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老化研究に必須の10のマーカー

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細胞周期の停止がいつ、なぜ起こるかを理解することは、発生、加齢、がんの研究をはじめ、それ以外の多くの研究分野にとっても重要です。

最高のツールが最高の結果を生み出すことは、誰もがよく知っています。ここでご紹介する老化研究のためのトップ10の標的リストは、そのすべてをカバーしています!

#1:β-Galactosidase Staining Kit

老化細胞は、pH依存的にβ-ガラクトシダーゼを発現することが知られており、特にpH 6で検出が可能です1。弊社の包括的なSenescence β-Galactosidase Staining Kit #9860には、細胞だけでなく凍結組織の、pH 6におけるβ-ガラクトシダーゼ活性の検出に必要なすべての試薬が含まれています。複数の細胞集団あるいは組織サンプルを迅速かつ簡単に試験するのに最適です。原理は簡明であり、青色の染色は明るく鮮明です。

Beta Galactosidase Staining Kit

Senescence β-Galactosidase Staining Kit #9860を用いて、細胞集団倍加数が29の正常なWI38細胞 (左) と細胞集団倍加数が36の老化したWI38細胞 (右) を、pH6.0でβ-ガラクトシダーゼ染色しました。

#2:p53リン酸化p53

p53は非常によく研究されており、誰もがご存じかもしれません。DNA損傷応答 (DDR) パスウェイの主要なプレーヤーであるp53腫瘍抑制因子タンパク質は、細胞周期の重要な調節因子でもあり、蓄積されたリン酸化p53はサイクリン依存性キナーゼ阻害剤 (CDKI) の活性化を促進し、最終的に細胞周期の停止につながります。HT-29細胞のの共焦点免疫蛍光染色による解析

HT-29細胞をp53 (7F5) Rabbit mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。アクチンフィラメントをDY-554 phalloidin (赤) で染色しました。

先に述べたように、老化細胞の細胞周期停止は、蓄積して複数の異なるCDKIを活性化するリン酸化p53に大きく依存しています。p53とリン酸化p53の量の比較は、多くの場合、DDRパスウェイと老化を研究する上で重要なステップになります。

MCF-7細胞の共焦点免疫蛍光染色による解析

未処理 (左) あるいはEtoposide処理 (右) したMCF-7細胞をPhospho-p53 (Ser46) Antibody (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察しました。アクチンフィラメントをDY-554 phalloidin (赤) で染色しました。

#3:p21

最も確立された老化マーカーの1つであるp21は、リン酸化p53の下流のCDKIです。CDK2に対しては、p21は、G1/S期の進行をブロックすることにより細胞周期の阻害タンパク質として機能します (1)。

MCF7細胞の共焦点免疫蛍光染色による解析

MCF7細胞をp21 Waf1/Cip1 (12D1) Rabbit mAb (赤) およびPhospho-Histone H3 (Ser10) (6G3) Mouse mAb #9706 (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察しました。DRAQ5® #4084を用いてDNAを染色し、青の疑似カラーで示しました。

#4:p16

もう1つの一般的かつ信頼できる老化マーカーであるp16の発現は、細胞の老化を進行させると考えられています 2。p16はCDKIのうちINK4ファミリーのメンバーであり、CDK4およびCDK6と共に作用して細胞周期をG1期で停止させます 3

HeLa細胞とHUVEC細胞ライセートのウェスタンブロット解析

HeLa細胞およびHUVEC細胞からの抽出物をp16 INK4A (D3W8G) Rabbit mAb (上) あるいはβ-Actin (D6A8) Rabbit mAb #8457 (下) を用いてウェスタンブロッティングにより解析しました。

#5:LaminB1

老化細胞はしばしば形態学的な変化を示すため、LaminB1は老化の別の有用な指標になります。核の形態のマーカーであるLamin B1の発現は、ヒトおよびマウスの老化細胞にて失われます4。LaminB1の消失およびp21p16の蓄積の増加は、すべて老化の重要かつ古典的な特性です。

Lamin B1およびβ-Actinを用いたHT-29細胞の共焦点免疫蛍光染色による解析

HT-29細胞をLamin B1 (119D5-F1) Mouse mAb (緑) およびβ-Actin (13E5) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #8584 (赤) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。Propidium Iodide (PI)/RNase Staining Solution #4087を用いてDNAを染色し、青の疑似カラーで示しました。

#6:老化関連分泌表現型 (SASP)

老化細胞には多くの共通の特徴がありますが、決して同一ではありません。老化細胞の集団それぞれは、固有のレベルのサイトカイン、成長因子、およびプロテアーゼによって特徴づけられます。これを老化関連分泌表現型 (SASP) と呼びます。SASP Antibody Sampler Kitには、老化細胞の研究に使用される様々なタンパク質に対する抗体が厳選されています。これらの抗体により細胞集団に固有のSASPを決定できます。

組換えヒトInterleukin-1βのウェスタンブロット解析

組換えHuman Interleukin-1β (hIL-1β) #8900をIL-1β (D3U3E) Rabbit mAbを用いてウェスタンブロッティングにより解析しました。

#7:Rbリン酸化Rb

通常、Rbのリン酸化は、標的の転写抑制を緩和し細胞周期を進行させるために必要です。p21p16を含むさまざまなCDKIによる細胞周期の阻害は、Rbの過剰活性化につながります。これは最終的に細胞周期と老化の停止を促進します4

