第5回前途有望な黒人科学者エッセイコンテストの受賞者が決定しました! CSTは2020年以来、黒人歴史月間の開始に合わせて、米国機関に所属する優秀な黒人科学者たちのストーリーを彼らの受賞エッセイと共に紹介しています。今年の受賞者はこちらです:
CST、Cell Press社、Elsevier財団が毎年主催するこのエッセイコンテストでは、大学院生または博士研究員2名、学部生2名を表彰し、科学的なキャリアを支援するための賞金10,000ドルと、交通費500ドルを授与します。
弊社は、今年も受賞者による熱意にあふれた説得力のあるストーリーに魅了され、これらのストーリーを皆様に共有できることを大変嬉しく思います。受賞者の紹介と、 リンク先の今月のCell誌にて公開されている彼らのエッセイをご覧ください。
科学とアイデンティティは、「誰が」使用するかによって、救いになることもあれば害をもたらすこともあるツールです。これは、Victor Ekuta氏のエッセイの中心的なコンセプトであり、彼が若手黒人医師科学者としていかに不当に扱われ、監視され、懐疑的な目で見られてきたかが書かれています。Ekuta氏は、医師になることを周りから反対されながらも、神経科学の分野、特にアルツハイマー病の研究への道に進み、これらを救いのためのツールとして、時には他人が自分に課そうとする限界に対する武器として、いかに活用してきたかを語っています。
現在、モアハウス医科大学の神経学研修医であるEkuta氏は、Penn Alzheimer's Disease Research Centerの博士研究員、Clark Scholar、Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative (ADNI) のHealth Equity Scholarなど、いくつかの学術職を兼任しています。
「結局のところ、アルツハイマー病のバイオマーカーであれ、ヘルスケアの次なる革新であれ、私たちが作り上げるツールは、大いなる救いになることもあれば、想定外の危害につながることもあるのです。」
- Victor Ekuta, MD (@victorekuta)
Ekuta氏のエッセイには、黒人と褐色人種の患者におけるパルスオキシメーターの精度の調査から神経画像バイオマーカーの人種間格差の研究に至るまで、信頼できるツールが、知らず知らずのうちに不平等を蔓延させる凶器になっていたという事例を彼がいかに目撃してきたかが書かれています。
また、Ekuta氏は、自身の仕事以外にも、社会的地位の低い背景を持つ学生を指導し、自らの経験を通して、彼らのアイデンティティと科学がいかに変化をもたらすために利用できるかを示しています。Ekuta氏は自身のエッセイの中で、「未来を見据えた時の、私の使命は明確です。脳を健康に保つためのツールが、誰ひとり取り残すことなく、すべてのコミュニティに平等に役立つようにすることです。」と述べています。
Jheannelle Johnson氏は、音楽を通して科学に出会い、そしてそれは彼女の科学者としてのキャリアを導くリズムであり続けています。彼女のエッセイには、アルツハイマー病 (AD) を患った彼女の祖母が自身のアイデンティティを失いはじめた頃、言葉によるコミュニケーションが困難になる中でも、聞き慣れた音楽により言葉を失った祖母とのつながりを維持できたことが書かれています。Johnson氏は、音楽と記憶の間の強い「つながり」を目の当たりにしたことがきっかけとなり、脳の機能について生涯にわたる好奇心を抱くようになりました。
「音楽と記憶の間に見られる強いつながりは、脳の機能に対する好奇心を強く刺激しました。科学とは、心の中に隠された調和、特に記憶がどのように形成され、保存され、そして時には失われていくのかを解明する手段だと考えるようになりました。」
- Jheannelle Johnson (@JheannelleJ)
ハワード大学で学士号を取得したJohnson氏は、現在スタンフォード大学の神経変性計算フェローシップを修了しています。彼女の研究は、リズムと音符の相互作用が音楽を構成するように、分子経路に沿った複雑な相互作用がいかにして病気のメカニズムを構築するかに焦点を当てています。彼女は学部生の頃、アフリカ系アメリカ人のコミュニティでしばしば併発するADとII型糖尿病の潜在的な関連性を調査していました。
また、Johson氏のエッセイには、COVID-19のパンデミック下、さらにアメリカ国内で黒人に対する残忍な攻撃が繰り返される状況下で、彼女自身が第一世代の大学生として大学生活を送る中で経験した苦労も綴られています。彼女はこれらの経験を活かし、より多様な人々を研究コホートに含めるよう求める活動や、非営利団体Black in NeuroのDevelopment Directorとして多様性や公平性、包括性を推進する努力を続けています。Agbugda氏は自身のエッセイで、「私は、多様な集団におけるADバイオマーカーを特定して早期介入を可能にし、分子的発見にとどまらず、地域社会にまで届くような、地域社会に焦点を当てた安価な診断法を開発することを目指しています。」と述べています。
