あなたは今パソコンの画面に向かっていますが、頭の中ではたくさんの思いが交錯しています。初めての論文投稿に対するレビュアーからのコメントを受け取ったばかりです。どこから始めればよいか、どう回答すればよいか分かりません。怒りや焦りも感じていますが、それより何より混乱しています。完璧な投稿だったはずなのに、誤りを見つけるなんてどういうことだろう。そうは思えないかもしれませんが、このような反応はいたって普通のことです。
初めて「筆頭」著者としての投稿を発表するのはとても大変です。私もそうでした!ラボの同僚が以前に行った実験の再実験を行い、新しいデータを取得し、共同研究プロジェクトの管理を行い、ようやく最初の投稿準備ができた時には、天にも昇る心地でした。最初は、インパクトファクターの高いジャーナルを狙っていました。でもこの研究は緊急で発表する必要があったため、ランクが高くなくても、とにかく早く発表させてくれるジャーナルを最終的には選びました。データ解析に何週間もかけ、ジャーナルの要求事項に合わせてフォーマットを修正し、共同研究者による修正を取り入れ、やっと投稿を行いました。すぐにもらえると思っていたピアレビューを何ヶ月も待ち続け (急いで発表する予定でしたが、それも立ち消えです!) 、やっと届いたレビューはこれでした:おびただしい数の批判と追加実験の要求です。ここからの経緯も決して簡単ではありませんでしたが、レビュアーへの対応を通じて、交渉を続けることや、冷静さを保つことについて、多くのことを学びました。
覚えておくべき最も重要なことは、レビュアーがコメントに対する返答を読むということです。単なる義務ではなく、自分の研究を改善する機会と捉えることが大切です。レビュアーに回答するときは、この事実を認識しておくことが大変重要です。なぜなら、編集者やレビュアーとコミュニケーションを取ることは、良い結果を得るのに大いに役立つからです。この経緯をできる限り前向きで効率の良いものにするために、大事なポイントがいくつかあります。
ステップ1:時間をかけてコメントをよく理解する
レビュアーのコメントを読んだらすぐに回答して投稿を擁護したくなる気持ちはよく分かりますが、少し待ってください。コメントを受け取ったことを感謝し、さらに、次回の投稿は科学的にもっと良いものになることを付け加えてください。著者や共同研究者とレビューについて話し合ってください。どのような修正が必要で、懸念にどのように対応するかをまとめた草案を作成してください。すべてのコメントを前向きに受け止めましょう。エディターとレビュアーからのフィードバックに基づく、良く考え抜かれた改定案は、投稿を改善するのにとても役立ちます。追加実験を行う必要があれば、実験計画を立て、これにより研究がどのように改善されるか考えます。計画とデザインが出来上がったら、論文の改訂に取り掛かります。
ステップ2:改訂の実施
再提出のために、スケジュール管理を行い、実験の優先順位を決めます。レビュアーは必ずしも発表に必須の実験そのものを提案するのではありません。著者がどうするかを決め、適切な実験を行う必要があります。必要に応じて、作業をスピードアップするために、追加の共同研究先を探します。共同研究先には、あなたのラボにはいない専門家がいるかもしれませんし、協力者がいれば1人で作業する必要がなくなります。私自身の経験から言うと、草稿を書く時に、新しく取得したデータや情報を各コメントの横に並べておくと便利です。要求された事項に合理的でないものがあると感じた場合には、それに実験で回答を出すことが難しいと感じる理由について、はっきりと説明してください。プレゼンテーションや科学的根拠をより分かりやすくすることに注力し、論文を改善するためにできるだけの努力をします。
ステップ3:エディターと健全なコミュニケーションを保つ
エディターは、ピアレビューのプロセスに積極的に参加します。改訂を行うとき、著者はエディターとその改訂計画について率直に議論を交わすべきです。要求されている実験が不必要だったり、不合理または生産性が低いと考えられるような場合は、特にそうです。でもその前に、コメントすべてを評価し、論文に貢献しないと考える根拠を考えます。エディターは、提案された修正内容に対するレビュアーとジャーナルの視点を中立的に伝達するので、役に立つことが多いです。結局のところ、著者、レビュアー、エディターがお互いに協力的なピアレビューを行うことで、全員が恩恵を受けることができます。
ステップ4:礼儀正しく、レビュアーのコメントに注意を払う
再投稿する準備ができたら、その旨をエディターに知らせます。カバーレターで、論文をレビューしてくれたレビュアーとエディターに感謝の意を示し、提案してもらったことがいかに品質の向上に役立ったかを伝えます。新しく行った実験や付け加えた図をリストにし、疑問と課題すべてにどのように対処したかを記述します。カバーレターは、完成した論文を売り込むチャンスとして利用します。レビュアーとエディターが提案したことすべてを行う必要はありません。相手はあなたと同じ科学者です。なぜある実験が不必要で、なぜあなたの意見が彼らと異なるかについて、よく考え抜かれた論理的な議論を進める方が、良い反応が得られるでしょう。議論の論調は、過度に慇懃になることなく、礼儀正しく、丁重でプロフェッショナルなものにします。たとえレビュアーがデータの一部を見逃していたり、誤った結論に至っていたとしても、これによりレビュアーの懸念のすべてが取り消されるわけではありません。私自身もレビュアーとして、著者がコメントに注意を払わなかったり、コメントを無視したら、苛立ちを感じます。懸念を無視しても何の役にも立ちません。エディターとレビュアーの両者に無視されたと感じさせてしまうだけです。
結局のところ、レビュアーへの最適な回答を導く公式は一つではありません。科学者によってアプローチの仕方は異なりますので、再投稿の「技」を学ぶには時間がかかる可能性があります。私は個人的には、論文執筆とピアレビューのスキルは、学生が自分の研究成果を発表する際に教授からのメンタリングで学ぶだけではなく、大学院の初期の課程でも教えるべきだと考えます。インパクトファクターの高いジャーナルでは特に、改訂なしで論文が発表されることは近年はほとんどありません。レビュアーに回答するのは面倒な作業であり、また残念なことに、著者にとっては厳しい現実に直面することでもあります。エディターとレビュアーは、論文の発表前に新しい目線で短所を見つけてくれる人であると考えましょう。コメント1つ1つに前向きに、かつ如才なくに回答することは、関係者全員にとって得策となります。