用いてIFで解析しました。ラビット一次抗体は、抗ラビットFc特異的二次抗体を用いて検出しています。
明確かつ特異的な検出を行うには、異なる蛍光色素を標識した各宿主種特異的二次抗体を使用して柔軟なシグナル分離を可能にし、交差反応性を最小限に抑える必要があります。これらの二次抗体を混合して二次抗体反応ステップで同時に添加することにより、ワークフローを効率化できます。CSTキメラ抗体は、親抗体 (ラビット) 由来の結合ドメインのみを維持しているため、交差反応性の懸念を最小限に抑えつつ、研究室にある既存のあらゆる未標識のラビット抗体や信頼できるお使いの試薬と自由自在に組み合わせて使用できます。使用するキメラ抗体の宿主種が他の一次抗体と同じ場合には、正確な検出を確保するため、Fc領域特異的二次抗体を使用してください。
主要な細胞タイプマーカーの検出にキメラ抗体を使用することにより、パネル構築を効率化し、実験デザインにおける宿主種の適合性を心配する必要がなくなります。
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CSTが提供する、使いやすい神経細胞およびグリア細胞のマーカーガイドで最適な神経マーカーを迅速に特定してください。 |
アミロイド斑の検出と周辺細胞の病態の分類
キメラ抗体は、様々なマーカーのマルチプレックス解析によるアミロイド斑周辺の細胞タイプの特性の解明、および病的な細胞サブタイプの特定に使用することもできます。
例えば、アルツハイマー病のアミロイド型モデルマウスのサンプルで、β-amyloid抗体 (ラビットモノクローナル抗体) を用いてアミロイド斑を特定し、キメラマウスIba1抗体ですべてのミクログリアを検出して、ウマキメラDectin-1/Clec7A抗体を用いて疾患関連ミクログリアを標識できます。
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アミロイド斑および周辺細胞の検出: アルツハイマー病アミロイド型モデルマウスの凍結固定脳組織を、Iba1 (E4O4W) Mouse Chimeric Monoclonal Antibody #58410 (緑)、 beta-Amyloid (D54D2) Rabbit Monoclonal Antibody #8243 (赤)、Dectin-1/Clec7a (E3P5W) Horse Chimeric Monoclonal Antibody #43191 (グレー)、ProLong Gold Antifade Reagent with DAPI #8961 (青) を用いてIFで解析しました。
機能的神経活動のマッピング
キメラ抗体は、機能神経学研究における活性化した 細胞集団の高精度な検出を可能にします。
例えば、Tyrosine Hydroxylaseのマウスキメラ抗体を、NeuNマーカーのラビット抗体およびネコキメラc-Fos抗体と組み合わせることにより、成熟した野生型マウスにおけるドーパミン作動性神経細胞の活性化をマッピングして神経活動を測定できます。これにより、1回のイメージングワークフローで神経細胞を特定し、その形態や機能状態といった複数の要素を同時に解析できます。
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ドーパミン作動性神経細胞における神経活動の検出:凍結固定マウス嗅球組織を、NeuN (D4G4O) Rabbit Monoclonal Antibody #24307 (緑)、Tyrosine Hydroxylase (E2L6M) Mouse Chimeric Monoclonal Antibody #29085 (赤)、c-Fos (E2I7R) Feline Chimeric Monoclonal Antibody #42157 (グレー)、ProLong Gold Antifade Reagent with DAPI #8961 (青) を用いてIFで解析しました。
キメラ抗体技術は、厳密に特性解析されたラビットモノクローナル抗体を宿主種の異なる試薬へと変換させることにより、マルチプレックス免疫蛍光染色を簡便化させます。この戦略により、適合する一次抗体の調達という課題は解消され、より複雑な生物学的疑問の解明に必要な、複数標的の明確で信頼性の高い同時検出を可能にする簡便なワークフローが実現します。
実験上の考慮事項と最適化のためのヒント
あらゆるIF実験と同様に、キメラ抗体を用いた実験でも組織切片と培養細胞では異なる処理が必要であり、丁寧なサンプル調製と抗体検証が極めて重要になります。お使いの種で抗体が検証済みであることを必ず確認し、製品データシートに記載されている感度や特異性に関する情報も確認してください。
- 濃度:一次抗体の結合は、その由来 (ラビットまたはキメラ) にかかわらず、抗体反応時の濃度や時間、温度に依存します。CST製品データシートには推奨希釈範囲が記載されていますが、最適な条件を得るには、特定のサンプルタイプに応じたタイトレーションが必要な場合も多々あります。濃度が高すぎる場合はバックグラウンドが高まり、濃度が低すぎる場合はシグナルが弱いまたは得られません。
- インキュベーション条件:反応時間は、シグナル強度に影響します。低温でのより長いインキュベーションは特異性を向上させることが多いため、弊社は4℃で一晩のインキュベーションを推奨しています。
- 二次抗体の選択: キメラ抗体を用いた染色は、間接免疫蛍光法の一種であるため二次抗体が必要です。二次抗体を使用する際の重要な考慮事項は、一次抗体の宿主種に確実に反応すること、使用する蛍光 (色素) と顕微鏡のフィルターおよびレーザー (励起/発光スペクトル) への適合性を示すこと、そしてインキュベーション条件です。「正しくない二次抗体を使用した」、「濃度が高すぎた」、「二次抗体のみのネガティブコントロールを忘れた」は、よくある失敗例です。
CSTが提供する検証済み二次抗体を選択し、実験デザインを簡便化してください。
マルチプレックスIFの簡便化:信頼できる抗体クローンを、より多くの宿主種から選択可能
CSTキメラ抗体は、広範な検証試験により親となるラビットモノクローナル抗体と同等の性能を発揮することが確認されています。これらの抗体は、親抗体と同等の高い特異性と感度を示すため、安心して実験にお使いいただけます。
信頼できるラビットモノクローナル抗体をベースにウマやマウス、ネコのアイソタイプに再設計されているCSTキメラ抗体は、既存のワークフローの変更やデータの質の低下を伴うことなく、マルチプレックスパネルの拡張を容易にします。このアプローチは、実験の設計および実行プロセスを簡便化し、1つの切片における複数の神経細胞、グリア細胞、疾患マーカーのクロストークのない明確な検出を実現します。
次の神経プロジェクトにおけるマルチプレックスIF実験の設定に関する、より詳細な情報をご希望ですか?SfN 2025ポスターをダウンロードしてご覧ください。
その他のリソース
- リソースセンター:空間生物学用マルチプレックスソリューション
- 関連ブログ:ラビット以外の抗体が使いたい:マルチプレックス解析にお勧めのキメラ抗体
- 関連ブログ:マルチプレックスIF実験を成功に導く標識抗体を用いた戦略