社会科学と電気技師の両方の訓練を受けたNyasha Milanzi氏の仕事は、再生可能エネルギーや気候変動対策、テクノロジーと公衆衛生、地域社会との関わりを中心に据えています。彼女のエッセイでは、彼女が十分なサービスを受けられない地域社会を日々支援しているのは、ジンバブエにおける家族の奉仕と教育という伝統を受け継いでいるからであることが綴られています。
Milanzi氏は、恵まれない地域社会における公平なエネルギー転換の構築を中心に研究し、先日ミシガン工科大学に修士論文を提出しました。これまでに、手頃な価格の大気汚染センサーや太陽熱調理器などといった受賞歴のあるサステナブルな機器を発明し、地域社会に根ざした公衆衛生プロジェクトを複数手がけてきました。
「「工学」で環境への有害な影響を測定するツールを提供し、「社会科学」で地域社会固有の背景に関する知見を得ます。これらにより、提案されたソリューションが地域社会のニーズと優先事項に合致させることができます。」
- Nyasha Milanzi (@n_milanzi)
Milanzi氏は、学際的な分野に重点を置いているため、技術的ソリューションだけでは公平な変化を生み出すには不十分であることを認識しています。システム化された不公平に対処するための彼女のアプローチでは、提案された技術的ソリューションを各コミュニティで確実に機能させるために、工学のバックグラウンドと社会科学の研究から得た知見を組み合わせて使用します。
Milanzi氏は自身のエッセイで、「気候変動対策を通じてレジリエントな地域社会を構築し、分野を超えて協力し、十分なサービスを受けていない人々の声を中心に据え、従来の技術者の限界を押し広げることを使命としている。」と述べています。
Kenna Gloria Agbugba氏のエッセイでは、彼女がナイジェリアで育ったとき、貧困とジェンダーへの偏見によって、女子の夢がしばしば制限されていたこと、そして高校では、上級微積分を勉強するたった2人の女子生徒のうちの1人だったことが綴られています。彼女の目標は、男性が支配する分野で働く若い黒人女性としてナイジェリアに戻り、将来の世代のためにより強固な教育基盤を築くサポートを行うことです。この使命が、ユーザーエクスペリエンスエンジニアとしての彼女の仕事の原動力となり、十分なサービスを受けていない地域社会に手を差し伸べ、彼らの教育的な旅をサポートする、アクセシブルでユーザー中心のテクノロジーを作り上げています。
「私にとって科学は、「STEM分野は限られた人々のためのもの」という既成概念を覆すための武器となりました。私の進む道は、私自身を高めるだけでなく、もっと大きな夢を見るべき他の若い女性たちをも励ます道となるでしょう。」
- Kenna Gloria Agbugba
現在、フィランダースミス大学のコンピューターサイエンス学部の学部生であるAgbugda氏は、デトロイトの学生を支援するために、受賞歴のあるAI主導の読み書き支援アプリのプロトタイプを設計するチームを共同で率い、AIを搭載したiOSアプリを開発する全米科学財団プロジェクトに取り組んでいます。
Agbugda氏は、いくつかのインターンシップ、受賞歴のあるSTEMプロジェクト、名誉ある奨学金賞を通じて、若い黒人女性の障壁を取り除くという強い意志を固めました。彼女の目標は、若いナイジェリア人、特に女性が故郷を離れることなくSTEMの分野で活躍できる未来を築くことです。Agbugda氏は自身のエッセイで、「どんな苦難や成功を経験しようとも、私の歩む道は、常に自分自身を超えた大きな目的、すなわち、他の人々が自立して世界を変える力を得られるまでサポートすることに焦点を当てています。」と述べています。
前途有望な黒人科学者に応募する数百人もの人々の才能は、たった4人の受賞者にとどまらないという認識のもと、毎年佳作も選出しています。
以下の受賞者のエッセイは、その優れた業績が認められて、学術誌iScienceに掲載されました。
物理科学、データサイエンス、地球環境科学部門受賞者
前途有望な黒人科学者の表彰は、CSTとCell Press社、Elsevier財団が年次開催するエッセイコンテストです。若手研究者の専門的能力の開発をサポートするための資金を提供することで、科学コミュニティの表に出ることの少ない声を取り上げることを目的としています。多様性を高め、科学の分野における不平等を改善することを目標に、2020年にCSTおよびCell Press社によって確立されました。
応募者には、科学的な展望と目標、科学に興味を持ったきっかけ、より包括的な科学コミュニティにどのように貢献していきたいかをまとめたエッセイを提出していただきます。ライフサイエンスとヘルスサイエンスに加え、地球および環境科学、データサイエンス、物理科学の分野における学部生2名および大学院生2名の受賞者が学術諮問委員会により選出されました。各受賞者に対し、それぞれ10,000ドルの賞金、交通費500ドル、Elsevierカンファレンスへの登録が授与されるだけでなく、受賞エッセイをCell誌に掲載します。さらに、特別賞に選出された4名に対し、それぞれに500ドルの賞金が授与され、受賞エッセイをiScienceに掲載します。
応募方法を含め、この賞に関する詳細はCell Press社のウェブサイトをご覧ください。
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