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試薬の再考:グリーンケミストリーが推進するCSTにおけるTriton X-100の置換

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科学の厳密性を追求する際に、サステナビリティをおろそかにしてはいけません。環境への配慮が製品選びの基準となりつつある現在の研究環境において、多くのライフサイエンス企業が、研究室で日常的に使用している試薬の再考に取り組んでいます。再考の対象となる化合物に、Triton X-100があります。細胞溶解とタンパク質抽出のワークフローの定番として長らく使用されてきましたが、現在では、環境内に永続的に留まり、水中生物に有害な影響を与える物質として認識されています。

CSTは、より環境に優しい性能の高い代替化合物の検証を行い、Cell Fractionation Kit (Eco-friendly detergent) #42193を提供しています。この取り組みは、アッセイの設計や科学的再現性、環境への責任のすべてを徹底することにより、科学的データの品質を損なうことなくグリーンケミストリーを実現することが可能であることを示しています。 

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Samantha Webster 
コンプライアンススーパーバイザー

「適切なデータや外部連携、徹底した取り組みがあれば、意義のある変化を起こすことは可能です。弊社の経験が、他の研究室で同様の取り組みを行うきっかけとなることを願っています。」

このプロジェクトのきっかけは、シンプルなものでした。意欲のある複数の従業員が、研究室での日常業務における環境フットプリントを削減するために、何かできることはないかと考えたのです。

実用的なグリーンケミストリー:一歩ずつ進める試薬の再考

研究室は、エネルギーから使い捨てプラスチック、様々な化学物質まで、多くのリソースを必要とします。各研究室が環境に与える影響を削減する最も直接的な方法の1つは、危険性の高い化学物質や毒性のある試薬をより安全な代替品に置き換えることです。

試薬を置き換えるプロジェクトを進める際は、次のステップから開始することを推奨します。

  • 現在使用している試薬の在庫の確認: 科学的危険性、規制上のリスク、使用頻度を考慮して、どの試薬に置き換えるかを決定してください。

  • 同僚と早い段階から連携:日常的に行う業務に影響を与えるプロジェクトの場合は、それらに従事する科学者に理由を説明し、早い段階で賛同を得ておくことが重要です。

  • 性能のベンチマークを設定: バイアスを排除し、客観的に代替品を評価できるように、明確な実験パラメータを確立してください。

Triton X-100は、幅広く使用されていますが、環境に悪影響を与える懸念があります。さらに、多くのアプリケーションにおいて同等の性能を示す代替品がいくつか存在するため、取り組みを始める対象として最適です。

Triton X-100を置き換える理由

Triton X-100は、細胞膜の破壊に非常に有効な非イオン性界面活性剤であり、免疫蛍光染色 (IF) や免疫細胞化学染色 (ICC)、免疫組織化学染色 (IHC) における透過化や細胞溶解、タンパク質抽出に広く用いられています。しかし、Triton X-100は、環境内で4-tert-octylphenolへと分解されます。この物質は、内分泌攪乱作用や水生毒性との関連が指摘されており、その有害性に関する証拠が増え続けているため世界的に規制が強化されています。欧州連合のREACH規則では、Triton X-100は、高懸念物質 (SVHC) に分類されて使用が禁止されています。他の国や機関もこれに続き、研究室およびサプライチェーンから完全に排除しようとする圧力が高まっています。

魚とIF細胞

グリーンケミストリーとは?

グリーンケミストリーとは、有害物質の使用や生成を削減または排除するために、化学製品やその製造プロセスを計画的に設計することを指します。汚染を根本から取り除くことに焦点をあてたグリーンケミストリーでは、より安全な溶媒の使用、分解性を考慮した設計、廃棄物の削減、エネルギー効率の向上といった原則が重視されます。

 

置き換えの実行:Triton X-100より安全な代替品の探索

弊社は、Triton X-100を置き換えの対象に決定した後に、研究開発、オペレーション、コンプライアンス、そして製造の各チームが連携し、環境への悪影響を抑えつつ、Triton X-100と同等の性能を示す代替品の評価に取り組みました。

弊社は、主に「ワークフローからTriton X-100の使用を削減または排除しても、高品質な染色、細胞分画の性能を維持できるか?」に焦点をあてました。この最重要に設定した目標を達成できる可能性がある試薬を、代替品の候補として選択しました。

次に、界面活性剤としての効率 (細胞の透過化と溶解)、試薬との適合性 (抗体の性能およびS/N比)、幅広いpHと温度における安定性、組成の堅牢性、再生可能かつサステナブルな生物資源からの入手のしやすさなどの明確な試験基準を設定しました。検証試験は、CSTの異なる複数の部署によって実施されました。各チームは、あらかじめ設定されている試験基準に従い、各アプリケーションに合わせた独自の実験手法を構築して評価しました。

「Triton X-100の代替品候補を弊社の標準IFプロトコールを用いて試験し、適切かつ環境に優しいものを特定しました。」とCSTの免疫蛍光染色チームの科学者、Amanda Davidsonは解説します。「すでに確立されたワークフローでこれらの代替品を検証しているため、お客様は、CSTの高いイメージング精度を保ちつつ円滑に移行できます。」

Triton-Xの代替物のIF試験データを確認しているCSTの科学者、Amanda Davidsonの写真。  

IF部門では、細胞内の異なる標的 (膜、細胞骨格、核) に対するIF検証済みCST抗体パネルを用い、複数の条件下で各候補試薬を用いた際の染色品質やシグナル強度を比較検証しました。画像および定量解析の結果、Triton X-100に代わる複数の代替品において、染色の品質や抗体の性能を損なうことなく、同等またはそれ以上のシグナル強度を示すことが確認できました。 

IFチームは、検証の過程において有力な代替品の性能は抗体に依存し、標的によって最適な界面活性剤が異なる可能性に気づきました。試験データの一部を図1に示しています。 

 Triton X-100を用い、CD44 (156-3C11) Mouse Monoclonal Antibody #3570 (転写膜タンパク質、緑)、alpha-Tubulin (DM1A) Mouse Monoclonal Antibody #3873 (細胞骨格タンパク質、黄)、Tri-Methyl-Histone H3 (Lys27) (C36B11) Rabbit Monoclonal Antibody #9733 (核タンパク質、紫) でHeLa細胞を免疫蛍光染色イメージングし、代替試薬候補と比較しました。

図1: HeLa細胞をCD44 (156-3C11) Mouse Monoclonal Antibody #3570 (膜タンパク質、緑)、alpha-Tubulin (DM1A) Mouse Monoclonal Antibody #3873 (細胞骨格タンパク質、黄)、Tri-Methyl-Histone H3 (Lys27) (C36B11) Rabbit Monoclonal Antibody #9733 (核タンパク質、紫) を用いて免疫蛍光染色してイメージング画像を作成しました。Triton X-100と代替試薬候補を比較検証しています。各数値は、代替試薬候補の蛍光強度を示しています。

「いくつかの環境に優しい界面活性剤を試験したところ、どれが最適かは抗体に依存したままでしたが、Triton X-100と同等の結果が得られました。」とDavidsonは述べます。「今回の検証結果により、イメージング品質を犠牲にすることなく試薬の規制をクリアしたいと考えている研究室に対し、確かな選択肢を示すことができるようになりました。」 

各部門のデータを比較検討した結果、ECOSURF SA-9が最適な代替品であると特定されました。種子油に由来するECOSURFは、グリーンケミストリーの原則の1つである「分解を考慮した設計」を満たしています。Triton X-100と類似した界面活性剤の性質を示し、幅広いpHにおいて安定しており、タンパク質や核酸と反応しないため、細胞分画に適しています。

この代替試薬は現在、CSTの多くの研究室で使用されており、より環境に優しい選択肢をお求めのお客様にはCell Fractionation Kit (Eco-friendly detergent) #42193として提供されています。

成功に向けてのパートナーシップ:Beyond Benignとグリーンケミストリー教育

しかし、継続的な変化を作り出すには、弊社の研究室以外にも目を向ける必要があります。これが、CSTがグリーンケミストリーを科学教育に統合する活動を行う非営利団体Beyond Benignを支援する理由です。

「これまで化学者は、分子のどのような性質が人間や環境にとって有害となるのかを理解するための教育を受けることはありませんでした。」と、Beyond Benignの共同設立者兼エグゼクティブダイレクターであり、世界初のグリーンケミストリーの博士号取得者であるAmy Cannon博士は説明します。「私たちは、K-20の教育現場において、教育者や学生がグリーンケミストリーやサステナブルサイエンスを教え、学ぶことを支援することにより、次世代の科学者や市民に、人の健康と環境を支える製品を設計および選択するために必要なツールを提供しています。」

Beyond Benignの主な取り組みの1つに、CSTが設立スポンサーであるGreen Chemistry Teaching and Learning Community (GCTLC) があります。これは、熱心にグリーンケミストリーに取り組む科学者がリソースを共有し、関心のあるトピックに関するつながりを構築できるオープンソースプラットフォームです。

「GCTLCのようなネットワークは、STEM改革の推進に大変重要です。」と、Cannon博士は説明します。「教育手法の変更には、多くの障害やリスクが伴います。しかし、リソースやカリキュラム、成功事例を共有できる仲間の支えやコミュニティがあれば、そうした課題を乗り越える力になります。」

CSTもBeyond Benignと同様に、持続的な変化を作り出すためには、学生と教育への投資が最も重要な方法の1つであると考えています。創立25周年を記念して、CSTは、支援する非営利団体パートナーのうちの1団体への支援に$25,000を追加する特別キャンペーンを開始しました。皆様にこの追加資金を受けるべき団体への投票をお願いしたところ、その重要な取り組みが認識されたBeyond Benignが受賞にふさわしい団体として選ばれました。

研究室でグリーンケミストリーの取り組みを検討される際は、ぜひBeyond Benignのリソースをご覧ください。試薬について再考するといった小さな変化は、より大きな変化を生み出すことができます。

CSTの環境や社会に対する責任に関する詳細はこちらをご覧ください。

変化を生み出す社風

私が、CSTで働く中で最もやりがいを感じていることの1つは、サステナビリティという考え方が創立当初から組織のDNAに深く根付いている点です。2029年までに炭素排出量ネットゼロの実現への取り組み、社員食堂で植物ベースのランチの提供、研究室での使い捨てプラスチックの使用削減の実施など、CSTは常に業務を改善する方法を探求しています。

しかし、CSTに変革をもたらしているのは、単なる企業としての取り組みだけではありません。弊社のイニシアチブの多くは、Triton X-100の置き換えプロジェクトと同様に、CSTの従業員が日常的に行う業務をより環境に優しい方法で行う方法を見つけることから始まり、これを行動に移すことで実現しています。

研究室での業務に変化をもたらすのは容易ではありません。どの変更が最も大きな影響をもたらすのか、代替品が本当により安全なのか、また実際のワークフローで効果的に機能するかなどを見極めるのは容易ではありません。Triton X-100に代わる環境に優しい非イオン界面活性剤への置換プロジェクトに携わり、確かなデータと周囲との連携、そして強い意志があれば、意義のある変革は可能であることを実感しました。そして、この弊社の経験が、他の研究室でも同様の取り組みを行うきっかけとなることを願っています。

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Samantha Webster
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Samantha Blinnは、CSTのコンプライアンススーパーバイザーです。

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