Cell Signaling Technologyは、2025年のEarth Monthを記念して、森林再生の先駆的な非営利団体であるReforest The Tropics (RTT) に緑の絨毯を贈ります。弊社は、コスタリカに100ヘクタール (247エーカー) の新しい森林を作り上げて維持し、少なくとも50,000メートルトンのCO2を吸収させるという、25年にわたるRTTのプロジェクトのスポンサーであることを誇りに思います。
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寄稿:Greg Powell博士 (Reforest The TropicsのExecutive Director)
![]() Victor Martinez (RTTvForest Engineer/Co-Director)と共に、Klinkiの木の成長を観察するGreg Powell博士 (RTT、Executive Director) |
気候変動は、私たちの世代が立ち向かうべき最も重要な課題です。エネルギー効率対策、再生可能エネルギー、複雑な炭素回収システムなどに多大な資源と関心が向けられていますが、その課題の大きさに圧倒されそうになることがあります。それでも、気候変動に対処するための最も強力なソリューションの1つは既に確立されています。ただ、十分に活用されていないだけです。
森林再生、特に熱帯地方の森林再生は、大気中の二酸化炭素を除去するための、非常に効果的で規模の調整が可能な方法の1つです。
ノーベル賞を受賞したWoods Hole Research Centerの科学者は、大規模な熱帯地方における大規模な森林再生こそが、地球の温暖化を安全な範囲内に抑える唯一の方法であると力強く述べています。幸いなことに、私たちはすでにこれを実行する方法を知っており、そのコストは、CO2換算メートルトンあたりでみれば、他の方法よりもはるかに低くなります。
しかし、ただ植樹すればいいというわけではありません。適切な長期的ビジョンを持って、適切な木を適切な場所に植える必要があります。それを実行できるのが、Reforest The Tropics (RTT) です。
森林再生への第一歩:植樹だけではない
誰もが森林を愛しています。森林は、その美しさや経済的価値、娯楽性、文化的意義、精神性、科学的価値などといった様々な魅力を持ちますが、ほぼ万人が共通して、その壮大な神秘性に畏敬の念を抱き、地球上の生命にとって不可欠な存在であると認識しています。
しかし、安易な植樹活動は、森林に特有の生物多様性を考慮できていない可能性があります。また、森林のあるべき姿に対する先入観が、科学的に健全な森林再生戦略の妨げになることもあります。植樹は単純な作業と思われがちですが、生物多様性や炭素固定、長期的なサステナビリティといった目標を達成する森林システムの設計は複雑であり、その複雑さはRTTが作り出す高度な生態系と同じく、なかなか言葉では伝えることは困難です。
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左:コスタリカでは一般的な、Gmelinaが単一栽培されている森林 右:RTTモデルを用いて設計された生物多様性に富む森林 |
Reforest the Tropicsの森林再生モデルは、森林科学の複雑さや微妙な違いを考慮した、業界をリードする長期的アプローチを活用しています。これには、樹種の選択や長期的な成長パターンの考慮、生態学的要因と経済的要因のバランスをとることなどが含まれており、少なくとも100年間は炭素吸収の面で生産性を維持できる、耐久力のある森林となるように設計されています。
サステナブルな森林再生の科学
RTTは、1960年代にコスタリカで革新的な森林システムを設計した、森林再生の先駆者であるHerster Barres博士によって設立されました。彼の業績は今日でも、効果的な森林設計のモデルとなっています。国連の若手森林局員だったBarres博士は、1ヘクタール (2.47エーカー) の土地に単に植樹するのではなく「森林」と呼ぶにふさわしい混合種を植えながら、10年間でどれだけのバイオマスを蓄積できるかを調査しました。そして、数十年にわたりアプローチを改良した結果、博士は地球上で唯一無二のモデルを開発するに至りました。
