科学者から、このような質問を受けることが多々あります。「CSTのPTMScan抗体は、どの生物種で機能しますか?」
一次抗体に適切な二次抗体を選ぶ場合や、ヒトタンパク質に対する抗体がマウスや他の生物種の相同なエピトープを認識するかどうかを判断する場合など、抗体ベースのアッセイにおいて交差反応性を考慮することは非常に重要です。検出対象が翻訳後修飾 (PTM) の場合は、さらに複雑な問題が生じます。PTM部位周辺のアミノ酸配列が保存されているにもかかわらず、特定の生物種では修飾される残基そのものが存在しなかったり、検出可能なレベルで修飾されていなかったりすることがあります。一般的に用いられる配列特異的抗体では、これらの制約が、抗体が特定のモデルシステムで機能するかどうかの決定打になります。
しかし、CST® PTMScanキットおよびPTM抗体は違います。これらの試薬は、生物種に関係なくPTMそのものを認識するように設計されており、原理的には、一般的なモデル生物から研究例は少ないものの関連することが分かっている生物種に至るまで、あらゆるサンプルの修飾ペプチドを濃縮できます。
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PTMScan抗体が様々な生物種のPTM濃縮を可能にする方法
CSTのプロテオミクス製品は、周辺のアミノ酸配列に関係なく特定のPTMを認識します。これらの製品ラインナップには、PTMScanキットLC-MSベースのPTM濃縮用PTMScanキットに加え、ウェスタンブロットベースのスクリーニングや最適化に用いる抗体試薬、製品が含まれています。これらはいずれも、異なるアッセイ形式ですが、PTM抗体による認識を活用するという同一の原理に基づいています。
PTMScan製品がどのようにしてプロテオミクスを発展させているかの詳細は、ブログ記事「プロテオミクス解析における革命:20年後のPTMScan」をご覧ください。
例えば、チロシンリン酸化 (pY) ペプチドを濃縮する場合、PTMScanキットに含まれる抗体は、周囲のアミノ酸配列に関係なく、プロテオーム全体にわたるチロシン残基上のリン酸基を特異的に認識して結合します (図1、左)。言い換えれば、CSTのプロテオミクス抗体は、目的のPTMを含む特定の基質ではなく、目的のPTMを含む基質群を認識します。
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| 図1. 左:チロシンリン酸化に特異的なPTMScan抗体の例を示しています。あらゆる生物種におけるチロシンリン酸化の検出に使用できます。右:特定のフランキングペプチド配列に含まれるチロシンリン酸化を特異的に認識する抗体の例を示しています。各生物種に特異的な手法でチロシンリン酸化を同定する際に使用できます。 | |
これは、他の多くのPTM抗体の仕組みとは異なります。従来のほとんどのPTM試薬は、修飾部位とその周辺のアミノ酸配列の両方に結合するため、限られた翻訳後修飾タンパク質やアイソフォームのみを特異的に検出します。その結果、特定の生物種でしか検証されない傾向にあります (図1、右)。
実験の目的により、どのタイプの抗体が研究アプローチにおいて有用かつ適切な役割を果たすかが異なります。例えば:
- 部位特異的PTM抗体は、一般的に生物種ごとの特異性が高いため、特定のタンパク質上の特定のPTM部位や、一連のタンパク質アイソフォーム上のPTM部位の検出に用いられます。
- CSTのPTMScanキットおよびPTM抗体は、PTMのみを認識するため、目的のPTMが十分なレベルで発現している限りどの生物種にも使用できます。これは、以下で紹介する数多くの研究論文において実証されています。
CSTのプロテオミクス製品ラインナップに含まれるPTMScanキットは、抗体を用いてLC-MS検出用にPTMペプチドを濃縮します。PTMScanのワークフローでは、尿素バッファーによるタンパク質の変性、ジスルフィド結合の切断、プロテアーゼによる消化が行われるため、免疫アフィニティー精製 (IAP) の基質となるペプチドは、抗体結合に影響を与える可能性のある二次構造をほぼ有していません。理論上、PTMScan抗体は、この周辺配列に依存しない認識能力により非常に多くの生物種からPTM修飾ペプチドを濃縮できます。
実際に、CSTの科学者は、PTMScanキットの開発段階においてマウスとヒトのサンプルで試験および検証しています。しかし、これまでに弊社が検証した生物種のみにとどまらず、多くの研究者が、さらに多種多様な生物においてPTMScanキットとプロテオミクス抗体が広く普遍的に使用可能であることを実証しています。
様々な種におけるCSTのプロテオミクス抗体とPTMScanキットの実用例
以下は、ヒト以外の様々な生物種にCSTのプロテオミクス製品を適用した近年の論文から、一部を抜粋してまとめた表です。これらの研究対象は、脊椎動物モデル、植物、真菌、原生動物、古細菌、細菌まで含まれており、適切な実験コントロールを設定することによりこれらの試薬が生物種を超えたPTM濃縮を強力にサポートできることを、一連の成果が実証しています。
新しい生物種でPTMScan製品を用いる際の考慮事項
どの生物種を用いる場合であっても、PTMScanベースのLC-MS解析に着手する前には、あらかじめ考慮しておくべき重要なポイントがいくつかあります。
まず、すべての生物種が目的のPTMを保持しているとは限りません。例えば、真核生物の間で高度に保存されており、トリプシン消化によってジグリシンレムナントを生じるユビキチンファミリーは、原核生物には存在しません。まず、個々のPTM抗体を用いてウェスタンブロットで解析することで、目的の修飾が対象の生物種やモデルシステムに実際に存在しているかどうかを確認できます。例えば、Ubiquitin (E6K4Y) Rabbit Monoclonal Antibody #20326は、あらゆる真核生物の全体にわたるユビキチン化レベルの評価に使用できます (図2)。

図2. 未処理 (-) または MG-132 (+) で処理したHeLa細胞、NIH/3T3細胞、C6細胞からの抽出物を、Ubiquitin (E6K4Y) Rabbit Monoclonal Antibody #20326 (上) またはGAPDH (D16H11) Rabbit Monoclonal Antibody #5174を用いてウェスタンブロットで解析しました。
