がん細胞について知られていることを1つ挙げるとしたら、それは死に抵抗することができるということです。細胞が損傷を受けると細胞死をプログラムする、アポトーシスという機構に侵入します。アポトーシスは通常、発生や成長の段階で細胞を適切に除去することで正常な組織を維持し、損傷を受けた細胞や病原体に感染した細胞を除去することで個体を健康な状態に保つメカニズムです。ところが、がん細胞はいくら異常な増殖をしても、アポトーシスによって除去されることがありません。
がん細胞は、損傷を受けた細胞や異常な細胞を検出する機構を阻害して、適切なシグナル伝達やアポトーシスの活性化を妨害しています。がん細胞はまた、下流シグナル伝達そのものまたはアポトーシスに関与するタンパク質に欠損をきたし、これもまた適切なアポトーシスが阻害される原因となります (1,2)。
また、Hanahan博士とWeinberg博士によって提唱された「がんの特性」のひとつに挙げられている「増殖抑制の回避」においても、アポトーシスは重要な意味をもちます。細胞内外からのアポトーシス誘導刺激に対して、アポトーシス実行のプログラムを開始させないことが、がん細胞にとって重要であると言えます。
がん細胞が細胞死を免れる方法を明らかにするために、まずはアポトーシスを誘導し得る、様々な経路を精査する必要があります。
Caspase-8:Caspase-8を活性化するいくつかのデスレセプターによって、アポトーシスが誘導されます。
細胞死への抵抗性についてもっと詳しく知りたい方はこちら
がんの特性について、研究対象のガイドブックのダウンロードはこちら
アポトーシスなどのプログラム細胞死を起こした細胞を強固に検出するCST® TUNELキットの詳細はこちら
がんの特性 (Hallmarks of cancer) はRobert Weinberg博士とDouglas Hanahan博士によって提唱され、Cell誌に発表されたものです1。彼らは、複雑ながんの性質を、より小さな特性に細分化して捉えることを提案しています。今回の記事では「細胞死への抵抗性」と題し、がんの特性の1つに関連する内容を記載しました。本シリーズの他の記事では、今回触れなかった他の特性についても解説します。