CSTブログ: Lab Expectations

Cell Signaling Technology (CST) の公式ブログでは、実験中に起こると予測される事象や実験のヒント、コツ、情報などを紹介します。

Simple Western検証済みCST抗体:自動キャピラリー電気泳動免疫アッセイ

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ご寄稿いただいたCharles Haitjema博士は、Bio-Techneの研究分野のマネージャーです。本ブログでは、Bio-TechneブランドであるProteinSimpleTM社の、Simple WesternTMシステム用に検証されたCell Signaling Technology抗体の詳細を紹介します。

我々は、Simple WesternがCSTの高品質抗体カタログに検証済みアプリケーションとして追加されたことに感激しています。現在、Simple Westernのユーザーは、数百の抗体が既に検証されており、さらに常に追加されている、CSTのウェブサイト上でアプリケーションとしてSimple Westernを検索することで、検証された抗体を簡単に見つけることができます。 

Simple Westernとは何か?

Simple Westernは、Jess™、Abby™、Peggy Sue™、Sally Sue™、 NanoPro™1000 などのベンチトップ型機器内で、キャピラリー電気泳動をベースとする免疫アッセイを自動で行うプラットフォームです (図1)。Simple Westernは、免疫アッセイのオープンプラットフォームであるため、標的タンパク質やアイソフォームの特異的な検出に市販またはカスタム抗体を用いることができます。2009年に、初の自動化されたウェスタンブロット機器が発表されて以来、CSTの幅広い高品質な一次抗体はSimple Westernアッセイにおける絶大な信頼を得ています。

Simple Westernの各種機器、JessとPeggy Sue

図1:Simple Western機器のJess (左) とPeggy Sue (右)。Jessプラットフォームは、分子量 (サイズ) ベースのキャピラリー電気泳動免疫アッセイを行い、化学発光チャネルやNIR/IR蛍光チャネルといった複数のチャネルを用いたマルチプレックス解析が可能です。Peggy Sueプラットフォームは、化学発光検出を用いた分子量または等電点ベースのキャピラリー電気泳動免疫アッセイを行います。Jessは3時間で最大25サンプルを、Peggy Sueは一晩で最大96サンプルを処理することができます。画像はProteinSimple社からご提供いただきました。

Simple Western用に検証されたCST® 抗体

CSTは、シグナル伝達分野において長い歴史を持つ、科学者が科学者のために設立した企業です。各アプリケーション用に厳格に検証された抗体を提供することは、弊社の根幹をなす使命のうちの1つであり、これにより弊社はWB用抗体のサプライヤーとして数十年にわたる信頼を得ています。さらに弊社は、CiteAb Antibody Supplier of the Decadeを受賞することができました。

Simple Western検証済みのCST抗体により、最高のアッセイ条件の決定に必要となる最適化のステップを省略することができます。CSTのプロダクトサイエンティストとSimple Westernの専門家がこのステップをすでに行っているため、実験を始める前に最良の結果を得るための理想的な希釈率を知ることができます。 

実験の準備や実施に必要な情報は、Simple Western検証済みの各抗体の製品データシートやウェブサイトをご覧ください。 

Simple Western検証済み抗体を探索する

ウェスタンブロットやELISAなどの免疫アッセイの限界を超えるSimple Western

Simple Westernは、その名の通りウェスタンブロットに似た解析を行うものであり、再現性や感度、定量性が高く、時間やコストを削減することもできる、市場で唯一の全自動ウェスタンプラットフォームです。 

では、ウェスタンブロットとSimple Westernの違いは何でしょうか?まず、Simple Westernは、サンプルの調製からプレートへのローディングまで完全に自動化されています。従来のウェスタンブロットでは手動で行われていたステップが、キャピラリー電気泳動を行うベンチトップ型機器内で、自動かつ確実に制御されます。Simple Westernは、SDS-PAGEの代わりに、CE-SDSを用いたキャピラリー電気泳動 (CE) による分子量 (サイズ) に基づいたタンパク質の分離、あるいはcIEFを用いたCEによる等電点 (電荷) に基づいたタンパク質の分離を行います (図2)。