気候変動が人類の脅威として意識され始めた1990年代、Barres博士の研究により、森林が二酸化炭素吸収という重要な役割を果たすことが分かり、彼の提唱するモデルが世界各地の森林再生への取り組みを加速させました。
それ以降、彼のモデルには多くの改良が加えられましたが、Barres博士が提唱した効果的に森林を再生するための4つの重要なアプローチは残っており、それが今日のRTTの活動につながっています:
- 高い二酸化炭素吸収率: RTTモデルでは、業界標準の約2倍という比類ないレベルの炭素を吸収できます。
- 生物多様性: 単一栽培とは異なり、RTTが再生する森林は圧倒的な生物多様性を実現しており、様々な樹種を取り入れることにより回復力を持つ多様な野生生物の生息地となっています。
- 経済的サステナビリティ: RTTが設計した森林は、 その土地の所有者が森林を維持することにより対価を得ることができるため、農地への転換が抑制されています。
- 永続性: RTTの森林は、少なくとも100年間は炭素を吸収し、金銭的な生産性を維持できるように設計されています。
RTTのアプローチは、他のどの森林再生モデルよりも吸収する炭素量、生物多様性の豊かさ、そして森林の永続性という点で優れています。
RTTの成功の大きな理由は、一般的にはKlinkiiとして知られている、Araucaria hunsteiniiと呼ばれる樹種を用いる点にあります。この高木は300年近く生き、驚異的な高さまで成長します。最も大きな標本では、高さ270フィート以上、直径9フィートが記録されています。RTTの森林が優れた永続性を達成できるのは、この木の脅威的な寿命と炭素吸収能力にあります。一般的な森林再生モデルの大半は、短期間 (10-15年) における炭素吸収量と収益性を考慮し、成長の早い樹種を利用していますが、そのような樹種は老齢化するとシロアリの被害を受けるため、20年後に伐採する必要があります。
RTTモデルを用いて設計された生物多様性が豊かな森林は、継続的な植樹とバランスの取れたアプローチにより維持されます。この森林モデルは、農家にとって経済的に実行可能であり、大気から比類ないレベルのCO₂を除去することができます。
問題なく再生することができた森林は、周囲の自然環境に溶け込みます。コスタリカの場合は、1ヘクタールに100種類以上の樹木を植えています。これは、公有地や先住民の土地の保全プロジェクトでよく使われるアプローチですが、荒廃地の多くでは実行できません。森林プロジェクトに用いる樹種は、実験室での実験における変数のようなものです。種によって成長速度や管理の必要性は大きく異なり、あらゆる科学でもそうであるように、変数が増えれば増えるほど、結果はより複雑になります。そのため、世界各地では、誰もが予測可能な結果を求めるあまり、どこにでもあるような単一栽培アプローチがとられてきました。また、天然林のアナログプロジェクトは、効率的な炭素吸収と収益性の実績が乏しいため、政府やその他の大規模な資金提供者からの多額の補助金に支えられています。
RTTは、手頃なカーボンオフセットで森林スポンサーを誘致し、土地所有者が家族の幸福を犠牲にすることなく林業に従事できるような、よりバランスの取れた市場ベースのアプローチを見つけることに努めてきました。その結果、継続的な植樹による生物多様性に富んだ森林は、経済的に実行可能であるだけでなく、大気から前例のないレベルのCO₂を除去することができることが分かりました。
地元の土地所有者のための森林再生
大規模な森林再生プロジェクトにおいて、重要でありながら見落とされがちなのが土地の所有権です。森林再生が最も必要とされる土地の多くは、個人が所有する土地です。つまり、プロジェクトを成功させるには、土地所有者にとって経済的に実行可能である必要があります。これは、この業界が何度も繰り返し学んできた教訓です。
熱帯地方の荒廃した土地は、木材や農地の拡大のために切り開かれることによって作り出されてきました。美しい自然で知られるコスタリカでさえ、1980年代に政策が変更されてエコツーリズムが奨励されるようになるまで、大規模な森林破壊が続いていたのです。
RTTは、土地所有者が森林を利用する方法を検討する際に、森林として維持する方が他の方法よりも魅力的な選択肢となる必要があると考えています。林業は、土地所有者が他の生産的な機会を選ぶ必要がないほどの経済的なインセンティブがなければ、うまくいきせん。驚異的な量の炭素を吸収し、地域の様々な動物に貴重な生息地を提供する一方で、農民とその家族のためにもなる森林システムをRTTは設計しています。
