50年以上前に酵素結合免疫吸着測定法 (ELISA) が発明されて以来、新たな酵素標識や検出化学に加え、比色や化学発光、蛍光を読み取る装置を用いた多様なELISA様免疫アッセイが次々と生み出されてきました。これらのフォーマットは、ワークフローを簡便化し、様々なサンプルタイプや装置に対応できますが、アッセイの基盤は変わりません。同一の標的における異なるエピトープに結合する捕捉抗体と検出抗体の品質と適合性が、最終的にアッセイの特異性、感度、再現性を決定します。
ハイスループット解析かつ多施設での共同研究が一般的な現在、たった1つの品質の低い抗体が、何か月にもわたるスクリーニングを失敗へと誘導し、偽陽性を増大させて、重要なプロジェクトの進退を決める意思決定を遅らせる可能性があります。つまり、抗体の性能は、単なる技術的な要素に留まらず、プロジェクト全体の進退に関わるリスク要因になります。では、マッチド抗体ペアの品質を決定する要因は何でしょうか。また、アッセイ開発チームは、プロジェクト全体にわたる信頼性を確保するために何ができるでしょうか。
抗体ペアベースのアッセイを構築する際は、抗体の特異性、ペアの適合性、標識抗体の早期検証という中核的な原則に注力することにより、初期の実現可能性調査からスクリーニングへの移行、さらにはスケールアップに至るまで、一貫して信頼性の高いハイスループットアッセイを開発できます。
バックグラウンドノイズの低減とデータの向上を実現する抗体の特異性
抗体の特異性は、抗体がオフターゲットへの結合を回避しつつ目的のエピトープを認識する能力を指します。この特異性は、標的タンパク質を正確に検出できるかどうかだけでなく、バックグラウンドシグナル/ノイズに影響を与え、ひいては感度をも大きく左右します。特異性が高い場合は、非特異的結合が低減されることによりベースラインシグナルが低下し、感度が向上します。ハイスループットスクリーニングやバイオマーカープログラムにおいて、これはより偽陽性率の低下、プレート再試験の削減、QCの適正化、再現性のないデータに対するトラブルシューティング時間の短縮に直結します。
抗体が固相表面に結合している状態では、ベースラインとなる結合前シグナルは通常は低い状態を維持しています。しかし、サンプル (血漿または細胞ライセート) を添加すると、それらに含まれる数千ものタンパク質と抗体が非特異的に結合する可能性があります。非特異的な結合が多いほど、バックグラウンドノイズが高くなります。統計的または実験的にベースラインを抑えることはできますが、どれだけカーブフィッティングを行ってもそれを完全に補正することはできません。感度と信頼性の高いアッセイを実現できるかどうかは、最終的には使用される抗体の特異性に依存します。
サンドイッチイムノアッセイを構築する際に、まずは抗体ペアとして機能することが既知の抗体を用いることにより、その成功率を高めることができます。と、CSTのELISA&アッセイ開発部アソシエイトダイレクターであるMark Stumpは述べます。「弊社は、マッチド抗体ペアを厳密に検証しており、その製造を社内で完全管理することにより特異性や感度、再現性、安定供給が確保しています。さらに、これらの抗体ペアや個々のELISA検証済み抗体をキャリアフリー組成やすぐに標識可能なフォーマットで提供することで、様々なプラットフォームとの適合性を実現しています。
信頼性の重要性は、いくら強調してもしすぎることはありません。毎年、米国では再現性のない非臨床研究に推定280億ドルが費やされており、そのうちの約3億5,000万ドルが性能の低い抗体に費やされています1。ハイスループットスクリーニングや創薬開発プロジェクトにおいて、実際に使用するアッセイや組織で検証済みの、各アプリケーション検証済みモノクローナル抗体から着手することは、トラブルシューティングの回数を減らし、プロジェクト後半での失敗リスクの低減につながります。これは、社内の別グループや外部パートナーへアッセイを移管しつつ、あらかじめ定められた性能基準を満たさなければならない場合に、特に重要です。
抗体ペアがもたらす特異性と感度の相乗効果
抗体ペアベースの免疫アッセイでは、サンドイッチ方式で2種類の抗体を組み合わせて用います。一方の抗体で標的を捕捉し、もう一方の抗体でそれを検出することにより特異性が向上します。
2種類の抗体を用いるため、バックグラウンドノイズのリスクが高まるのではないかと心配されるかもしれません。確かにあり得る懸念ではありますが、十分に特性解析されたマッチド抗体ペアが持つ総合的な特異性は、ほとんどの場合、このようなリスクを上回ります。一般的なサンドイッチELISA法では、まず捕捉抗体がプレート表面に抗原を固定し、次に多くの場合酵素標識されている検出抗体が、捕捉抗体とは明らかに異なるエピトープに結合することでシグナルを発生させます。両方の抗体が同じアナライトに結合しなければ検出できないため、オフターゲット反応が起こる可能性は極めて低くなります。
