代謝の測定には、様々な状況に応じていくつかのアッセイを使用することができます。この中には、代謝速度を直接測定する方法だけでなく、低酸素状態や酸化ストレスなど、正常状態と病態において代謝に直接影響するシグナル伝達経路や環境要因を調べる方法もあります。
低酸素と酸化ストレスは、細胞代謝の変化の原因であると同時に結果でもあります。Cell Signaling Technologyは、低酸素と酸化ストレスの主要なバイオマーカーの研究に用いる抗体を提供しています。低酸素のシグナル伝達のCSTインタラクティブパスウェイ図から製品に直接アクセスできます。
ミトコンドリアは、細胞機能を支える主要なエネルギー工場となる細胞小器官です。TCA回路の代謝物の中間体の電子がミトコンドリア内膜の呼吸鎖によって伝達されることでATPが産生されます。ミトコンドリア呼吸を調べるアッセイで、細胞の代謝活性を直接読み取ることができます。
ミトコンドリア完全性は、細胞エネルギーの制御やアポトーシスの制御に不可欠です。
アミノ酸は細胞タンパク質の構成要素であり、細胞プロセスを促進する主要な栄養素でもります。例えば、グルタミンは急速に増殖する細胞のATP需要を満たすための重要な代謝燃料です。グルタミン代謝のCSTインタラクティブパスウェイ図から、GLS、IDH1、IDH2といった重要な酵素の研究などに利用できるCST製品に直接アクセスできます。
mTOR (mechanistic target of rapamycin) はセリン/スレオニンキナーゼであり、細胞の増殖と代謝のマスター制御因子です。mTORは、細胞外の増殖因子やサイトカインからのシグナルを統合します。また、栄養素のセンサーとして働き、細胞の分裂、生存、増殖や、タンパク質の翻訳など、複数の細胞プロセスに影響を及ぼします。mTORは、mTORC1とmTORC2と呼ばれる2つの異なるシグナル伝達複合体として存在し、主にPI3K/AKT、ERK1/2、AMPK経路を介してシグナルの入力を受け取ります。mTORC1の主な下流にはp70/S6Kや4E-BP1/2などがあり、一方mTORC2はSGK1、PKCa、AKTを介してシグナルを伝達します。mTOR Substrates Antibody Sampler Kit を用いてmTORシグナル伝達の構成因子を調べることができます。このキットには次の標的に対する抗体が含まれています。
セリン/スレオニンキナーゼです。 |
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mTORC1下流のエフェクターで、Thr389はキナーゼ活性に相関します。 |
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mTORC1下流のエフェクターで、Ser371はキナーゼ活性に相関します。 |
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mTORC1下流のエフェクターで、キャップ依存的な翻訳を阻害します。Thr37/46からmTOR活性の読み取れます。 |
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mTORのSer2448は、PI3K/AKTの活性化を介してリン酸化されます。 |
AMPK (AMP-activated protein kinase) は、細胞エネルギーの恒常性維持のマスター制御因子であり、糖代謝と脂質代謝の両方を調節します。AMPKは下流の標的をリン酸化し、糖代謝 (PFKFB3、GYS1など)、脂質代謝 (HMGR、ACC1、PLD1など)、転写 (HDAC4/5/7、p300、Srebp1など)、細胞増殖やオートファジー (Raptor、ULK1、Becilin-1など) を制御します。AMPK Substrate Antibody Sampler Kitを用いてAMPKシグナル伝達の構成因子を調べることができます。このキットには次の標的に対する抗体が含まれています。
セリン/スレオニンキナーゼです。 |
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セリン/スレオニンキナーゼで、活性化にはThr172のリン酸化が必須です。 |
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AMPK下流のエフェクターで、セリン/スレオニンキナーゼです。オートファジーに関与します。 |
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AMPKによるULK1のSer555のリン酸化が、飢餓によるオートファジー、低栄養状態での細胞生存、ミトコンドリアの恒常性維持に重要です。 |
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AMPKの基質で、mTORC1の構成成分です。 |
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AMPKによりSer 792がリン酸化され、mTORC1が阻害されます。 |
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AMPK下流のエフェクターで、オートファジーに関与します。 |
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ヒトの場合Ser 93 がAMPKによりリン酸化され、オートファジーを誘導します。ラットではSer 91がこれに対応します。 |
ワールブルグ効果は多くのがんでみられる代謝適応で、がん細胞の増殖と生存を促進します。すなわち、がん細胞は酸素の存在下であっても、効率的で一般的に利用される酸化的リン酸化経路ではなく、解糖による代謝を好む傾向があります。ワールブルグ効果にはPI3K/AKTやRASの活性化など、いくつかのシグナル伝達経路が関与します、また、(PKM2) (pyruvate kinase isoenzyme M2) の二量体型がワールブルグ効果の中心的役割を果たすと考えられています。ワールブルグ効果の特徴の1つに、乳酸の産生量の増加が挙げられます。ワールブルグ効果 のCSTパスウェイから、ワールブルグ効果に関与する主要な構成因子と、その発現や活性を調べるための製品に直接にアクセスできます。
Insulinは糖代謝や脂質代謝などの細胞のエネルギー機能を制御する主要なホルモンで、インスリン受容体チロシンキナーゼに結合して活性化することで作用します。受容体の活性化によってアダプタータンパク質IRSファミリーがリクルートされ、主にPI3K/AKT経路とERK1/2経路を介して下流を活性化し、多くの細胞プロセスに影響を及ぼします。Insulin Receptor Substrate Sampler Kitを用いることで、インスリン受容体シグナル伝達の構成因子を調べることができます。このキットには次の標的に対する抗体が含まれています。
インスリン受容体シグナル伝達のアダプタータンパク質です。 |
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JNKおよびIKKによりSer 307がリン酸化されます。 |
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mTOR経路のPKCが、Ser 612のリン酸化を媒介します。 |
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mTORC1下流のエフェクターで、キャップ依存的な翻訳を阻害します。Thr37/46からmTOR活性の読み取れます。 |
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インスリン受容体シグナル伝達のアダプタータンパク質です。 |
細胞内の主要な代謝プロセスのレベルや活性の測定法には、さらにいくつかの方法があります。次にその例を挙げます。
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