Lab Expectations | CSTブログ

Samplerキットの背後にある科学

筆者:Chris Sumner | Apr 29, 2020

Cell Signaling Technology (CST) の抗体Samplerキットを説明するなら、「様々な抗体の詰め合わせ」という表現が一番近いでしょう。正直なところ、その回答は間違ってはいません。しかし、実情を考慮すると、キットの作成過程が少し不規則にみえているだけです。CST抗体サンプラーキットの作成には、多くの科学、思考、注意が必要です。

CST Antibody Sampler Kit

Samplerキットは、科学者が研究での疑問に答えることができるように厳選された抗体のセットです。このキットは、新しいプロジェクトに着手する場合でも既存のプロジェクトを新しい方向に進める場合でも、研究者がプロジェクトにとって最も重要なタンパク質を特定するのに役立ちます。

例えば、自然免疫系の探索を想定してみましょう。自然免疫系では、保存された病原体関連分子パターン (PAMP: Pathogen-associated molecular pattern) の検出に、生殖細胞系列にコードされたパターン認識受容体 (PRR: Pattern recognition receptor) が利用されます。PAMPが検出されることで、様々な自然免疫シグナル伝達経路が活性化され、病原体に対する免疫応答が開始されます。 

Innate Immunity Antibody Sampler Kit

Innate Immunity Activation Antibody Sampler Kit #52239は、細胞が特定の病原体あるいはPAMPに曝露されることで活性化される自然免疫パスウェイを調べることができるよう設計されています。これには、主要な自然免疫シグナル伝達経路における活性化の重要なノードとなる標的に対するリン酸化抗体および総抗体が含まれています。また、インフラマソームパスウェイ活性化の読み出しとして機能する切断型IL1bも含まれます。

Epithelial-Mesenchymal Transition Sampler Kit

このほか、上皮間葉転換 (EMT: Epithelial-mesenchymal transition) のプロセスも良い例となります。EMTは発生段階に必須のプロセスで、上皮細胞が間葉系の線維芽細胞様の性質を獲得し、細胞間接着が低下して運動性が向上します。ただし、これはあくまでEMTの1つのタイプです。

創傷治癒にもこのプロセスが利用されます。炎症を介してEMTプログラムが開始され、上皮細胞が間葉細胞に転換します。この間葉細胞が実際に傷を「埋める」ように移動します。慢性炎症があって創傷治癒のためのEMTプログラムが停止されない場合、線維症が発生し正常な臓器の機能を妨げる可能性のある患部組織の瘢痕化および肥厚が引き起こされます。

EMTプロセスの3つ目のタイプはがんに関与しており、これが恐らく最もよく知られています。現時点では、がんにおいてEMTが誘発される原因は不明です。上皮細胞から間葉系細胞へ移行し、明確なエンドポイントを持つ正常な発達におけるEMTとは異なり、がん細胞は上皮細胞と間葉系細胞が混合した状態または表現型を示す傾向があります。

Epithelial-Mesenchymal Transition (EMT) Antibody Sampler Kitは、研究者が次のような質問に答えるのを助けるために設計されました。タンパク質Xは、がんの進行においてEMTの影響を受けますか?それともがんにおいて役割を持つあるいはEMTに影響を及ぼしますか?これには、上皮マーカーと間葉マーカーの両方の混合物、および両方の転写因子が含まれています。これにより、研究者は上皮および間葉のマーカー遺伝子をオンにする機能を持つ転写因子を手に入れることができます。

これらは、研究プロジェクトに関する重要な質問に答えたり最初にどこに力を入れるのが適切なのかを考えたりするのに役立つよう慎重にまとめた、数百のSamplerキットのうちの2つの例にすぎません。

様々なシグナル伝達経路やプロセス、病態などを調べることのできるSamplerキットの全製品リストをご覧ください。 

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