本シリーズのパート1では、プロトコールに適切なコントロールを組み込むことの重要性を説明しました。パート2では、クロマチンの調製が実験の最終結果にどのように影響するかについて説明しました。パート3では、免疫沈降に用いる抗体について説明しました。今回は、データの解析について説明します。
目的の標的タンパク質と共に免疫沈降し、精製したDNAを解析する方法はいくつかあります。以下に、最もよく使用されている2種類の方法を説明します。
リアルタイムPCR
精製したDNAは、スタンダードPCRまたは定量的リアルタイムPCRのいずれかの方法で解析できます。免疫的に濃縮して精製されたDNAをPCR解析することで、様々な生物学的条件下で特定のタンパク質-遺伝子相互作用を解析することが可能になります。これらの実験には目的の領域に特異的なプライマーが必要なため、濃縮産物のデータは増幅される狭いゲノム遺伝子座に限定されます。
PCRの結果は、リアルタイムPCR装置に付属のソフトウェアを用いて解析することができます。あるいは、以下の式を用いて手作業でIP効率を算出することも可能で、IP効率はインプットクロマチンに対する比率として算出します。
次世代シーケンシング (NGS)
次世代シーケンシング (NGS) は、ChIP-seqと呼ばれるプロトコールを用いて、ChIP後の免疫沈降したDNAの解析に使用できます。ChIP-seqにより、リアルタイムPCRでは得られない、ゲノム全体にわたるタンパク質-DNA相互作用の高分解能を持つ解析を行うことができます。例えば、下図に示す実験では、活性型のHistone H3K4me3、不活性型のHistone H3K27me3、およびH3K27me3を修飾するポリコーム群転写因子のEzh2に対する抗体を用いてIPを行いました。Ezh2は、GAPDH遺伝子ではなくHoxA遺伝子群に結合することが知られており、以下に示すリアルタイムPCRと次世代シーケンシングのいずれでも確認できます (I) 。
重要なことは、リアルタイムPCRでは予め選択したゲノム上の遺伝子座しか調べることができないのに対し、NGSではゲノム全体のH3K4me3やH3K27me3修飾、Ezh2結合部位のプロファイルを作成することができます。この方法によって得られる情報は豊富なため、ChIP-seqは正常な発生や病理学的状態のいずれかで起こるエピジェネティックな変化を研究するためには有力な手法となります。
本記事は、ChIPプロトコールの改善方法に関する4回シリーズの最終回です。これらの投稿は、私達の完全版「Guide to Successful Chromatin IP」から編集したもので、下のボタンをクリックしてダウンロードすることができます。