Lab Expectations | CSTブログ

シグナル伝達研究にWBではなくフローサイトメトリーを試用すべき理由

筆者:Chris Sumner | Jan 9, 2019

フローサイトメトリーを用いることで、タンパク質発現量、シグナル伝達分子の状態、細胞の形態的な特性(細胞のサイズ/内部構造の複雑さ) を単一細胞レベルで定量解析することができます。現在のフローサイトメーターの性能で、不均一な細胞集団から、毎秒数千細胞の複数のタンパク質のデータを収集することができます。フローサイトメトリーは一般的に、細胞表面に発現する表現型マーカーを利用して細胞タイプの特定に使用されますが、これを細胞内シグナル伝達の解析に利用することもできます。

従来、シグナル伝達の解析にはウェスタンブロットが利用されてきました。この手法では、多数の細胞に由来する抽出物をまとめて解析対象とするため、一部の細胞で起こる低頻度なシグナル伝達イベントは感度の問題で見逃されることがあります。また、ウェスタンブロッティングは、多数のパラメーターの定量解析には限界があり、ひと通りのワークフローが完了するのに1日以上かかる点も欠点と言えます。

フローサイトメトリーはこれらの短所を回避するための理想的な手法で、わずか数時間でウェスタンブロットよりも高い感度と精度でシグナル伝達イベントの多重定量解析が可能です。重要なことは、フローサイトメトリーでは、個々の細胞からそれぞれにデータを収集できることで、特定のシグナル伝達応答を示す細胞の亜集団の同定および定量が可能です。さらにこれらの細胞における応答の範囲の探索や、多重解析で得られた複数のデータとの関連性を調べることもできます。簡単にまとめると、シグナル伝達の研究にフローサイトメトリーを利用することで、新たな研究課題へのアプローチが可能になり、細胞膜から核までのシグナル伝達イベントを解明する一助となります。

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