貴重なFFPEサンプルで複雑なマルチプレックスIHCを実施している研究者は、その利点と欠点をすでに把握していると思います。マーカーを多用することでより生物学を詳しく解明できる一方で、アッセイの開発にかかる時間や最適化ステップ、リスクが増加します。
しかし、本当に重要な問いへの答えを導き出すには、パネルの拡張が唯一の手段である場合も少なくありません。
-
T細胞は、実際に腫瘍細胞と相互作用しているか?それとも近接しているだけか?
-
同じ微小環境または同じ空間的区画内で、主なチェックポイントが共発現しているか?
-
間質構造は、物理的または機能的に免疫細胞の浸潤を抑制しているか?
これらは空間生物学的な問いですが、これらの答えを得るには柔軟で確実な抗体パネルが不可欠です。ここでの課題は、アッセイの開発に何週間も費やすことなく、また試行錯誤して手に入りにくい貴重なサンプルを浪費せずに、新たなマーカーをパネルに導入できるかという点にあります。

パラフィン包埋ヒト肺腺がん組織を、OX40 (ACT35) Mouse Monoclonal Antibody #98785とAnti-mouse IgG SignalStar® Secondary Antibody Kit #50528 (488、緑) の組み合わせ、CD44 (E7K2Y) Rabbit Monoclonal Antibody #37259 (594、黄)、CD31 (PECAM-1) (89C2) Mouse Monoclonal Antibody #3528 (647、赤)、Pan-Keratin (C11) Mouse Monoclonal Antibody #4545 (750、シアン)、Ki-67 (8D5) Mouse Monoclonal Antibody #9449 (488、ピンク)、MHC Class II (LGII-612.14) Mouse Monoclonal Antibody #68258 (647、橙)、DAPI #4083 (青) を用いてオリゴベースのSignalStarマルチプレックス免疫組織化学染色で解析しました。染色は、Leica Biosystems社のBOND RX全自動免疫染色装置で行いました。
IHC共同利用施設でキャリアをスタートした私は、多種多様な研究プロジェクトに向けたDAB染色スライドの作製に取り組んできました。取り扱う生物学的な問いは多岐にわたりましたが、1つだけ一貫していたことがあります。それは、納期が厳しくサンプルも限られている場合は、いつもCST抗体を頼りにしていたということです。その理由は、単にIHC製品ラインナップが豊富だからではなく、抗体が正しく機能するからでした。
現在、CSTはSignalStar® Multiplex IHCアッセイに使用できるラインナップを幅広く用意しています。そのため、研究者は、CST試薬の信頼性を保持ながら研究の進展に合わせて柔軟にパネルを変更できます。SignalStarは、オリゴベースのマルチプレックスIHC (mIHC) アッセイであり、わずか2日間での最大8種類のマーカーとDAPIの検出による定量可能な空間データの取得を可能にします。
ここで、アッセイを最初から構築し直すことなくmIHCパネルを拡張する、3つの実践的な方法を紹介します。
1. 直接標識抗体:マーカーを追加する最も迅速な方法
「直接標識した一次抗体の追加」は、最も簡単なパネル拡張方法であり、すぐに作業を進める必要がある場合などに適しています。
この方法では、あらかじめ蛍光色素で標識されたIHC検証済み抗体を使用するため、SignalStarの反応系を変更することなくワークフローに組み込むことができます。インキュベーション後すぐにイメージングでき、増幅ステップは必要ありません。
|
Kelsey Goldman シニアリサーチアソシエイト |
「直接標識法でSignalStarパネルを拡張する場合は、より存在量が多い標的を優先してください。 SignalStarパネル内の抗体のシグナルは増幅されますが、追加する一次抗体のシグナルは増幅されません。そのため、増幅なしで明瞭なシグナルが得られる標的を選択する必要があります。」 |
SignalStarアッセイでの直接標識抗体の使用方法には、パネルデザインに応じて主に以下の2種類があります。
-
SignalStar染色後:SignalStar染色の最終ラウンドが終了した後に、Fluorescence Removal Kitを用いて一次抗体の結合を維持しながらすべての蛍光シグナルを除去し、その後にいずれかのチャンネルの直接標識一次抗体を追加します。
-
最終染色ラウンド中:SignalStar染色の最終ラウンド中、ライゲーションステップ後に直接標識一次抗体を追加します。この場合に注意すべきは、用いる蛍光色素を最終SignalStarイメージングラウンドで使用するものと同じ蛍光色素/チャンネルにならないように考慮することだけです (例えば、Alexa Fluor® 488標識CD4抗体を、488 nmチャネルで検出されるSignalStar Vimentin reagentと組み合わせないようにします)。
