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細胞死のメカニズム:アポトーシス

細胞死は当初考えられていたより複雑らしいことが分かってきました。細胞死は様々な理由、様々な経路で起こります。発生段階で細胞死が起こることもあれば、代謝障害や病原体の侵入、生理的な組織損傷などのストレスを受けた結果、細胞死が起こることもあります。

20-CEP-94379 アポトーシス

数十年にわたる研究により、細胞が自壊する多種多様な経路が詳細に特徴づけられるようになりました。細胞の死は、突然の生理学的損傷や偶発的な細胞死 (ACD:Accidental Cell Death) のように、外部の急速で圧倒的な影響によって起こる場合があります。一方、薬理学的または遺伝学的に制御された専用の分子経路を介して細胞死が起こる場合もあり、これは制御された細胞死 (RCD:Regulated Cell Death) と呼ばれています。古典的に細胞死は、形態の変化、原因、生化学的経路に基づいて、3つの異なるタイプに分類されています。

アポトーシス (I型細胞死) は、外部からの影響を受けずに細胞を自壊させる厳密に制御されたプログラム細胞死 (PCD:Programmed Cell Death) の形態です。特に多細胞生物は恒常性の維持のため、成長、発生、細胞の代謝回転を制御する必要があり、生命にとって不可欠な要素になります。アポトーシスは適切な胚発生に不可欠で、古典的には、手の指の間の細胞がアポトーシスを起こすことで、それぞれの指どうしが切り離される例が知られています。

オートファジー (II型細胞死) も、しばしばプログラム細胞死の一種に分類されます。

しかし、状況によっては細胞死だけでなく、細胞の生存も促進することが分かってきました。オートファジーは細胞内小器官やその他の内容物をリソソームによって貪食し、不要な成分や機能障害を起こした成分を除去するプロセスです。この重要なメカニズムによって、細胞内の物質の系統的な分解や再利用が可能になります。

ネクローシス (III型細胞死、壊死) は、歴史的に外部からの極端な生理的ストレスやACDによって偶然に起こるプロセスであると考えられてきました。近年、ストレスに晒された細胞が他の細胞死の手段が利用できない場合に引き起こされる、特定の制御された分子機構が脚光を浴びています。このような制御されたネクローシス性細胞死経路には、ネクロプトーシス、パイロトーシス、フェロトーシス、ネトーシス (NETosis) などがあります。ネクロプトーシス、パイロトーシス、フェロトーシスなど、これらの制御されたネクローシス性細胞死経路は、今後のブログで紹介していきますのでご期待ください。

アポトーシス

アポトーシスは明確な形態変化を特徴とする厳密に制御された細胞死の様式で、特定のカスパーゼの活性化とミトコンドリア制御経路を伴います。アポトーシスには内因性経路と外因性経路があります。内因性経路は、細胞ストレス、DNA損傷、発生の合図、生存因子の除去によって活性化され、外因性経路は、他の細胞からの細胞外デスシグナルの検出を介して活性化されます。

アポトーシスを起こした細胞は、形態的な特徴から識別することができます。これらの細胞は収縮し、膜ブレブ (小疱) と呼ばれる特徴的な膜の変形が見られます。また、クロマチンの凝集や核の断片化もアポトーシスの特徴です。

死細胞の端周辺の膜ブレブ形成が、アポトーシス小体と呼ばれる小さな小胞のに繋がります。アポトーシスでは細胞膜が無傷のままであることが重要です。アポトーシスでは細胞膜が完全に保たれるため、細胞内のサイトカインや消化酵素は細胞外に放出されず、隣接する組織の損傷や炎症は制限されます。しかし、通常細胞膜の細胞質側にあるホスファチジルセリン (PS) が、反転して細胞外に露出します。食細胞がこれらを認識して死細胞を除去します。Annexin Vは、細胞膜上のホスファチジルセリン脂質に結合するため、ヨウ化プロピジウムなどの細胞膜の完全性を確認する試薬と組み合わせて、早期アポトーシスのマーカーとしてよく利用されています。