Cell Signaling Technologyの森林再生プロジェクトのための植物苗床の一部
RTTが森林を設計する際は、樹冠をできる限り早く形成するため、樹木同士を比較的近くに植えます。これにより、競合する植生の繁茂を抑えるための作業にかかる費用を抑えることができます。しかし、若い樹木が樹冠を形成するにつれ、互いに競合し始めます。この競合は、森林全体の成長を停滞させてしまうため、ある程度取り除かなくてはいけません。綿密に管理された間伐 (5-6年ごとに約15%の間伐) により、RTTの森林では、長期的な炭素吸収の目標を抑えることなく、森林の健全性を維持しながら継続的に収入を得ることができます。
RTTが支援する土地では、1ヘクタールあたり平均して年間約450ドルの収入を得ることができます。この収入は、同じ土地で牛を飼育するのに匹敵します。
空白期間を埋める代替案:短期的なソリューションとしてのアグロフォレストリー
森林再生は長期的な投資です。しかし、多くの農家は、木が成熟して経済的な利益を得ることができるまで何十年も待ってはくれません。RTTは、土地所有者のニーズに対して最大限配慮していますが、この空白期間は依然として最大の難問です。 RTTは、土地所有者に早期の収入を提供するために、成長の早い短期樹種を多く混ぜて設計していますが、商業的な大きさになるまで何年も待たなければなりません。この問題を解決するために、RTTはアグロフォレストリーシステムを積極的に研究しています。これは、森林が成長する最初の数年間、農家が木と木の間に短期作物を栽培できるようにするものです。
しかし、適切な作物を見つけることは依然として困難です。たとえば、トウモロコシはRTTの森林でよく育ちますが、植えすぎると市場に氾濫し、地元農家の収入に悪影響をおよぼす可能性があります。RTTは、経済的サステナビリティを視野に入れながら、農場と森林の両方をサポートするシステムの実験を続けています。
CSTの取り組み:25年にわたる森林再生プロジェクト
2024年、CSTはRTTとパートナーシップを締結し、コスタリカの土地100ヘクタール (247エーカー) に植樹して新しい森林を作り、維持しています。この森林は、3つの農場にまたがっており、二酸化炭素吸収率や生物多様性、経済的サステナビリティをそれぞれ最大限に高めるように設計されています。
CSTが支援する森林には、約40種類の木が植えられており、二酸化炭素の吸収や収入の創出、生物多様性といった各目的に合わせて構成されています。klinkiiなどの樹種を高密度に植えて炭素吸収を優先している地域もあれば、提携農家の生計を確保するために市場に卸しやすい樹種を12種ほど混植している地域もあります。
一部地域は、生物多様性の促進にのみ特化しており、ジャガーやバク、絶滅の危機に瀕しているオオミドリコンゴウインコなど、数え切れないほどの種の生息地の回復に役立っています。
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左:CSTが支援するコスタリカの100ヘクタールにわたる森林 右:CSTの森林に最初に植樹されたKlinki
CSTの森林は、25年以内に最低でも50,000メートルトンのCO2を吸収します。26年目から50年目には、さらに50,000メートルトンのCO2を吸収し、木材伐採による生産性が最も高くなり、提携する農家はより高い収入を得ることができます。また、このプロジェクトにより6人分の正規雇用が創出され、周辺地域にも経済的利益をもたらすと予想されます。
たった数年のうちに、かつては荒れた牛の放牧地であった場所が、気候変動への回復力と地域社会の両方を支える、活気あふれる森林に生まれ変わることになります。地域社会は、空気や水質の改善を享受し、新たなレクリエーションの場を手に入れ、緑豊かな生態系の光景や音を大切にしてくれると信じています。
その他のリソース
- RTTについての詳細や、林冠プロジェクトを支援する方法についてはこちらをご覧ください
- CSTの環境と社会的責任についての詳細は、2024年のインパクトレポートをご覧ください
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