「プロテオミクスをシンプルに」のテーマの続編として、Cell Signaling Technologyプロテオミクスグループの主席科学者であるMatthew Stokes博士と、ハーバード大学メディカルスクールGygi Labのポスドク研究員であるChristopher Rose博士によるウェビナーをお送りいたします。
Stoke博士は、LC-MS/MS解析の前に、複雑な混合物から抗体を用いて特定の翻訳後修飾 (PTM) (リン酸化、メチル化、ユビキチン化など) を受けたペプチド を濃縮するPTMScan®技術についてお話します。Rose博士は、PTMScan技術を同重体標識、中でもタンデム質量タグ (TMT) と組み合わせることにより、Bortezomibで処置した細胞内でユビキチンが変化した15,000以上の部位を定量化した方法についてお話します。
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PTMScan®プロテオミクスの概要:翻訳後修飾を受けたペプチドの同定と定量
タンパク質の翻訳後修飾 (PTM) は、細胞増殖や発生、疾患など、生物学のさまざまな現象を制御しています。このようなPTMをプロテオミクス解析で解析することは、細胞内シグナル伝達に対する理解を深めるための主要な方法となっています。現行のプロテオミクス解析法や機器を使いて、一回の実験で何千ものペプチドを特定することができます。Cell Signaling TechnologyのPTMScanプロテオミクスは、抗体ベースの濃縮と液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析 (LC-MS/MS) を組み合わせ、翻訳後修飾を受けたペプチドを同定し定量します。細胞株、組織、異種移植片、その他の生物学的材料を用いて、タンパク質のリン酸化、アセチル化、ユビキチン化、メチル化、スクシニル化、カスパーゼ開裂などの翻訳語修飾を解析するための製品やサービスをご用意しています (PTMScan Discovery)。重要なシグナル伝達経路を標的として、より詳細な解析を行うためのサービスもご提供しています (PTMScan Direct)。PTMScan法は、バイオマーカー発見、医薬品開発、および細胞シグナル伝達への理解を深めるための研究で使われ、成功を収めています。
その例として、ユビキチンレムナント免疫沈降、nLC-MS/MSおよび同重体タグ標識を用いた、マルチプレックス定量ユビキチローム解析があります。近年、質量分析器や試薬が進歩したおかげで、大規模なマルチプレックス定量的プロテオミクス実験が行いやすくなっています。最近では、同重体タグ標識 (タンデム質量タグ) などを使い、10種類の実験サンプルから8,000を超えるタンパク質を、1.5日という解析期間で定量化することができるようになりました。しかし今までは、細胞ユビキチロームの解析は、1回の実験でマルチプレックス化できるサンプルの数に制約がありました。このウェビナーでは、Cell Signaling Technology社のPTMScan Ubiquitin Remnant Motif Antibodyによる免疫沈降や、ペプチドを同重体タグによって標識する方法などの、サンプル調製に着目してお話します。また、細胞ユビキチロームを高い精度で解析する機器 (Synchronous Precursor Selection MS3、SPS-MS3など) についてもお話します。さらにはこの方法を応用し、Bortezomibによる処置後、10種類のサンプルに渡って15,000を超えるユビキチン化部位における変化を同時に定量化したことについてもお話します。