試薬の検証と実験の再現性は、すべての科学的専門分野の研究を進めるために極めて重要です。(人工) 多能性幹細胞 (iPSC) 研究において、再現性のあるデータを得ることは、この研究に特有の生物学的な複雑性のために、特に困難な課題となっています。細胞をリプログラミングし、その後さらに様々な分化経路に誘導するプロセスは、技術的な課題を抱えていますが、特に細胞を目的の状態に導くために必要なイベントや相互作用は驚くほど複雑です。
人工多能性幹細胞 (iPSC) の特定に不可欠なマーカー
細胞分化のパスウェイをプログラムする際に、プロセス全体を通じて、確認しなければならない点がたくさんあります。意図した通りの人工多能性幹細胞 (iPSC) が得られたことを確認するにはどうしたら良いでしょうか?
かつては多能性の確認に機能的なアッセイを行う必要がありましたが、現在は免疫組織化学的マーカーを利用し、三胚葉分化能を確認することで多能性を確実に評価しています。
ライデン大学医療センターの助教であり、iPSCコアの共同責任者でもあるHarald Mikkers博士にお話を伺いました。Harald博士は毎日iPSCを使用した研究を行っており、CSTがこれらのいくつかの課題を克服するためにご協力いただきました。
以下は、Mikkers博士との共同研究の報告です。
「ライデン大学医療センターのヒトiPSCホテルでは、依頼者 (LUMC研究者、外部の営利・非営利団体)に細胞のリプログラミングサービスを提供しています。まず、皮膚、末梢血、尿などの一次供与体から細胞を分離して増殖させます。mRNA、エピソームDNA、レンチウイルスベクターまたはセンダイウイルスを利用して、分離した一次細胞をリプログラミングして人工多能性幹細胞 (iPSC) を作成します。
作成したiPSCクローンの多能性の状態と、機能的な多能性を評価します。この目的のために、まずiPSCクローンの多能性幹細胞マーカーの発現を解析します。さらに、このクローンが三胚葉の代表的な細胞に分化する能力を調べます。免疫蛍光染色を利用して、三胚葉分化能を定量的に評価します。
ワークフローを加速するために、私たちは、外胚葉 (図1)、内胚葉 (図2)、中胚葉 (図3) の確立されたマーカーを認識する、直接標識したCST抗体で構成される三胚葉抗体キットを開発しました。抗体の標識は、CSTのカスタム標識サービス (Tier 4) を利用しました。標識の成功度は非常に高く、90%以上の標識抗体で、CSTが非標識抗体で推奨している希釈率と同程度の希釈で用いて、免疫蛍光顕微鏡実験で完璧なパフォーマンスが見られました。
カスタム標識抗体の代表例を下に記載します。これらの結果から、蛍光標識一次抗体を用いることで、経済的にも時間的にも効率的に多能性の評価が可能となることが分かります。
外胚葉、内胚葉、中胚葉の特性解析用の標識抗体
図1:外胚葉に分化したLUMC0183iCTRL01。外胚葉の検出に用いた抗体は、Nestin (10C2) Mouse mAb (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #35884、42571 FABP7 (D8N3N) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 555 Conjugate) および84052 Pax6 (D3A9V) XP® Rabbit mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate) です。
図2:外胚葉に分化したLUMC0183iCTRL01。外胚葉の検出に用いた抗体は、EOMES (D8D1R) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #96823、FoxA2/HNF3β (D56D6) XP® Rabbit mAb (Alexa Fluor® 555 Conjugate) #50079およびGATA-4 (D3A3M) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #66309です。
図3:中胚葉に分化したLUMC0183iCTRL01。中胚葉の検出に用いた抗体は、Brachyury (D2Z3J) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #9466、CDX2 (D11D10) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 555 Conjugate) #84638 、Vimentin (D21H3) XP® Rabbit mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #9856です。
CSTのカスタム抗体標識サービスの詳細をご覧ください
Mikkers博士と共同開発した抗体パネルは、恐らく皆様の研究にも役立つと思います。また、細胞評価実験にも同様の方法が採用できると思います。
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