Lab Expectations | CSTブログ

ELISAキットのロット間の再現性を確保

筆者:Emily Eastabrook | 2023年8月23日

Ready-to-use ELISAキットは、最適化の必要がないため研究開発のワークフローを合理化できます。しかし、プロジェクトを軌道に乗せるためには、ロット間で高い再現性を示すELISAキットを選択することが大変重要です。長期にわたる実験の途中でELISAキットのロット番号が変わったとしても、新たなロットが古いものと同様の性能を発揮すること、同程度のシグナル/ブランク (ノイズ) 比を示すこと、アッセイ間の変動係数 (%CV) が許容範囲内であることを確信する必要があります。

抗体は、ELISAキットの主な構成要素であり、「再現性の危機」ー数多くの科学実験について再現することができないという、ますます拡大すしている問題ーに深く関連しています。この問題に対処するためには、研究者は慎重に製品を選択し、抗体メーカーは最高品質かつ厳密に検証された製品のみを市場に出す必要があります。抗体は、標的への特異性が高く、製品データシートに記載されたアプリケーションで機能することが実証されていることが大変重要です。

CSTは、信頼できるデータの取得を確実なものにするため、Hallmarks of Antibody Validation (抗体検証における戦略) を遵守して抗体の開発および販売を行っています。6つの補完的な戦略のうちのどれを組み合わせて各製品に適用するかを慎重に選択することにより、あらゆるアッセイにおけるその抗体の特異性や感度、機能性を決定することができます。つまり、CST®抗体をお選びいただくと、弊社の製品性能保証が適用されるのです。

CST抗体を元に製造されている、弊社のready-to-use FastScan、PathScan®、PathScan® Rapid Protocol (RP) ELISAキットはすべて、直接および間接ELISAよりも優れた標的への特異性を示すように、サンドイッチアッセイフォーマットで構成されています。ELISAキットを設計および製造する際、先に最適な抗体ペアを特定し、アッセイの開発と検証をすべて行うことにより、プロジェクトの全期間にわたるデータの品質を保護します。

私はこの6年間、CSTのプロダクトサイエンティストとして、ELISAキットのロット間のばらつきを試験し一貫性を確保することに専心してきました。弊社は大変厳格な検証基準を採用していることから、科学的な再現性がCSTの中核となる価値観であることがお分かりいただけると思います。最終的には、お客様が弊社のどのロットのELISAキットを使用したとしても、研究を途切れさせることなく、信頼できる結果を取得していただきたいと考えています。CSTの標準作業手順書に従って研究者新たな各ロットを製造することにより、弊社のすべてのELISAキットにおける一貫性および信頼できる性能を保証しています。

ELISAキットにおけるロット試験の要件

新たなELISAキットを市場に出す前に、弊社は包括的な一連の試験を行っています。これにより、新たなロットは標的に対する特異性が高く (低バックグラウンドシグナル)、現行のロットと同等の感度を示し (同程度の検出限界)、幅広いダイナミックレンジを持つ感度曲線を作成することができます。

弊社が行う試験の例を、以下にいくつか挙げます:

ポジティブおよびネガティブコントロールを用いた試験 

検証に用いるコントロールは、ELISAの種類によって異なり、生物学的に関連のあるサンプルの場合もあれば、標的タンパク質の内在性レベル (高いまたは低い) が既知のサンプルの場合もあります。ELISAキットの現行および新たなロットの、異なるタンパク質濃度における吸収シグナルの変化を示すタイトレーション曲線を並行して作成することにより、データセットの相関性を確認することができます。様々なモデルシステムが存在するため、弊社のタイトレーション曲線を参考にして、ロードするサンプルのタンパク質濃度を決定することを推奨します。