キャピラリー内で行われるSimple Western免疫アッセイ解析図2:Simple Westernは、キャピラリー内で免疫アッセイ解析を行います。サンプルは、CE-SDSを用いてサイズに基づいて分離 (左図)、またはcIEFを用いて電荷に基づいて分離されます。マトリクスやサンプルのロード、分離、免疫プローブ、シグナルの定量などのすべてのステップが自動化され、キャピラリー内で確実に制御されています。画像はProteinSimple社からご提供いただきました。

従来のウェスタンブロットでは得られない、完璧なデータと再現性

タンパク質の分離が完了すると、タンパク質は共有結合によりキャピラリーの内壁に固定され、洗浄、抗体のインキュベーション、免疫検出などの従来のウェスタンブロットと同様のステップが、キャピラリー内で順次行われます (図2)。そのため、Simple Westernには、従来のウェスタンブロットにおけるゲルからメンブレンへの転写というステップが存在しません。作業ステップが完了すると、データは自動でSimple Western専用ソフトウェアであるCompass上に表示されます。従来のウェスタンブロットの各ステップをキャピラリー内で確実に制御することにより、Simple Westernは最大6-logのダイナミックレンジと常に15%以下の変動係数 (CV) をもつ、完璧な定量性と高い再現性を示すデータを作成することができます。

利点はそれだけにとどまりません。Simple Westernは、必要とするサンプル量は3 uLと、従来のウェスタンブロットに比べて非常にわずかであり、JessとAbbyは3時間以内に25サンプルの解析を行うことができます。Peggy Sue、Sally Sue、NanoPro 1000は一晩で96サンプルの解析を行い、5 μLのサンプル1つにつき最大8種類のデータポイントを作成することができます。Jessは、化学発光チャネルやNIR/IR蛍光チャネルの組み合わせといった柔軟なマルチプレックス検出戦略を選択することができます (図3)。Jess用のStellar™ NIR/IR Modulesは、競合する蛍光ウェスタンブロットイメージャーの100倍の感度をもつ、業界最高水準の検出感度を有しています。また、正確にタンパク質の発現量を測定したい方にもSimple Westernをお勧めします。Simple Westernなら、トータルタンパク質を検出することもできるため (図3)、データの標準化に信頼性の低いハウスキーピングタンパク質を用いる必要がなく、より正確にタンパク質の発現量を測定することができます。

Stellarアッセイを用いた、未分化のiPSCおよびiPS由来の中胚葉細胞におけるAktのトータルタンパク質、リン酸化Akt、およびすべてのタンパク質のSimple Western解析図3:未分化のiPSCとiPSC由来の中胚葉細胞における、Aktのトータルタンパク質、リン酸化Akt、およびすべてのタンパク質を、JessのStellarアッセイを用いて解析しました。Aktのトータルタンパク質 (#58295) とAktのリン酸化アイソフォーム (#9271) はCST抗体およびStellar NIR/IR Moduleを、サンプル全体にわたるすべてのタンパク質はStellar Total Protein Moduleの化学発光チャネルを用いて、同時に検出しました。画像はProteinSimple社からご提供いただきました。

Simple Westernでは、JessとAbbyのRePlex™機能を用いることにより、従来のウェスタンブロットのストリッピングやリプローブのステップも省くことができます。RePlexは、同じキャピラリー内で連続して免疫アッセイを行うため、1つのサンプルでより多くの標的をプローブすることができます。サンプルは、共有結合によりキャピラリーの内壁に固定されているため、RePlexではプロービングサイクル間に完全かつ再現性の高い抗体除去を行うことができます。そのため、RePlexアッセイは従来のウェスタンブロットのストリッピングとリプローブとは異なり、プロービングサイクル間のシグナル干渉やサンプルの喪失などの影響を受けません。2サイクル目は、タンパク質発現データの標準化に用いるトータルタンパク質の検出に用いることも可能です (図4)。

RePlexアッセイを用いた、未分化のiPSCおよびiPS由来の中胚葉細胞全体におけるAktのトータルタンパク質、リン酸化Akt、およびすべてのタンパク質のSimple Western解析図4:未分化のiPSCとiPSC由来の中胚葉細胞における、Aktのトータルタンパク質、リン酸化Akt、およびすべてのタンパク質を、AbbyのRePlexアッセイを用いて解析しました。Aktのトータルタンパク質 (#58295) とAktのリン酸化アイソフォーム (#9271) を標的とするCST抗体はRePlexのProbe1を、サンプル全体にわたるすべてのタンパク質はRePlexのProbe2を用いて検出しました。画像はProteinSimple社からご提供いただきました。

