クロマチン免疫沈降シーケンシング (ChIP-seq) は、様々な生物学的イベントや種々の疾患 (がん、神経変性疾患など) の進行に対して遺伝子制御がどのように関与しているのかを解明するために研究者が使用する、柔軟性が高く強力な手法です。
ChIP-seqを行うとき、クロスリンクされたDNAは、まずそれが相互作用するタンパク質と共に免疫沈降されます。これは、ChIP-seq用に検証済みのされた特異的な抗体を使い行います。濃縮されたDNAは、DNAライブラリーを生成するために使われた後、Illumina® HiSeq 2500システムなどの次世代シーケンシング (NGS) プラットフォームを用いてシーケンシングされます。
この手法により、研究者は、DNAとタンパク質の相互作用をゲノム全体に対して調べることができ、以下のことが可能となります:疾患に関連する転写調節機構の解析、組織特異的エピジェネティック制御の解析、クロマチン組成の解析。1また、ChIP-seqは、胚性幹細胞分化に重要な役割を果たす「エンハンセオソーム」を構成する転写因子を含む制御因子の解析にも使われています。2さらに、ChIP-seqは、様々な病態において調節不全が認められているヒストン修飾とDNAのメチル化がクロマチン動態に対して、どのような影響を及ぼすのかについても知見を提供します。3-5
高品質で信頼性の高いChIP-seqデータを作成するには、ChIPアッセイとDNAライブラリー調製を最適化することが必要です。可能な限り優れたChIP-seqの結果が得るられるよう、Cell Signaling Technologyは、DNAライブラリー調製に関するアプリケーションノートにおいて実験のヒントや推奨事項をご提供しています:
- 濃縮されたDNAの量に基づいて、PCRのプロトコールを調節する方法
- シーケンシングする前に、DNAライブラリーの品質を確認する方法
- 各サンプルのライブラリーに必要なシーケンシング深度を得るために、DNAライブラリーをプールする方法
- より詳細な解析を始める前に、ChIP-seqデータの品質を迅速に評価する方法
また、CSTは、ChIP-seq検証済み抗体やキットおよび関連試薬のみならず、ChIP実験に役立つプロトコールやツールをご用意しています。
参考文献:
- Nakato, R. and Shirahige, K. (2017) Brief Bioinform 18(2):279-290.
- Beck, S. et al. (2015) Cell Mole Life Sci 72:199-216.
- Grosselin, K. et al. (2019) Nature Genetics 51:1060-1066.
- Schick, S. et al. (2015) J Cell Sci 128(23):4380-4394
- Arneson, D. et al. (2018) J Genet 97(3):795-806.
- Simmonds, P. et al. (2017) Genome Med 9:54.
- Berson, A. et al. (2018) Trends Neurosci 41(9):587-598.