弊社のFastScan、PathScan、PathScan RP ELISAキットは、絶対定量ではなく相対定量用として検証されているため、標準化用の試薬を含んでいません。そのため、サンプルをタンパク質量または細胞数で標準化することを推奨します。ただし、FastScanキットに関しては、アッセイの性能を確認するための凍結乾燥ポジティブコントロールを提供しています。

光学密度 (OD) シグナルの閾値

ELISAキットの各ロットが検証に合格するには、ポジティブコントロールサンプルの絶対光学密度 (OD) が1.5以上、ブランクサンプルのシグナルの閾値が0.3未満である必要があります。PTMに特異的なELISAキットを試験する際は、リン酸化されたコントロールが、ネガティブコントロールであるリン酸化されていないサンプル以上の顕著なシグナルを必ず示すように、適切な閾値を設定します。

図1. FastScan™ Cas9 (S. pyogenes) ELISA Kit #29666の代表的なポジティブコントロール (上) とネガティブコントロール (下) の試験データを示しています

さらに、ELISAキットの各ロットは、タイトレーションの最高値に対するシグナル/ブランク比が5.0以上である必要があります。新たなロットが弊社の再現性の基準に合格するには、この値が現行のロットと同程度の範囲内である必要があります。

PathScan® Phospho-SMAD2 (Ser465/467)/SMAD3 (Ser423/425) Sandwich ELISA Kit #12001のシグナル/ブランク比データのまとめ

濃度 (mg/mL) #12001 Lot 34 #12001 Lot 35
0.075 18.3 16.9
0.0375 11.9 11.9
0.01875 7.8 7.7
0.009375 4.8 4.8

図2. PathScan® Phospho-SMAD2 (Ser465/467)/SMAD3 (Ser423/425) Sandwich ELISA Kit #12001のロット検証に合格した代表的な製品のシグナル/ブランク比を示しています

変動係数 (%CV) 値

ELISAキットの新たなロットを検証する際の、もう1つの重要な試験パラメータは%CVです。この値を作成するには、新たなロットの無作為に選択した3つのストリップのタイトレーション曲線を作成し、各レプリケート (複製サンプル) の平均 (µ) と標準偏差 (SD, σ) を算出した後、次の公式を適用します。

%CV = (σ / µ) x 100

現行のロットと新たなロット間のアッセイ間の変動が15%未満の場合のみ、その新たなロットは市場に出されます。

PathScan® Phospho-SMAD2 (Ser465/467)/SMAD3 (Ser423/425) Sandwich ELISA Kit #12001の変動係数 (%CV) データのまとめ

濃度 (mg/mL)  #12001 Lot 34 #12001 Lot 35 標準偏差  %CV
0.075 2.734 3.115 0.040 1.28
0.0375 1.781 2.201 0.030 1.34
0.01875 1.166 1.425 0.028 1.93
0.009375 0.710 0.894 0.015 1.66

図3. PathScan® Phospho-SMAD2 (Ser465/467)/SMAD3 (Ser423/425) Sandwich ELISA Kit #12001のロット検証に合格した製品の代表的な%CVデータを示しています

時間の経過を経てもELISAキットが一貫した性能を示し、シグナルの劣化がないことを確実にするために、定期的に使用期限の半分が過ぎた時点での追跡品質管理 (QC) を行っています。

次のELISA実験結果を高品質なものに

Ready-to-use ELISAキットは、信頼性の高いメーカーによるものである限り、研究に多大な利点をもたらします。アッセイの品質は、用いた抗体の品質に依存します。CSTは、高品質な厳密に検証された抗体を元にFastScan、PathScan、PathScan RP ELISAキットを製造しており、市場に出す前に新しいロットすべての包括的な試験を行っています。ELISAキットの新たなロットはすべて、現行のロットと同等の性能を示すことが確証されているため、プロジェクトを、予期せず中断することなく、予定通りに進めることができます。

最も適した弊社のELISAキットを選ぶ際は、最適なCST® ELISA (酵素結合免疫吸着測定法) キットの選択をご覧ください。

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