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免疫学:自然免疫系はどのように機能するのでしょうか?

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以前のブログ投稿でも触れたように、自然免疫は私たちの体の免疫防御の重要な一部であり、微生物や外来のタンパク質に対する幅広い保護的応答を行っています。自然免疫は、進化的に適応免疫系よりも古く、植物、動物、昆虫などにも保存された機構が見受けられます。また、特定の病原体に対して特殊化していません。

自然免疫系

私たちの体は、生まれた時からほぼ完全な自然免疫を備えていることに注目する必要があります。対照的に、適応免疫は私たちが成長し、新たな感染を克服するにつれて発達します。

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自然免疫は、皮膚、粘膜、毛髪やその他胃腸内を含めた上皮表面などの物理的なバリアを利用して、生体防御の第一線として機能します。鼻毛でムズムズしたり気管の絨毛の膜が刺激されることによって起こる咳やくしゃみは、有害となる可能性のある細菌を除外するのに有用な反応です。しかし上皮のバリアが突破されてしまった場合には、自然免疫のその他の構成因子が病原体を検出し攻撃します。 

 

自然免疫パスウェイ

 

病原体が血流に入ると、最初は補体と呼ばれる機構を介して、免疫細胞が全くない状態でも検出することができます。補体は自然免疫応答と適応免疫応答の両方と協力して、免疫細胞を感染部位にリクルートします。基本的に補体は、肝臓で作られ血流を自由に移動する数種類の不活性のタンパク質で構成されています。補体が病原体に出会うと、細菌や寄生虫の表面に結合し、外来の脅威であることが分かるようにします。その後、関連した補体タンパク質や酵素のカスケードが活性化され、病原体に印をつけ続けるだけでなく、細菌の表面に穴を開けて (膜侵襲複合体;MAC) 溶解するか、免疫食細胞が取り込みやすくするために細菌をタンパク質で覆います。補体タンパク質で病原体を覆うプロセスは、オプソニン化と呼ばれます。

自然免疫応答に積極的に関与する細胞のほとんどは貪食細胞で、血液や組織の中をパトロールして脅威となる侵入物を探索しています。病原体が発見されると、遺伝的にコードされた細胞膜上のパターン認識受容体 (PRR) を用いて、侵入した分子が外来であることを識別します。これらのパターン認識受容体は、多くの場合、微生物の細胞表面や細胞壁の構成成分を認識しますが、CpGモチーフがメチル化修飾を受けていない微生物由来のDNAも自然免疫応答を誘導します。これらの細胞が一度活性化されると、急速な免疫応答 (数分から数時間以内) を引き起こすためのカスケードが開始されます。

免疫細胞が感染部位でとる最初のステップの1つは、サイトカインを細胞外に分泌することです。これらサイトカインには、インターロイキン (IL) や腫瘍壊死因子 (TNF) などがあり、浸潤部位に白血球を誘導します。活性化した免疫細胞はまた、その他の化学物質を放出して、炎症応答を開始します。このようなシグナルは血管拡張を引き起こし、感染部位に多量の血液が流れ込みます。これにより、さらに免疫細胞がリクルートされ、病原体を排除する助けをします。

自然免疫系の細胞

 体内には多様な白血球が存在し、体中をパトロールして感染などに備えています。白血球の一部は適応免疫系に属していますが、多くは自然免疫系で機能しています。これらの白血球にはどのような細胞があり、どこから来るのでしょうか?

造血あるいは血液細胞の発生において、骨髄内の前駆細胞 (CMP) から骨髄系細胞が分化します。自然免疫応答を構成する細胞の大半は、この骨髄系細胞に含まれます。

CMPは単球の前駆細胞で、単球は最終的にマクロファージと樹状細胞、顆粒球へと分化します。顆粒球は、その細胞質内に目に見える顆粒を有するためこの名前が付いており、マスト細胞、好中球、好酸球、好塩基球が含まれます。このように、体内をパトロールして病原体を捕獲する貪食細胞の大部分は、CMPという共通の前駆細胞から分化します。しかし自然免疫応答で重要な役割を果たすもう1つの細胞、細胞傷害性ナチュラルキラー細胞 (NK) は、リンパ球前駆細胞 (CLP) から分化します。

これらの異なる種類の細胞すべてが、それぞれ自然免疫応答における特定のニッチを有しています。一部は、マクロファージ や樹状細胞などの抗原提示細胞 (APC) で、病原体由来の抗原を細胞表面に提示して、T細胞による適応免疫を活性化します。マスト細胞など白血球の一部は、組織や粘液の膜に限局しますが、その他の白血球は血液に乗って体内を循環し、必要に応じて組織に遊走します。好中球は細菌や真菌を攻撃し阻害する能力に優れており、免疫反応の最初に応答することが多いです。それに対して、好塩基球はそれほど数は多くなく、寄生虫に対する防護に特殊化しています。NK細胞は感染に迅速に応答し、ウイルスに感染した細胞を効率的に殺傷します。また、がん性細胞を検出し殺傷する能力を備えているという面でも特徴的です。

このような自然免疫系の細胞が、病原体による侵害に迅速に対応することができなかった場合、適応免疫系が活性化されて、脅威を弱めるための一撃を与えます。次回の免疫学ブログシリーズでは、適応免疫系においてT細胞とB細胞がどのように作用するかについてご紹介します。

追加リソース:

自然免疫と適応免疫の詳細は、3部構成の免疫学に関するブログシリーズをご覧ください。

参考文献:

  • Immunity: The Immune Response in Infectious and Inflammatory Disease. By Anthony L. DeFranco, Richard M. Locksley, Miranda Robertson
  • https://opentextbc.ca/biology/chapter/23-1-innate-immune-response/
  • Innate and Adaptive Immune Memory: an Evolutionary Continuum in the Host’s Response to Pathogens
  • Mihai G. Netea, Andreas Schlitzer, Katarzyna Placek, Leo A.B. Joosten, and Joachim L. Schultze
  • Immunobiology: The Immune System in Health and Disease. 5th edition. Janeway CA Jr, Travers P, Walport M, et al. New York: Garland Science; 2001.
April Lowell, PhD
April Lowell, PhD
April Lowellは、分子生物学の博士研究者であり、CSTのサイエンティフィックマーケティングライターです。科学の最新トピックについての読み書きをしていない時には、家族とゲームをしたり、お菓子作りをしたり、最新のマニア趣味の世界を追いかけたりしています。

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