ウェスタンブロッティングは抗体を用いてタンパク質を検出しその発現を解析するのに用いられますが、限界もあります。フローサイトメトリーも同じく抗体を利用しますが、蛍光を用いて細胞ごとにタンパク質の発現を解析します。
フローサイトメトリーを用いることで、タンパク質発現量、シグナル伝達分子の状態、細胞の形態的な特性(細胞のサイズ/内部構造の複雑さ) を単一細胞レベルで定量解析することができます。現在のフローサイトメーターの性能で、不均一な細胞集団から、毎秒数千細胞の複数のタンパク質のデータを収集することができます。フローサイトメトリーは一般的に、細胞表面に発現する表現型マーカーを利用して細胞タイプの特定に使用されますが、これを細胞内シグナル伝達の解析に利用することもできます。
細胞シグナル伝達の研究:WBからフローサイトメトリーへ切り替えるべき時
シグナル伝達の仮説追求では、慣例的にウェスタンブロット (WB) が最初に使用されます。この手法では、多数の細胞に由来する抽出物をまとめて解析対象とするため、一部の細胞で起こる低頻度なシグナル伝達イベントは感度の問題で見逃されることがあります。また、ウェスタンブロッティングは、多数のパラメーターの定量解析には限界があり、ひと通りのワークフローが完了するのに1日以上かかる点も欠点と言えます。
フローサイトメトリーはこれらの短所を回避するための理想的な手法で、わずか数時間でウェスタンブロットよりも高い感度と精度でシグナル伝達イベントの多重定量解析が可能です。重要なことは、フローサイトメトリーでは、個々の細胞からそれぞれにデータを収集できることで、特定のシグナル伝達応答を示す細胞の亜集団の同定および定量が可能です。さらにこれらの細胞における応答の範囲の探索や、多重解析で得られた複数のデータとの関連性を調べることもできます。要するに、シグナル伝達の研究にフローサイトメトリーを利用することにより、細胞膜から核に至るまでの重要なシグナル伝達イベントを特性解析し、新たな知見が取得できます。
シグナル伝達イベント解析の利点 |
フローサイトメトリー |
ウェスタンブロット |
シングルセル解析 | 可 | 不可 |
低頻度または希少なシグナル伝達イベントの検出能力 | 高 | 低 |
シグナル伝達に変化が生じた亜集団の特定 | 可 (同時に解析) | 可 (細胞集団の分離と濃縮ステップと組み合わせる場合のみ) |
複数のパラメーターの解析 | 可 | 不可 |
サンプルの処理能力 (スループット) | 高 | 低 |
アッセイ時間 (サンプルの準備から解析まで) | 2〜4時間 | 1 - 2日間 (一次抗体のインキュベーションの長さにより異なる) |
シグナル伝達の定量 | 可 (同時に解析) | 設定によって異なる: - 従来のフィルム法、不可 - デジタルイメージャー、可 |
このビデオでは、ウェスタンブロッティングよりもフローサイトメトリーを使用すべき4つの状況を紹介します。
ビデオ:フローサイトメトリーがウェスタンブロッティングよりも有用となる4つの状況
フローサイトメトリーを始めてみませんか?
CSTはフローサイトメトリーを利用した細胞内シグナル伝達の定量解析や表現型解析に役立つ様々な抗体や試薬を提供しています。弊社は、抗体デザインや標識、フローサイトメトリーに関する専門知識を有するため、安心してフローサイトメトリー実験でご利用いただける抗体の開発と検証が可能です。弊社のフローサイトメトリー用製品の開発と検証を行った科学者自身がテクニカルサポートに対応し、お客様の実験を成功へと導きます。