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ニューロンとグリア細胞型のマーカー | CNS研究ガイド

筆者:Supriya Singh, PhD | 2023年7月12日

中枢神経系 (CNS) は高度に分化した細胞で構成されており、各細胞は感覚および運動入力の処理において重要な役割を果たしています。CNS細胞タイプの1つである神経細胞は、電気シグナルの伝達と処理に特化しています。

CNSには、神経細胞だけではなく、神経細胞を保護し、その適切な機能を確保するのに役立つグリア細胞などの非神経細胞も含まれています。ヒトの脳では、グリア細胞は神経細胞と同様に広く存在しています。ヒトの脳の大半のグリア細胞は、オリゴデンドロサイト (45–75%) またはアストロサイト (19–40%) です。ミクログリアと上衣細胞は10%以下です。しかし、ミクログリアは存在量が低いものの、それを補って余りある価値神経炎症と神経変性疾患における極めて重要な役割を担います。

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本ブログでは、神経細胞とグリア細胞の検出や研究に用いられる、最も一般的なマーカーをいくつか紹介します。 

神経細胞マーカー

哺乳類の神経系におけるすべての神経細胞は、自己複製能と多能性の特徴を持つ神経幹細胞から分化します。脳内の凝集したタンパク質または長期的な刺激への曝露は、細胞に有害な慢性炎症を誘導し、アルツハイマー病 (AD)パーキンソン病 (PD)、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) などの神経変性疾患 の発症に寄与することを示すエビデンスが得られています。

関連eBook:Hallmarks of Neurodegeneration:基礎となる生物学的プロセスの特定

成熟神経細胞の検出と発現は、CNSの健全性を理解するための重要な役割を果たします。MAP2NeuNNeurofilament-HNeurofilament-LNeurofilament-Mの発現の解析によりCNSの健全性を理解することができます。例えば、Neurofilament-Lは、神経変性のCSFバイオマーカーとして確立されています1。 

マウスの脳組織やHela細胞 (ネガティブコントロール)、ラットの脳組織における Neurofilament-Lタンパク質を、PathScan® Total Neurofilament Sandwich ELISA Kit #99175を用いて検出しました。

グリア細胞マーカー

ミクログリアマーカー

ミクログリアは骨髄由来の細胞であり、発達中にCNSに移行する免疫細胞です。ミクログリアは多機能であり、胚発生期における複雑な神経細胞のネットワークの刈り込み、シナプス可塑性の補助または神経伝達物質の放出に応答した興奮毒性の抑制を行い、脳の急性感染、病理学的変化、外傷に対する炎症反応を増強します。

CNSの常在マクロファージを特定する特異的なマーカーには、Integrin alpha M (ITGAM/CD11b) や細胞表面の糖タンパク質F4/80CD45Iba1TMEM119などがあります。

アミロイドモデルマウスの脳組織を免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。TMEM119 (E4B9S) Mouse mAb #98778 (赤) は、β-Amyloid (D54D2) XP® Rabbit mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #42284 (シアンの疑似カラー) で染色したアミロイド斑の周辺のミクログリアを認識します。GFAP (E4L7M) XP® Rabbit mAb #80788 (緑) はアストロサイトを認識します。

疾患状態では、疾患関連ミクログリア (DAM) と呼ばれる特徴的な遺伝子発現パターン (分子署名) を持つミクログリアがみられる場合があります。DAMは、段階的に成熟し、各段階は異なるバイオマーカーの発現によって特徴づけることができます。

  • 第1段階:DAMにおけるTREM2 (Triggering receptor expressed on myeloid cells 2)、ApoEDAP12の発現量が増加し、P2RY12TMEM119 (Transmembrane protein 119) の発現が減少します。
  • 第2段階:DAMにおけるOsteopontin /SPP1、CST7 (Cystatin 7) の発現量が増加します。

オリゴデンドロサイトのマーカー

オリゴデンドロサイトは、CNSに存在する特殊なグリア細胞タイプであり、軸索の周囲に保護鞘を提供し、神経細胞間のシグナルの伝導速度を向上させるミエリンを形成します。オリゴデンドロサイトは、ミエリンファミリータンパク質の発現により特定することができます: MOG (Myelin oligodendrocyte glycoprotein)MAG (Myelin-associated glycoprotein)MBP (Myelin Basic Protein)。他の重要なオリゴデンドロサイトタンパク質であるOlig2は、未熟および成熟オリゴデンドロサイトの両方に対する有用なマーカーです。

生後5日 (P5) の凍結固定マウス海馬組織を、Olig2 (E6G6Q) XP® Rabbit mAb #65915 (左、赤) とGFAP (GA5) Mouse mAb (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #3655 (右、緑)、DAPI #4083 (右、青) で免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。

オリゴデンドロサイトの前駆細胞は脳内に存在しており、外傷に応答して細胞の再生を促進します。しかし、ミエリンの損傷やオリゴデンドロサイトの再生不良に伴うミエリンの不足や機能不全は、ADやPD、ALS、多発性硬化症 (MS) などのいくつかの神経変性疾患の発症と関連することが分かっています。

アストロサイトのマーカー

アストロサイトは、CNSに生じるもう1つの免疫担当グリア細胞であり、脳内に存在します。健康な神経系では、アストロサイトは発達や血流の制御 (血液脳関門中の内皮細胞の支持)、シナプス伝達と機能、エネルギーと代謝 (神経細胞への栄養の供給と特定の神経伝達物質の合成) において必要不可欠な役割を担います。アストロサイトの最も特異的なマーカーは、GFAPです。

ラットの小脳組織をGFAP (D1F4Q) XP® Rabbit mAb #12389 (緑) とNeurofilament-H (RMdO 20) Mouse mAb #2836 (赤) で免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。青の疑似カラーはDRAQ5® #4084 (蛍光DNA色素) を示しています。

S100Bは、アストロサイトにおいて高い発現がみられます。しかし、S100Bはミエリンを形成するオリゴデンドロサイトにも選択的に発現しています。S100Bの発現と機能の解明は、現在盛んに研究されている領域です。

アストロサイトの機能喪失や機能不全は、様々な神経変性疾患プロセスに関与しています。アストロサイトの慢性的な活性化は、ADやハンチントン病に類似した病変を形成します。

神経科学研究を進めるための抗体

神経細胞とグリア細胞を認識して区別することができる特異性の高い抗体は、神経科学の理解を深めるために不可欠です。Cell Signaling Technologyは、混在する細胞集団の特性を、自信を持って解析することを可能にします。

インタラクティブな神経細胞とグリア細胞マーカーアトラスを用いて、次の実験用の正しい細胞タイプマーカーを見つけてください。

 

その他のリソース

参考文献

  1. Gaetani L, Blennow K, Calabresi P, Di Filippo M, Parnetti L, Zetterberg H. Neurofilament light chain as a biomarker in neurological disorders. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2019;90(8):870-881. doi:10.1136/jnnp-2018-320106

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