よりコストの高いPTMScanを用いたLC-MS解析へと進む前に、PTMScanと同じPTM抗体を追加実験に用いることにより、様々な細胞株、薬剤処理、タイムポイント間で、目的のPTMがどのように変動するかをあらかじめ見極めることも可能です。様々な条件下でのシグナルの変化を可視化することにより、反応性の高い細胞タイプの特定、感受性または耐性のある細胞株の選別、PTMの変動を最大化するための薬剤濃度やタイムポイントの最適化、ストレス応答や疾患プロセスに複数のPTMが関与しているかどうかの判定などを、きわめて高い費用対効果で実現できます。
Barry Zee, PhD |
「PTM抗体を用いたウェスタンブロット解析は、よりコストの高いPTMScanによるLC-MS実験へと進む前に、目的のPTMがお使いのモデルシステムで変動するかどうかを迅速に見極め、様々な実験条件をスクリーニングできる極めて効果的な手法です。」 |
一例をあげると、Phospho-Tyrosine (P-Tyr-1000) MultiMab® Rabbit Monoclonal Antibody mix #8954とAcetylated-Lysine Antibody #9441は、それぞれリン酸化チロシン (図3) またはアセチル化リジン (図4) の評価に使用できます。
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| 図3. 抗体未処理またはHuman Epidermal Growth Factor (hEGF) で処理 (レーン3、4) したA-431細胞の抽出物に含まれるリン酸化チロシンタンパク質を、Phospho-Tyrosine (P-Tyr-1000) MultiMab® Rabbit Monoclonal Antibody mix #8954を用いて免疫沈降しました。 また、同じ抗体を用いてWBで解析しました。レーン1と2のサンプルのインプット量は10%です。 | 図4. 10% FBSで培養 (レーン1、2) または18時間血清飢餓状態で培養 (レーン3、4) した、未処理またはTSA処理したCOS細胞の抽出物を、Acetylated-Lysine Antibody #9441 (上) またはp44/42 MAP Kinase Antibody #9102 (下) を用いてウェスタンブロットで解析しました。 |
異なる生物種から得られた各サンプルには、処理する上でそれぞれ異なる技術的な問題が生じる場合もあります。例えば、出芽酵母であれば細胞壁の破砕、Drosophila胚であれば高発現する卵黄タンパク質の処理です。対象の生物種に適した、どの生化学的ワークフローを最適化する場合であっても、適切な阻害剤 (例えば、Phosphatase Inhibitor Cocktail #5870など) を用いてPTMを確実に保存し、尿素バッファー中でのサンプル加熱によって生じるリジンのカルバミル化など、LC-MS解析を困難にするアーティファクトの発生を最小限に抑えることが重要です。8M Ureaなどの変性バッファー条件を採用することにより、調製が難しいサンプルであっても、ホモジナイズ効率やタンパク質の抽出率を大幅に向上させることができます。
さらに、目的のPTMを含むSpike-inポジティブコントロールペプチドを用いることにより、初めての生物種での実験を開始する際にIAPステップが正しく機能しているかを検証し、生物種間での比較解析における信頼性を高めることができます。
最後に、LC-MSデータのバイオインフォマティクス解析を行うには、その生物種の全タンパク質配列が網羅された、アノテーション精度の高いデータベースが不可欠です。アノテーションが不十分であったり不完全であったりするデータベースは、潜在的なPTM部位の同定を妨げる原因になります。ただし、タンパク質データベースに依存しないde novo質量分析検索技術の進歩が解決策となる可能性があります。
生物種を超えたPTMプロファイリングで検証されたPTMScanキットとPTM抗体
まとめると、CSTのPTMScanキットとプロテオミクス試薬は、すでに様々な生物種への適合性が確立されており、細胞内のシグナル伝達やタンパク質制御をモニタリングするためにPTMプロテオミクスを活用する汎用的なツールとして、これらの試薬がいかに優れた万能性を備えていることが実証されています。PTM抗体や変性バッファーを用いたIAPワークフロー、LC-MS解析を組み合わせたPTMScanキットとプロテオミクス抗体は、生物種を超えた網羅的なPTMプロファイリングに最適なソリューションです。
あまり一般的ではない種や新たなモデル生物を研究対象とする研究者に対し、これらのデータは、種を超えたPTM濃縮の実用的な出発点として、これらの強力な試薬が極めて有効であることを示しています。
CSTが提供するプロテオミクス抗体とPTMScan LC-MSキット
以下は、生物種を問わずに、一般的なPTMを検出または濃縮できるCSTのプロテオミクスソリューションをまとめた表です。(アセチル化、リン酸化、ユビキチン化)
弊社は、その他のPTMに対する数十種類ものプロテオミクスソリューションも提供しています。広範な製品ラインナップから最適な製品を見つけるサポートが必要であれば、ぜひお気軽にお問い合わせください!
| LC-MS解析用PTMScanキット | ウェスタンブロッティング用PTM抗体 |
| アセチル化 | |
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| リン酸化 | |
| ユビキチン化 | |
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対象の生物種に特異的、または幅広い交差性を持つ抗体が必要です。 |
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CSTは、その他のPTMに対する数十種類ものPTMScanキットやPTM抗体を提供しています。個別のサポートにも対応していますので、いつでもお気軽にお問い合わせください! |
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