がん細胞は、似て非なる2種類の異なるプロセスを経て、局所組織に浸潤し遠方へ拡散します。
組織浸潤は、がん細胞が近傍の環境に拡散するメカニズムです。転移は、がん細胞が原発腫瘍から離脱して別の位置に移動し、新たな環境で二次的な腫瘍を形成するプロセスのことを指します。これらの複雑なプロセスはどちらも、接着結合のシグナル伝達経路などの既存の細胞機構を利用します。
接着結合は、動的な構造であり、関連するタンパク質が隣接細胞の対応するタンパク質と結合することにより、形成、強化、拡張、分解、再形成されます。接着結合は、複数の機能を持ち、細胞間接着の形成と安定化、アクチン骨格の制御、細胞内シグナル伝達、転写制御などを担います。これらは、細胞を取り囲むバンド (接着帯) や、細胞外マトリクスに接着するスポット (接着斑)として観察できます。
細胞間接着は、正常状態では細胞間の秩序の形成に寄与します。また、細胞間結合は、組織において、細胞を隣接する細胞に繋ぎ止める役割を担います。これらは、組織のバリア機能や細胞増殖、遊走などの重要な細胞プロセスにおける、組織の恒常性の制御も行っています。細胞間結合の異常は、恒常性を損なう広範な組織異常の原因となり、遺伝的な異常やがんによくみられます。
細胞結合と細胞骨格の関係性は、現在も研究が進められています。これは、当初考えられていたよりも動的であり、カドヘリン-カテニン複合体とアクチン細胞骨格やその他の膜結合タンパク質の弱い結合に依存している可能性があります。
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参考文献: