骨髄系細胞は、造血時に骨髄に存在する共通骨髄前駆細胞 (CMP) から生じます。単球や顆粒球、赤血球、血小板を含むこの細胞系は、自然免疫系の主要な構成要素であり、感染に対する防御の第一線として機能します。
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本ブログ記事では、骨髄系細胞の主な種類と、これらの特定に用いられる主要なマーカーを紹介します。
現在までに、数多くの骨髄系細胞サブタイプが特定されています。その多くは、異なる機能状態によりさらに細分化することができ、それぞれが免疫応答において固有の役割を担っています。骨髄系サブタイプの正確な特定および定量は、「特定の病原体に応答してリクルートおよび活性化される細胞集団はどれか」や「それらが免疫応答にどのように寄与しているか」を理解するのに不可欠です。
骨髄系細胞タイプを識別する方法はいくつかあります。基本的には、形態や、組織あるいは血液における分布に基づいて骨髄系細胞のサブセットを識別します。しかし、より完全に分類する場合は、抗体を活用して細胞表面に発現する分子を検出して識別する免疫表現型解析が必要であり、これはフローサイトメトリーまたは免疫組織化学染色 (IHC) などのアッセイを用いて行います。
免疫表現型解析では、特定のCD (Cluster of Differentiation) マーカーを認識する抗体パネルを使用します。CDマーカーは、分化の様々な段階において、各細胞タイプが細胞表面に発現する分子です。CDマーカーの発現パターンを解析することにより、細胞の混合集団における特定の免疫細胞の存在を検出および定量できます。
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CMPから、最終分化した様々な骨髄系細胞が生じます。この骨髄系細胞タイプには、主に以下の細胞が含まれます:
通常の血液凝固に必要な血小板を生じる巨核球
組織に酸素を運ぶ役割を持つ赤血球
好塩基球、好酸球、マスト細胞、好中球が含まれる顆粒球
マクロファジーと樹状細胞の前駆細胞である単芽球
各骨髄系細胞タイプは、それぞれ異なる形で免疫応答に関与します。例えば、好塩基球は、多くの炎症応答に寄与し、抗凝固作用を持つヘパリンを分泌して血栓の形成を遅らせます。好酸球は、主要な塩基性タンパク質とリボヌクレアーゼを放出し、寄生虫やウイルスの感染を防ぐことが知られています。顆粒球の中で最も豊富に存在する好中球は、炎症部位や感染部位の最前線で応答し、貪食や脱顆粒、好中球細胞外トラップ (NETs: Neutrophil Extracellular Traps) の形成により侵入した微生物を攻撃して除去します。
組織の損傷や病原体による感染が起こると、血中を循環している単球がその部位にリクルートされ、場合によってはマクロファジーに分化します。分化後、マクロファジーは外来抗原や損傷した細胞を検出し、貪食して破壊します。このプロセスが完了したら、マクロファジーは抗原を処理してT細胞に提示し、T細胞を活性化させます。
樹状細胞もまた、貪食により細胞や異物を取り込み、これらを処理して抗原としてT細胞に提示します。他の免疫細胞タイプも抗原をT細胞に提示できますが、樹状細胞は抗原提示を非常に頻回に行うため、マクロファジーやB細胞と共に抗原提示細胞 (APC) と呼ばれます。APCは、自然免疫系と適応免疫系の間で病原体に関する情報を中継する重要な役割を担っています。
骨髄系細胞のサブセットを正確に特定するには、よく特性解析された表現型マーカーが必要です。一部のマーカーは特定の免疫細胞タイプにのみ発現しているため、この1つの指標だけで表現型解析を行うことができますが、骨髄系細胞における各マーカーの発現パターンは重複していることも多いため、これらの表現型や成熟状態を判断するには、通常は複数のマーカーを解析する必要があります。
例えば、CD11bは広範な骨髄系細胞マーカーとして使用できますが、亜集団や機能状態を特定するにはさらなる指標が必要です。
パラフィン包埋マウス脾臓組織を、リコンビナントモノクローナル抗体CD11b/ITGAM (E4K8C) Rabbit mAb #93169を用いてIHCで解析しました。
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2025年5月に改訂しました。初版は2020年5月に公開されています。本ブログ記事の執筆には、Alexandra Foley (CSTコンテンツマーケティングマネージャー) およびTamar Aprahamian, PhD (JetPub Scientific Communications設立者) にご協力いただきました。25-ICT-56550