腫瘍エコシステムとその中の細胞間の伝達に関する研究は、腫瘍生物学を理解し新しいバイオマーカーを定義することにより患者のケアを改善し、最終的に新しい治療ルートと標的を特定するために必要不可欠です。腫瘍エコシステム (TME) の機構を研究し理解するためには、腫瘍組織の高度に多重な染色画像が必須です。これによりどの細胞の種類が腫瘍内に存在しているか、その機能状態、どの細胞間相互作用が存在しているかを理解することができます。多重染色組織画像を得られるようにするため、当社はイメージングマスサイトメトリー (IMC) を開発しました。IMCは新しいイメージング手法であり、金属同位体をレポーターとして抗体に標識することで、組織において細胞レベルの分解能で同時に50以上のタンパク質を可視化することができ、将来的には100以上のタンパク質を可視化できると期待されています。したがって、IMCや抗体を用いたその他のマルチプレックスアッセイ系においては、特異性が高く、再現性があり、高度に検証された抗体が必須となります。
演者らは、IMCを用いて数百もの乳がんサンプルを定量的に分析しました。新規の画像処理演算を駆使した解析により、驚くべきレベルで腫瘍内と腫瘍外の不均一性が明らかとなり、既知のヒト乳がんのサブタイプとそれらと相互作用する間質細胞のタイプにおいて新しい多様性を同定しました。さらに、分析した患者の臨床成績と相関性のある、腫瘍微小環境における細胞間相互作用モチーフを同定しました。
要約すると、演者らの実験結果は、IMCにより細胞内レベルの分解能で、TME内の細胞タイプや細胞の状態、細胞間相互作用について、狙い通りの高次元の分析データが得られることを示しています。細胞集合体における複雑な細胞状態の空間的関係は、バイオマーカーとして使用することができます。演者らは、IMCが、疾患を理解し診断するため、また、治療方法を選択するためのシステム生物学的アプローチを可能にすると考えています。
学習目的
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