内因性アポトーシス経路には多くの保存されたシグナル伝達タンパク質が関与し、ミトコンドリア膜の完全性に依存します。このプロセスはBcl-2ファミリータンパク質の活性のバランスによって厳密に制御されており、Bcl-2ファアミリーのメンバーにはアポトーシスを促進するもの (BaxBakBadBidPumaBimNoxa) と、抑制するもの (Bcl-2Bcl-xLBcl-wMcl-1) があります。発現の変化や翻訳後修飾を介してBAD、BID、BIMなど、BH3ドメインをもつアポトーシスを促進するメンバーが活性化すると、アポトーシスが引き起こされます。その後、アポトーシスを促進するタンパク質であるBAXやBAKがミトコンドリア外膜透過性 (MOMP:Mitochondrial Outer Membrane Permeability) の変化を誘導し、オルガネラの膜間空間からシトクロムcが放出されます。その後、遊離したシトクロム cは、Apaf-1とともにアポソームと呼ばれる複合体を形成してCaspase-9を活性化し、アポトーシスイベントのカスケードを開始させます。

Bcl-2、Bcl-XL、MCL-1などのアポトーシスを抑制するファミリーメンバーは、アポトーシスを促進するファミリーメンバーに結合して阻害し、アポトーシスを防ぎます。これらのタンパク質はしばしば、がん細胞で活性化されているため、がん治療薬の開発の有力な標的となっています。トランスレーショナルリサーチでは、これらの原がん遺伝子産物を様々な方法で標的にすることに焦点が当てられてきました。1つの戦略は、BH3をもつアポトーシスを促進するタンパク質を模倣した化合物を設計し、アポトーシスを抑制するファミリーメンバーとアポトーシスを促進するファミリーメンバーの相互作用に競合させることでアポトーシスを誘導することです。

内因性、外因性のアポトーシス経路はいずれも、最終的にカスパーゼファミリーの特定のメンバーのプロテアーゼ活性に依存します。これらのカスパーゼは2つの主要なカテゴリーに分類されます。Caspase-2-8-9、-10、-12 といった誘導型カスパーゼ (initiator caspase) は、上流のアポトーシス促進シグナルと共役してCaspase-3-6-7といった実行型カスパーゼ (executioner caspase) を切断し、最終的に細胞の解体に関与するタンパク質を修飾します。これらのカスパーゼやその基質を標的とする切断特異的な抗体は、細胞死を特定するための重要なツールとなります。例えば、PARPLamin A/Cなどは実行型カスパーゼによって切断され、アポトーシスの有用なマーカーとなります。また、XIAP、cIAP1、C-IAP2、NAIP、LivinSurvivinなどのIAP (Inhibitor of Apoptosis) ファミリーのタンパク質は、様々なカスパーゼの活性を阻害し、アポトーシスを防ぎます。例えば、XIAPはCaspase-3-7-9に結合してその活性を阻害し、主要なアポトーシスタンパク質の切断を阻害します。IAPファミリーメンバーの発現は、細胞生存促進の指標となります。

カスパーゼは、細胞表面のデスレセプターを活性化する細胞外リガンドにより、外因性経路を介して活性化される場合もあります。デスレセプターはTNFRファミリーのメンバー (TNFR1/2、FasDR3/4/5) からなり、これらに結合するリガンドにはTNF-αFasLTRAILTWEAKなどがあります。リガンドの結合により受容体が活性化され、DISC (Death Inducing Signaling Complex) が形成され、プロカスパーゼが活性化されます。この複合体のメンバーにはアダプタータンパク質であるFADDやTRADDが含まれ、これらが誘導型カスパーゼであるCaspase-8をリクルートして活性化し、実行型カスパーゼであるCaspase-3が活性化されます。興味深いことに、デスレセプター経路はTNFR2を介してNF-κBにシグナルを伝達し、Bcl-2やFLIPなどの生存を促進する遺伝子の発現を誘導して細胞の生存を維持することもあります。

詳細は、研究者向け細胞死のメカニズムガイドをご覧ください

細胞死の機構に関する研究者ガイドをダウンロードする

参考文献:Dickens, LS, Powley, IR, Hughes, MA, et al. (2012) Exp. Cell Res. 318, 1269–1277. | Favaloro, B, Allocati, N, Graziano, V, et al. (2012) Aging 4, 330–349. | McIlwain, DR, Berger, T, and Mak, TW. (2013) Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 5, a008656. | Shamas-Din, A, Kale, J, Leber B, et al. (2013) Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 5, a008714.

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