CSTブログ: Lab Expectations

Cell Signaling Technology (CST) の公式ブログでは、実験台に向かう時間に期待すること、ヒント、コツ、情報などを紹介しています。

SARS-CoV-2危機の中での研究用抗体の特異性・再現性の重要性

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新型コロナウイルスの危機に直面している現在、世界中の医療従事者と研究者がSARS-CoV-2の検査法の開発にしのぎを削っています。検査法には、(ウイルス由来の遺伝子の存在の有無を調べることにより) 現在感染しているかどうかを診断するPCR法や、血液を用いて抗体検査キットを使用し、ウイルス感染の履歴や免疫の有無を調べる方法 (血清検査とも呼ばれる) 等があります (1,2,3)。科学者たちはこのような診断ツールにより、SARS-CoV-2パンデミックの規模と経緯を詳しく調べようとしています。

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しかしオックスフォード大学医学部教授であるJohn Bell氏によれば、英国とスペインを含む国際学会に属する科学者たちは、評価用に提供された多くの血清学的抗体検査キットについて「十分に機能しなかった」と判断しました (1)。Bell教授はさらに、偽陰性や偽陽性の数が多すぎることにより、ウイルスへの暴露と免疫を含む、疫学的データの不正確さにつながっていると指摘しています (1)。米国では、米国科学アカデミー (NAS) の 新興感染症・21世紀健康脅威常設委員会が、特異的な血清抗体検査の信頼性と利用可能性に関して同様の意見を述べています (4)。NASの科学者たちはホワイトハウス宛の書簡の中で、現行の抗体検査の結果は「厳格な審査と性能の特性分析が行われるまで、慎重に扱うべきである」と述べています (4)。 

科学者たちがこのウイルスに対する診断法と治療法の開発に全力を挙げている中、様々な分析法や試薬を評価・検証し、一貫性と再現性のある結果を出すことがこれまでになく重要になっています。Cell Signaling Technology (CST) は、(当社SARS-CoV-2関連製品を含む) 必要な試薬類、キット、サービスを世界中の感染病研究者にご提供いたします。これらのリソースは、このウイルスがどのように振る舞い、どのようにしたら阻止することができ、どのように治療すべきかについて理解するための手助けとなるでしょう。CSTの研究者は、積極的に科学者との共同研究も行い、SARS-CoV-2の作用機構を理解すると共に、今後のワクチン開発に有益なウイルスの分子的策略を理解するために必要な手がかりについて考察を行なっています。

SARS-CoV-2研究は緊急性が高く、大変重要です。そしてCSTは、研究用抗体の検証と再現性がいかに重要であるかを理解しています。不明瞭な結果を出す試薬で無駄にする時間はありません。ましてや、試薬の特異性が低いため実験に失敗するなどもってのほかです。品質、特異性、一貫性を確実にするため、CSTはHallmarks of Antibody Validation (抗体検証における戦略、出典:Uhlen, M., Bandrowski, A., Carr, S. et al. A proposal for validation of antibodies. Nat Methods 13, 823–827 (2016) ) を遵守しています。 

CSTが開発する抗体はすべて、アプリケーションごとに厳格な社内検証試験を経ており、これらは標的や必要性に応じて抗体ごとにカスタマイズされています。CSTでは常に、製品を自社生産し、社内で厳格な検証を行うという姿勢を貫いて来ました (販売品の95%以上を自社製造しています)。単一のアッセイのみで検証結果を得ることはできないため、検証試験は以下のいずれかの組み合わせとなります。

1) バイナリーモデル - 発現している、またはしていない細胞株のパネルの解析、野生型とノックアウト (遺伝子ノックアウトまたはCRISPRベース) の解析

2) 異なる発現レベルでの解析 - 標的タンパク質の発現レベルが分かっている細胞株の大規模なパネル (高レベル発現株と低レベル発現株) 、siRNAやノックアウトヘテロ接合の解析

3) 異なるアプローチによる解析 - 抗体ベースでないアッセイ (質量分析を含む) による検証

4) 複数抗体による解析 - 濃縮ベースのアプリケーション (IP、ChIP、ChIP-seq) で、同じ標的に結合する異なる抗体で得られたシグナルを比較する、あるいは免疫染色アプリケーションで、同一の染色パターンまたは標的の局在が観察されることを確認する

5) 異種発現 - 野生型 (または変異型) 標的タンパク質を異種発現させた細胞株を使った評価

6) 相補的アッセイ - 競合ELISA、ペプチドドットブロット、タンパク質アレイ、または抗原ペプチドによるブロッキングにより、修飾特異性シグナルが消失することを確認し、シグナルの特異性を確認する

さらにCSTでは、リコンビナントモノクローナル抗体も幅広く取り揃えてご提供しています。これらの抗体はロット間の一貫性が高く、供給量も安定しています。これらの要素は、研究者と医療研究者にとって非常に重要です。  

いつの時代も、意義深くインパクトのある洞察を得るための研究実験の結果と品質は、インプットに依存しています。世界中が危機に面している間、何度実験を繰り返しても毎回予測通りに機能する、信頼できる試薬を使用することが大変重要です。十分に検証された抗体をあなたの研究にお使いいただくことで、(SARS-CoV-2) ウイルス疾患の生物学的機構を、より迅速に、より高い信頼性のもとで解明する助けとなるでしょう。CSTも同じ目標を掲げています。それは、この医療危機と闘うためのアッセイや治療薬の研究と開発を加速し前進させるための手助けをするということです。

参考文献: 

  1. https://www.bloomberg.com/amp/news/articles/2020-04-07/new-test-hopes-dashed-as-u-k-finds-antibody-kits-don-t-deliver
  2. https://www.genomeweb.com/molecular-diagnostics/congressional-leaders-seek-coronavirus-test-information-fda#.XpiS3lNKhTY
  3. https://www.cnn.com/2020/04/14/health/antibody-test-explainer/index.html
  4. https://www.cnn.com/2020/04/14/health/coronavirus-antibody-tests-scientists/index.html
Srikanth Subramanian, PhD
Srikanth Subramanian, PhD
Srikanth Subramanian博士は、Cell Signaling Technologyのシニアプロダクトサイエンティストです。

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