Simple WesternとELISAの比較:マトリクスの影響がより少なく、アッセイ開発がより簡便であり、タンパク質の分離が可能

組織のホモジネート (破砕液) のような複雑なサンプルを解析する場合、ELISAでは、マトリクス効果と呼ばれる細胞質マトリクスによる干渉がしばしば起こり、解析結果に歪みが生じます。一方、Simple Westernは独自の化学結合技術を用いて、サンプルの標的タンパク質をキャピラリーの内壁に固定します。複雑なマトリクス内でも共有結合することができるため、ELISAにみられるような、特異的な捕捉抗体を用いて標的タンパク質を補足する時に生じるマトリクス効果を低減することができます。Simple Westernでは、共有結合でサンプルを固定した後、最適なバッファー内で免疫検出を行うために、サンプルのマトリクスをキャピラリーから洗い流すことによりマトリクス効果をさらに軽減します。

また、サンドイッチELISAのカスタム化には2種類の抗体の同定と検証が必要であり、標的に対する有効な単一の抗体を用いる方法よりも難しくなります。Simple Westernは、たった1つの標的特異的な抗体で検出を行うため、カスタムELISAに比べてアッセイ開発が簡便であり、開発にかかる時間を短縮することができます。また、Simple Westernによるサイズまたは等電点に基づいた分離と特異的な免疫検出により、高い分解能をもって標的タンパク質の異なるアイソフォームを識別することができます (図5)。脳組織のホモジネートサンプルを用いて、ヒトeNOSを検出する市販の代表的なELISAキットとSimple Westernを直接比較したところ、Simple Westernはアッセイ範囲と感度に優れており、ELISAはSimple Westernに比べてeNOS濃度を過小評価している可能性が示されました (表1)。  

ヒトeNOSを標的とするCST抗体を用いたヒト脳組織ホモジネートのSimple Western解析。

図5:ヒト脳組織ホモジネートを、ヒトeNOSを標的とするCST抗体 (#5880) を用いてSimple Westernで解析しました。画像はProteinSimple社からご提供いただきました。

23-BPA-71850_表1

表 1ELISAとSimple Westernアッセイによる脳組織内のeNOS定量化の比較。

Cell Signaling Technologyとのパートナーシップにより、広がるSimple Westernの可能性

Simple Westernは、細胞と遺伝子治療、がんとがん免疫、タンパク質のバイオプロセシング、細胞シグナル伝達とシグナル伝達解析、標的タンパク質分解、ワクチン開発、神経科学と神経変性疾患、感染症などの様々なアプリケーションにおいて研究開発のワークフローを前進させてきた、実績のある技術です。

高品質なCST抗体の幅広いラインナップは、Simple Westernの活躍に貢献しています。CST抗体を用いたSimple Westernの文献は500報近くあり、すべてのSimple Westernの文献のうちの約25%を占めています。 CSTカタログのアプリケーションにSimple Westernが追加されたことにより、Simple Westernユーザーはアッセイ開発をより迅速に最適化することができます。

本パートナーシップにより、重要な分子シグナル伝達経路の研究に必要となる修飾特異的抗体が、今後も引き続きSimple Western用に検証される予定です。さらなる情報については以下のリンクをご覧ください。

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追加リソース: 

Cell Signaling Technology and CST are registered trademarks of Cell Signaling Technology, Inc. ProteinSimple, Simple Western, Jess, Abby, Peggy Sue, Sally Sue, NanoPro, Stellar, and RePlex are trademarks of ProteinSimple Corporation. All other trademarks are the property of their respective owners. Visit cellsignal.com/trademarks for more information.

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Charles Haitjema, PhD
Charles Haitjema, PhD
Charles Haitjema博士は、Bio-TechneブランドであるProteinSimple社内のApplications Scienceチームの科学者兼テクニカルライターとして、2018年にBio-Techne社に入社しました。現在は、ProteinSimpleの主力製品であるSimple Western製品ラインおよびシングルセルウェスタン用機器の、リサーチおよびマーケティング分野のContent Managerを務めています。コーネル大学で微生物学の博士号を取得後、UCSBの化学工学科でポスドクとして務めました。

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