B細胞受容体 (BCR) 下流の細胞内シグナル伝達ネットワークの活性変化は、B細胞の表現型を変化させます。このプロセスと、B細胞の可塑性に関する知識は、B細胞がどのように免疫応答を調節するかを理解するために不可欠です。
B細胞とは何か?
B細胞は、適応免疫応答の液性免疫で中心的な役割を果たす専門化されたなリンパ球です。ナイーブB細胞は、骨髄の造血幹細胞から産生され、適応応答の一部として可塑性を備えており、以下のような異なる運命を辿ります。
- 増殖して、抗体を生産するエフェクターB細胞 (形質細胞) に分化する
- メモリーB細胞に分化する
- アナジー、即ち免疫反応不顕性状態となる
- アポトーシスによるクローン消失を受ける
これらの運命は、細胞表面の特異的なBCRの活性化の持続時間と強さによって制御されています。BCRは抗原を認識してプロセシングを促進しますが、このプロセスはごく一部の例外を除いて、T細胞の補助に依存しています。
B細胞受容体とは何か?
BCRは細胞表面受容体として発現する免疫グロブリン (Ig) 鎖であり、形質細胞から放出される抗体とほぼ同じ構造をしています。Ig重鎖とIg軽鎖の可変域をコードするセグメントは精巧な遺伝子再編成のプロセスを経て形成され、このため、これらは単一抗原を特異的に認識することができるようになります。
抗原の存在下でBCRは凝集して「シグナロソーム」(signalosome:シグナル伝達タンパク質群) を形成します。シグナロソームはBCRや様々な細胞内チロシンキナーゼ (Srcファミリー、Sykキナーゼ、Btkキナーゼなど)、アダプタータンパク質から構成されます。これらの構成要素が協調して、遺伝子発現、細胞骨格の編成、細胞代謝の変化を誘導するシグナル伝達カスケードを開始します。
B細胞シグナル伝達の細胞応答
抗原の性質や、B細胞の成熟状態、BCRシグナル伝達の持続時間によって、細胞応答の結果が決定されます。抗原への強い反応が起こると、ほとんどのB細胞は急速に増殖して形質細胞に分化し、急性免疫応答において血流を循環する高濃度の抗体を分泌します。しかし、反応が弱い場合、B細胞のアナジー (反応の消失) が起こります。これは免疫寛容を誘導する上で重要で、免疫系が自己抗原に反応して攻撃するのを防ぎます。
また、一部のB細胞は抗原によって活性化され、抗原の認識能力を保持しますが、特定の病原体に遭遇して再活性化されるまで休眠状態となります。これらの細胞は、再感染した場合や、ワクチン接種による免疫応答を促進する上で非常に重要です。
B細胞マーカー
B細胞の発生と成熟のさまざまな段階を区別できるいくつかのマーカーが同定されています。これらのマーカーに対する特異的な抗体は、免疫組織化学染色によって (例えば、がんの微小環境における) 個々のB細胞タイプを同定するために使用したり、フローサイトメトリーで免疫細胞の不均一な集団から特定の細胞を定量化して単離する (免疫表現型解析として知られる手法) ために使用することができます。
未成熟B細胞 (CD19、CD34、CD45R)、成熟B細胞 (IgM、CD19)、活性型B細胞 (CD30)、メモリーB細胞 (CD40)、全B細胞 (CD79A) の同定に利用できるマーカーもあります。
パラフィン包埋した同系移植Renca (腎がん) 組織を、CD40 (E2Z7J) Rabbit mAb #86165を用いて、Leica® BOND™ Rx上で免疫組織化学染色しました。
このようなアプローチは、健常状態におけるB細胞の亜集団や、免疫応答におけるこれらの挙動を解析するために必要で、病原体にさらされた実験モデルやヒト検体、血液がん検体などで利用されます。
詳細はB細胞受容体シグナル伝達のパスウェイ図をご覧ください。