CSTブログ: Lab Expectations

Cell Signaling Technology (CST) の公式ブログでは、実験台に向かう時間に期待すること、ヒント、コツ、情報などを紹介しています。

がんの特性:細胞死への抵抗性

詳細を読む
投稿一覧

がん細胞について知られていることを1つ挙げるとしたら、それは死に抵抗することができるということです。細胞が損傷を受けると細胞死をプログラムする、アポトーシスという機構に侵入します。アポトーシスは通常、発生や成長の段階で細胞を適切に除去することで正常な組織を維持し、損傷を受けた細胞や病原体に感染した細胞を除去することで個体を健康な状態に保つメカニズムです。ところが、がん細胞はいくら異常な増殖をしても、アポトーシスによって除去されることがありません。

18-CEL-47282-Blog-Hallmarks-Cancer-1-Resisting-Cell-Death

がん細胞は、損傷を受けた細胞や異常な細胞を検出する機構を阻害して、適切なシグナル伝達やアポトーシスの活性化を妨害しています。がん細胞はまた、下流シグナル伝達そのものまたはアポトーシスに関与するタンパク質に欠損をきたし、これもまた適切なアポトーシスが阻害される原因となります (1,2)

また、Hanahan博士とWeinberg博士によって提唱された「がんの特性」のひとつに挙げられている「増殖抑制の回避」においても、アポトーシスは重要な意味をもちます。細胞内外からのアポトーシス誘導刺激に対して、アポトーシス実行のプログラムを開始させないことが、がん細胞にとって重要であると言えます。

がん細胞が細胞死を免れる方法を明らかにするために、まずはアポトーシスを誘導し得る、様々な経路を精査する必要があります。

Caspase-8:Caspase-8を活性化するいくつかのデスレセプターによって、アポトーシスが誘導されます。

  1. Caspase-8:Caspase-8を活性化し、その活性型フラグメントを放出するいくつかの受容体が下流のカスパーゼを切り出し活性化し、アポトーシスを誘導します。
  2. RIPキナーゼ: RIPキナーゼは、細胞ストレスによって誘導されるNF-κBを介した生存維持や炎症反応のほか、アポトーシス促進経路の重要な制御分子です。
  3. Bcl-2: Bcl-2は、アポトーシスを誘導する様々な刺激に対し、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出を抑えることで、細胞の生存維持を行います。
  4. p53: p53は、DNA損傷やゲノム異常への細胞応答に重要な役割を果たすがん抑制タンパク質であり、「マスタースイッチ」と位置付けられています。p53の活性化によって、細胞周期の停止とDNA修復、もしくはアポトーシスが誘導されます。p53は複数の部位に、リン酸化やアセチル化といった翻訳語修飾を受けることが知られており、これらの反応の一部はChk2やATMによって触媒されます。

細胞死への抵抗性についてもっと詳しく知りたい方はこちら

がんの特性について、研究対象のガイドブックのダウンロードはこちら

アポトーシスなどのプログラム細胞死を起こした細胞を強固に検出するCST® TUNELキットの詳細はこちら

がんの特性 (Hallmarks of cancer) はRobert Weinberg博士とDouglas Hanahan博士によって提唱され、Cell誌に発表されたものです1。彼らは、複雑ながんの性質を、より小さな特性に細分化して捉えることを提案しています。今回の記事では「細胞死への抵抗性」と題し、がんの特性の1つに関連する内容を記載しました。本シリーズの他の記事では、今回触れなかった他の特性についても解説します。

  1. Hanahan, D; Weinberg, RA (4 March 2011). 「Hallmarks of Cancer: the next generation". Cell144 (5): 646–74. doi:10.1016/j.cell.2011.02.013PMID 21376230
  2. Elmore, S (June 2007). "Apoptosis: a review of programmed cell death"Toxicologic Pathology35 (4): 495–516.  doi: 10.1080/01926230701320337PMC 2117903PMID 17562483
Chris Sumner
Chris Sumner
Chris SumnerはLab Expectationsの主任編集者でした。疾患治療についての読み書きをしていないときは、森の中をハイキングしたり、ギターを弾いたり、世界で一番のロブスター・ロールを探したりしています。

関連する投稿

パーキンソン病におけるオートファジー-リソソーム経路の特性解析

CSTは、PD研究を前進させるためにMichael J. Foxパーキンソン病財団 (MJFF) と...

従業員の意向を反映する世界各地への寄付活動:人道支援に15万ドルを寄付

寄付および助けを必要とする人をサポートするという考えが、Cell Signaling Technology (CST) の…
Krystyna Hincman2024年3月20日

抗体標識キットよりも標識サービスを推奨する5つの理由

マルチプレックス解析の増加に伴い、抗体標識の需要がますます高まっています。従来型または...
Alexandra Foley2024年3月6日
Powered by Translations.com GlobalLink OneLink SoftwarePowered By OneLink