血清や血漿、細胞ライセートなどの複雑なサンプル内の存在量が少ないタンパク質を測定する際は、サンドイッチ免疫アッセイが最も特異的で感度の高いフォーマットとして広く認識されており、Meso Scale Discovery (MSD) やAlphaLISA/ AlphaScreen、Luminex xMAP、TR‑FRET/HTRF、Quanterix Simoa、Bio‑Techne Ellaなど多くの超高感度プラットフォームで用いられています。
高品質サンドイッチな免疫アッセイの構築
組み合わせた2種類の抗体を用いる免疫アッセイは、単一の抗体をを用いたアッセイよりも特異性や感度、正確性が高まりますが、アッセイ開発における課題も増えます。
- 理想的な抗体ペアの特定に多大なリソースが必要:重複しないエピトープを認識し、未標識フォーマットと標識フォーマットの両方で機能する抗体を特定するには、多くの時間と試験を必要とします。
- 結合部位へのアクセス性の確保が重要: 対象となる試験化合物と捕捉抗体および検出抗体との間で、結合部位の干渉がないことを確認することが不可欠です。最適なアッセイ性能を得るには、どちらの抗体も標的と相互作用し、結合できなければなりません。
- アッセイの最適化と抗体ペアの検証に時間と専門知識が必要: 最適なペアを探し、試験を行い、アッセイ性能を最適化するには多大な時間が必要なため、信頼性と再現性の高い結果を得るという最終的な目標の達成に遅れが生じ、プロジェクトの期限に間に合わない可能性があります。
では、プラットフォームを問わず機能する、優れたハイスループット免疫アッセイを作成するにはどうすれば良いでしょうか。
ペアベースの免疫アッセイを成功に導く設計上の実践的な考慮事項
最終的に、サンドイッチ免疫アッセイの信頼性は、使用する抗体の特異性と感度に完全に依存します。早期の抗体ペアの検証 (特に標識フォーマット) により、スケールアップ中または新しい検出法への移行時に生じる可能性のある問題を回避し、標識化学やフォーマットを変更した場合でもアッセイの完全性を保持できます。
抗体ペアベースのアッセイ開発を成功させるための、いくつかの実用的な検討事項をご紹介します。
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使用するフォーマットで独立して検証された抗体の特定:まずは、ペアベース免疫アッセイで検証されたモノクローナル抗体、なかでもメーカーが検証済みのマッチド抗体ペアを検討してください。これらが入手不可能な場合は、複数のアプリケーションで検証済みの抗体の中から標的に合うものを選択し、適合性を広げてください。
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種交差性の確認:使用する抗体が、特定のサンプルタイプで標的タンパク質を確実に認識できることを確認してください。特に、プログラムの過程で複数の生物種やサンプルタイプへの適用、あるいは異なるアプリケーションへの展開が想定される場合は、この確認が極めて重要です。
- 標識フォーマットの早期検証によりプラットフォームへの適合性を確認:未標識で良好に機能した抗体ペアであっても、標識後に同じ性能が維持されるとは限りません。実際に使用する標識フォーマットで早期検証を行っておくことにより、プラットフォームの変更時や検出系の切り替え時に発生するトラブルを回避できます。
- ロットごとの一貫性の管理: ロット間のばらつき、サプライチェーンの管理、サプライヤーにより提供された品質管理に関するデータを確認して、ロット間の一貫性を確保してください。即出荷可能なキットとマッチド抗体ペアの提供、大量注文、ロット予約が可能な会社と連携して、ばらつきを最小限に抑え、試薬の安定供給を確保してください。これにより、プロジェクトの中断を回避し、将来にわたる確かなアッセイ開発を実現できます。
これらの原則を遵守することにより、今後、技術やプラットフォームがいかに進化したとしても、高い信頼性と再現性の両方を兼ね備えた結果を出すことができます。
即出荷可能なマッチド抗体ペアやELISA検証済み抗体から、カスタム標識や大量注文まで、CSTは抗体ペアベースの免疫アッセイ開発を効率化するために作られたソリューションを数多く提供しています。詳細はこちらよりご覧ください。
参考文献
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M. Biddle, P. Stylianou, M. Rekas, A. Wright, J. Sousa, D. Ruddy, et al. Improving the integrity and reproducibility of research that uses antibodies: a technical, data sharing, behavioral and policy challenge. MAbs. 2024;16(1):2323706. doi:10.1080/19420862.2024.2323706