SH-SY5Y細胞の共焦点免疫蛍光染色画像

SH-SY5Y細胞をRb (4H1) Mouse mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。アクチンフィラメントをAlexa Fluor 555 phalloidin (赤) で染色しています。

細胞周期を進行させるにはRbがリン酸化する必要があるため、リン酸化Rbは老化細胞には見られません。p53と同様に、老化を研究する上でRbとリン酸化Rbの比較解析が最も重要です。

MCF7の共焦点免疫蛍光染色による解析

未処理 (上) あるいはλホスファターゼ処理 (下) したMCF7細胞 (左) およびBT-549細胞 (右) をPhospho-Rb (Ser807/Ser811) (D20B12) XP® Rabbit mAb (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察しました。アクチンフィラメントは、DY-554 phalloidin (赤) で染色しました。DRAQ5® #4084を用いてDNAを染色し、青の疑似カラーで示しました。

#8: Gamma-H2A.X

Gamma-H2A.XDDRパスウェイの古典的なマーカーです。DNA損傷ではH2A.XのSer139がリン酸化されてGamma-H2A.Xが形成される迅速で堅牢な応答が起こるため (5)、DDRパスウェイと老化を研究するための強力なツールになります。

未処理あるいはUV処理したパラフィン包埋HT-29細胞をPhospho-Histone H2A.Xを用いて免疫組織化学染色で解析しました

未処理 (左) あるいはUV処理 (右) したパラフィン包埋HT-29細胞をPhospho-Histone H2A.X (Ser139) (20E3) Rabbit mAbを用いて免疫組織化学染色で解析しました。

#9:53BP1

53BP1はもともとp53の結合パートナーとして同定され、その転写活性を高めることが示唆されました6, 7。53BP1はDNA修復に重要な役割を果たします。また、DNA損傷部位に動員されることが知られており、これらの部位での53BP1の保持はγ-H2A.Xに依存しています8

HeLa細胞を53BP1 Antibodyを用いて免疫蛍光染色し、53BP1共焦点顕微鏡で観察しました。

HeLa細胞を53BP1 Antibody (緑) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で観察しました。アクチンフィラメントをAlexa Fluor® 555 phalloidin (赤) で染色しています。

#10: Ki67

何かを検出する最善の方法の1つは、それが何をしていないかを特定することです。Ki67は、増殖細胞のマーカーとして頻繁に使用される核タンパク質です。G1期から有糸分裂の終わりまでの範囲で検出されますが、細胞がG0休止期にある時には検出されません9。老化細胞の特性は細胞周期からの永久的な退出であるため、老化細胞はKi-67を発現しません。

Ki67を用いたヒト乳管がん組織のIHC解析

パラフィン包埋ヒト乳がんをKi-67 (8D5) Mouse mAbを用いて免疫組織化学染色で解析しました。

老化研究に用いる抗体の選択 

老化細胞のマーカーはたくさんあるのに、なぜ1つだけを選ぶのですか?これらの基本的なマーカーがいくつか含まれているSenescence Marker Antibody Sampler Kitからスタートすることをお勧めします。老化細胞の同定を始めるのに最適です。 

また、関連する標的の特定にDNA損傷応答 (DDR) のインタラクティブパスウェイ図をご利用ください。

 

参考文献:

  1. Hernandez-Segura A, Nehme J, Demaria M. Hallmarks of cellular senescence. Trends in Cell Biology. 2018;28(6):436-453. doi:10.1016/j.tcb.2018.02.001
  2. LaPak KM, Burd CE. The molecular balancing act of p16(INK4a) in cancer and aging. Mol Cancer Res. 2014;12(2):167-183. doi:10.1158/1541-7786.MCR-13-0350
  3. He S, Sharpless NE. Senescence in Health and Disease. Cell. 2017;169(6):1000-1011. doi:10.1016/j.cell.2017.05.015
  4. Gorgoulis V, Adams PD, Alimonti A, et al. Cellular Senescence: Defining a Path Forward. Cell. 2019;179(4):813-827. doi:10.1016/j.cell.2019.10.005
  5. Sharma A, Singh K, Almasan A. Histone H2AX phosphorylation: a marker for DNA damage. Methods Mol Biol. 2012;920:613-626. doi:10.1007/978-1-61779-998-3_40
  6. Iwabuchi K, Bartel PL, Li B, Marraccino R, Fields S. Two cellular proteins that bind to wild-type but not mutant p53. Proc Natl Acad Sci U S A. 1994;91(13):6098-6102. doi:10.1073/pnas.91.13.6098
  7. Ward IM, Minn K, Jorda KG, Chen J. Accumulation of checkpoint protein 53BP1 at DNA breaks involves its binding to phosphorylated histone H2AX. J Biol Chem. 2003;278(22):19579-19582. doi:10.1074/jbc.C300117200
  8. Wang B, Matsuoka S, Carpenter PB, Elledge SJ. 53BP1, a mediator of the DNA damage checkpoint. Science. 2002;298(5597):1435-1438. doi:10.1126/science.1076182
  9. Lawless C, Wang C, Jurk D, Merz A, Zglinicki Tvon, Passos JF. Quantitative assessment of markers for cell senescence. Experimental Gerontology. 2010;45(10):772-778. doi:10.1016/j.exger.2010.01.018

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