毎年開催している、前途有望な黒人科学者を表彰する第4回エッセイコンテストの受賞者を紹介します。CSTは、研究者の方々から届いたエッセイに記載されている、彼らの背景にある素晴らしいストーリーに冒頭から引き込まれました。
前途有望な黒人科学者の表彰制度の詳細と、リンク先の受賞エッセイをご覧ください。
前途有望な黒人科学者の表彰制度とは?
Cell Signaling Technology (CST)、Cell Press社、Elsevier財団がスポンサーを務める前途有望な黒人科学者の表彰制度は、生命科学、健康科学、地球および環境の科学、データ科学の分野で活躍する若い黒人科学者を対象としたエッセイコンテストです。2020年に始まったこの表彰制度は、多様性を高め、若手研究者の専門的能力の開発をサポートするための資金を提供することを目的としています。この賞は、埋めるべき格差に焦点を当て、これらの問題の解決に向けた不平等性の是正をサポートします。
受賞者を選考するため、応募者には、科学的な展望と目標、科学に興味を持ったきっかけ、より包括的な科学コミュニティにどのように貢献していきたいかをまとめたエッセイを提出していただきます。名高い学術諮問委員会によって選出された受賞者 (学部生2名、大学院生および博士研究員2名) に対し、それぞれ10,000ドルの賞金、希望するElsevierカンファレンスへの無料登録、交通費500ドルが授与されるだけでなく、受賞エッセイをCellまたは希望する他のCell Press誌に掲載します。さらに、特別賞に選出された4名に対し、それぞれに500ドルの賞金が授与され、受賞エッセイをiScienceに掲載します。
2024年の受賞者
それでは、第4回前途有望な黒人科学者の受賞者を紹介します (それぞれのエッセイへのリンクを含みます)。
大学院生/ポスドク:Senegal Alfred Mabry (コーネル大学)
エッセイ題名: もう『震え』はいらない!黒人研究者および地域のまとめ役としてパーキンソン病と闘う
Senegal Alfred Mabryは、コーネル大学の心理学部博士課程の学生です。受賞エッセイでは、STEM分野に進む機会が限られているニューヨークブロンクスで育ち、コーネル大学心理学部でヒト神経科学を学ぶ最初の黒人男性博士課程学生となった自身の経験を綴っています。
科学の文化を変えようと奮闘した、彼の努力が緻密に描写されたこのエッセイでは、目標に向けてどのように取り組んできたかが綴られています。例えば、ニューヨークアムステルダムニュースに、高校生の自分がどのような困難に直面しているかを書面で送付したり、科学を「民主化」するために必要な知識やスキルを持つ他の生徒のために、自ら学部コースを開設したりしてきました。
Senegalの研究分野はパーキンソン病です。Senegalによると、この疾患の患者の多くは、彼が研究者としての道を歩み始めた時と同様に、周りから忘れ去られていると感じると言います。この不平等さに立ち向かうために、Senegalは地域の大学や非営利団体、医師、研究者と協力して、パーキンソン病患者のケアと支援を向上しようとしています。
「高齢者の方々の『震え』に関する話を聞きましたが、これらの話には、私たちが健康を強化するために役立つ医療や知識、研究にアクセスする権利を奪われてきたという、深い歴史的な不平等を反映していることが分かりました。もう、震えたくはないのです!」
私たちは、Senegalがこれまでに成し遂げてきた貢献に大変感銘を受けており、彼が次に起こす行動を楽しみにしています。
大学院生/ポスドク:Jaye Antoinette Wilson (イェール大学環境学部)
エッセイタイトル: しなやかな羽と目に見える影響:蛹からSTEM分野に変化を起こす蝶へと成長した私の記録
Jaye Antoinette Wilson (@Unnicheable) は、イェール大学環境学部でサステナブルな化学を専攻する博士課程の2年生であり、化学業界におけるサステナビリティを研究しています。彼女の受賞エッセイでは、自身の科学分野におけるこれまでの経験を、多くの転換期や逆境に直面する蝶の発達になぞらえると共に、自身の羽を広げて成長する上でメンターの存在がどれほど重要であったかについても強調しています。