SignalStarアッセイでは、488、594、647、750 nmの4種類の蛍光チャンネルを用いて2回の繰り返し染色を行います。通常、594と647 nmのチャンネルは、最も強いシグナルが得られるため存在量が少ない抗原に適しています。一方、488 nmは自家蛍光の影響がより大きく、750 nmのシグナルはより弱い傾向があります。標的の存在量を考慮して蛍光色素を選択することにより、追加の直接標識抗体から解析可能なシグナルを確実に取得できます。
2. SignalStar二次抗体:高速かつ柔軟なIHCパネル拡張
スピードを優先しつつ、直接標識抗体よりも高い感度を必要とする場合は、SignalStar二次抗体を用いたパネル拡張が最適な選択肢になります。
SignalStarワークフローではオリゴ標識一次抗体を使用しており、パネルの基本となるマーカーの検出に二次抗体を必要としません。このパネルに、抗ラビットと抗マウスの両フォーマットが利用可能なSignalStar二次抗体を組み込むことにより、ラビットまたはマウス、あるいはその両方に由来するあらゆる一次抗体を追加マーカーとして導入できます。
![]() |
![]() |
図1. ヒト扁平上皮がん組織をCOL1Aで染色しました。右:未標識一次抗体COL1A1 (E8F4L) Rabbit Monoclonal Antibody #72026および従来のDAB IHCプロトコールを用いてCOL1Aを検出しました。左:連続組織切片で、左と同じ未標識一次抗体およびAnti-rabbit IgG & CO-0055-594 SignalStar Secondary Antibody Kit #41483を用いてCOL1Aを検出しました。マルチプレックス化した蛍光検出でも、同等の局在を示していることが分かります。
CSTのIHC検証済み抗体の多くは、ラビットまたはマウスのリコンビナントモノクローナル抗体であるため、FFPE組織のIHCで検証された弊社の幅広い広範な試薬ラインナップを用いてすぐにこの戦略を実施できます。
二次抗体の追加によりステップがいくつか増えます。また、どのパネル調整でも同じですが、簡単な最適化を行うことを推奨します。標識二次抗体を用いた間接検出の場合は、複数の二次抗体が各一次抗体と結合するためシグナルの増幅が可能になります。これが、存在量の低い標的の検出に役立ちます。一次抗体のタイトレーションを実施し、連続切片を用いたDAB染色との比較を行い、二次抗体を用いたマーカーの染色強度やパターンが未標識の親抗体と同等であることを確認することを推奨します。
3. カスタム標識抗体:本当に必要なマーカーを追加
抗体が事前に検証済みであることや、パネルですぐに使用可能であることは、生物学においての必須条件とは限りません。
希少な免疫細胞サブセットや基質標的、新たなチェックポイント分子など、研究の成否を握る特定のマーカーがある場合は、カスタム標識サービスを活用してそれらの抗体をSignalStarパネルに組み込むこともできます。
SignalStarアッセイは、IHC検証済み一次抗体に結合させたオリゴタグにより成立します。このオリゴタグが、FFPE組織上での蛍光シグナルの増幅と検出を可能にしています。CSTの抗体標識チームと連携することにより、弊社が提供するIHC検証済み一次抗体をSignalStarに適合する試薬に変換できます。
まず、弊社チームと共に、IHC検証済み一次抗体とご希望のSignalStarチャンネルを選択します。これらが決定したら、特定のチャンネルへの標識作業を弊社が行い、連続切片をもちいたDAB染色結果を提供します。
非常に限定的な標的を追跡する必要がある場合は、カスタム標識が最も柔軟性の高い選択肢になります。弊社のカスタム標識の専門家にご連絡ください。プロセス全体にわたるサポートを提供します。
パネルを拡張して空間生物学の新たな知見を取得
Cell Signaling Technology (CST) は、業界トップクラスの幅広い検証済みIHC抗体ラインナップを提供しており、SignalStar技術はそれらをベースに構築されています。
直接標識でパネルを拡張する場合も、二次抗体を介してマーカーを追加する場合も、カスタムオリゴ標識試薬を作成する場合も、FFPE組織用に最適化された、弊社の専門家チームにより社内で厳密に検証された信頼できる試薬でアッセイを実施できます。これは、研究の進展に伴い、新たなマーカーや新たな組み合わせ、新たな仮説に合わせて自在にパネルを拡張できることを意味します。その都度、最初から検証をやり直す必要はありません。
つまり、実験を迅速に繰り返すことができる柔軟性と、ここぞという時のマルチプレックスデータの信頼性の両方を得られます。
CSTのSignalStar Multiplex IHCおよび空間生物学ソリューションに関する詳細は、こちらをご覧ください。