科学に興味を持ったきっかけは、自身の幼少期の健康問題であり、これにより、科学を利用して変化をもたらす方法について学ぶことへの関心が生まれました。Jayeは、テキサスA&M大学 (TAMU) の学部課程および修士課程に在籍している際に、マイノリティの若者の教育に携わり、STEM分野に進むことを勧めるなど、STEM分野における多様性の拡大に注力しました。現在は、イェール大学のStudent Chapter of the National Organization for the Professional Advancement of Black Chemists and Chemical Engineers (NOBCChE) の執行役員などとして、多様性、公平性、包括性の重要性を説き続けています。
「忍耐力、好奇心、そして創造への情熱が、私自身の変容を後押ししてきました。そして今、私の羽は永続的に維持されています。これは、奉仕の心と科学が融合した「生きた証」であり、この羽には、私の祖先が直面した困難や彼らの家族愛、メンターシップ、そして地域社会が共に成し遂げた結果が息づいています。」
STEM分野における多様性の真の提唱者としての姿に心打たれました。今後の成功を心よりお祈りします。
大学生:Kevin Christopher Brown Jr. (カリフォルニア州立大学サンマルコス)
エッセイタイトル: 手術台からグローバルサイエンスへ:瀕死体験から生まれた人生の目的
Kevin Christopher Brown Jr.の手に汗を握るようなエッセイは、心臓手術を目前にした手術台から始まります。この経験をきっかけに、Kevinは、科学と医学を通じて人の役に立つ仕事をするという意思を固めました。Kevinは、カリフォルニア再生医療研究所でのインターンとして勤務した際に、幹細胞がどのように個別化医療に役立てられるかに興味を抱いただけでなく、アフリカ系アメリカ人二世の大学生である自身も、この分野で成功できるかもしれないという自信を得たとエッセイに綴っています。
Kevinは、「現在のワンパターンな医療は、人種の多様性に特異的で重要な変数を除外することになりかねません。」と述べています。これに対処するため、Kevinは、個別化医療を現代の医療に統合する堅牢な幹細胞モデルを開発し、幹細胞が、増え続ける心血管に問題を有する患者にどのように役立てられるかを理解する研究を行うことを目指しています。
「私の目標は、再生医療の最先端に立つことです。再生医療は、今後数十年間で成熟するでしょう。これは、医学と科学が疾患治療効果を高めることに役立つはずです。そして同時に、マイノリティと呼ばれる人々の不信感も軽減されることを願っています。」
Kevinのエッセイは、冒頭から私たちを夢中にさせました。この賞の受賞が、Kevinの目標達成に役立つことを願っています。
大学生:Akorfa Dagadu (マサチューセッツ工科大学 (MIT))
エッセイ題名: 過去に進歩という名の橋を掛ける:ポリマーの世界における私の使命
Akorfa Dagaduは、化学生物学工学を学ぶMITの学生です。Akorfaは、使い捨てプラスチックによる汚染に対する長期的なソリューションの開発を目指しています。Akorfaのエッセイでは、故郷であるガーナのアクラで、蓄積したプラスチック廃棄物による排水システムの詰まりが大洪水を引き起こしたと綴られています。このような大洪水は、世界の他の多くの地域社会でも起こっています。
Akorfaは、この危機を受けて、移動式プラットフォームを介したプラスチックのリサイクルに報酬を与える、サステナブルな組織を共同設立しました。しかし、Akorfaは、リサイクルだけでは不十分であり、プラスチックの生産を根本から見直す必要があると述べています。そのため、AkorfaはMITにおいて、Proteinase Kを活用してプラスチックモノマーを再利用する研究を進めています。
Akorfaは、このエッセイにおいて、地球規模の問題を解決するための集合知の重要性を強調しており、多様性を尊重して称賛する包括的な科学コミュニティを育成すべきであると述べています。
「災害の現場からMITの研究室まで、私は常に『環境への』贖罪を追求してきました。」
プラスチックによる汚染は、誰にとっても身近な問題です。この、さらに深刻化する問題に取り組むAkorfaの努力に対し、心からの賞賛を送ります。
今年のRBSAの受賞者の皆さん、おめでとうございます!
前途有望な黒人科学者の表彰に関する詳細
- 参加方法を含め、この賞に関する詳細はCell Press社のウェブサイトをご覧ください。
- 関連ブログ:2023年前途有望な黒人科学者賞:第3回エッセイコンテスト受賞者の紹介