あまり認識されていませんが、リサイクルは古くからある概念です。人間は何世紀にもわたって創造的に素材を再利用してきました。廃棄物の問題が大きくなればなるほど、私たちはより創造的で真摯な解決策を求められます。
家電製品をはじめとした、20世紀に生活の向上を目指して開発された技術の多くは、本来買い替えではなく、修理を前提に設計されていました。しかし、これは年月を経て様々な理由で変化してきました。企業にとっては、部品を交換するより製品を交換した方が利益が出るのは明らかです。修理技術者の人件費が高騰したことも、修理が困難になった一因です。新しい電子レンジを購入した方が安価であれば、修理をする必然性は薄れます。しかし、世界的な廃棄物の増加には何より、プラスチック製造の時代という1つの要因が大きく影響しています。
20世紀におけるリサイクルの大きなパラダイムシフトをもたらしたのは、このプラスチックの時代です。米国では、1970年の第1回アースデーの頃からこの変化が始まりました。「削減、再利用、リサイクル (Reduce、Reuse、Recycle)」の概念が導入されました。米国のプラスチック業界は、環境への責任を消費者に負わせるために、多くのロビー活動に費用を費やしました。有名な「泣いているネイティブアメリカン」のような広告は、企業が何をすべきかではなく、個人に何ができるかに注意を向けるため、プラスチック企業が費用を費やしたものです。さらにプラスチック企業は販売促進のため、リサイクルできない製品にリサイクル可能の指定を受けるために資金を投入しました。例えば、樹脂識別コードが3-7と表示された「リサイクル可能」な薄いプラスチックのほとんどは、実際には限定的にリサイクルが可能であるか、場合によってはほぼリサイクルできません1。
それでは、世界の廃棄物の取り扱いを向上させるにはどうしたら良いでしょうか?企業の製造過程に大きな原因があるのはもちろんですが、私たち個人にできることは無いでしょうか?ここでは、世界各地で進められている取り組みをご紹介します。
廃棄物は世界的な問題ではありますが、この最大の排出国の1つである米国のリサイクル率は25.8%にとどまっています2。米国がリサイクルの上で直面している問題は、より多くの人々にリサイクルしてもらうことではなく、人々に適切なリサイクルをしてもらうことです。米国人は、自分がリサイクルできそうだと考えるものは何でもリサイクルする傾向があり、ゴミ箱に捨てるより誤ったリサイクルを選択することがよくあります。しかし、この善意による考え方は廃棄物を削減するより増加させてしまいます。例えば、米国では多くの人がプラスチック製の食料品袋をリサイクルしようとしますが、実際には、これらは地域の食料品店によく設けられている専用の回収エリアでしかリサイクルできません。このような袋はリサイクル機器に絡みつくことが多く、作業効率の妨げとなるだけでなく、手作業でこれらを取り除く危険に作業員をさらすことになります。
幸運なことに、Waste Managementは廃棄物の仕分けに役立つ優れたリソースを提供しています。もっとも重要なルールは守ることも簡単な、次のようなものです。
- 清潔な瓶、缶、紙、段ボールのみをリサイクルしてください
- 食物や液体の混入を避けてください
- プラスチック製の袋やこのような袋に入れたリサイクル品を出さないでください
- 「迷ったら廃棄してください。」
この3つのルールを守ることで、リサイクル品が一括して使えなくなるような汚染を大幅に減らすことができます。米国ではリサイクル率の低迷や不適切なリサイクルの問題に取り組んでいますが、世界的なリサイクルへの取り組みに目を向けると、明るい展望が見えてきます。
オランダ、ベルギー、ドイツ、オーストリアなど、EUのいくつかの国は50%を越えるリサイクル率を誇っています。英国もこれに大きくは劣らず、39%に達しています3。これらの国でリサイクルが成功しているのは、最終的には消費者が責任をもってリサイクル可能な廃棄物を紙、プラスチック、金属、ガラスに分別しているからであると考えられます。
アジアにおけるリサイクルの成功状況は国によって異なりますが、その傾向は正しい方向に向かっています。上海は最近、中国で初めて廃棄物の取り扱いに関する本格的な規制を設けた都市となりました。上海の住民や企業にとってはカルチャーショックを引き起こすこともありましたが、公的にあるいはボランティアによって、廃棄物を適切に取り扱う方法を市民に伝える努力がなされました。上海のリサイクリングのシステムは、従来のプラスチック、紙、ガラスなどのリサイクルのみならず、食品廃棄物の堆肥化や危険物の取り扱いにも及んでいます。
初めての人にとってはわかりづらい部分もありますが、新システムの下で消費者が適切に廃棄物を分別するためのガイドが多数用意されています。この取り組みは間もなく中国の46の都市で実践され、2025年までに中国全土の地級市で適用される見込みです。また、中国ではソーシャルメディアを利用した明確な指導も進められています。普及率の高いソーシャルメディア「WeChat」では、ユーザーが「ごみ」と入力するだけで様々な廃棄物の適切な廃棄方法を調べることができます。
日本はリサイクルが最も成功している国の1つです。日本のリサイクルシステムは非常に具体的かつ組織的で、成功は紛れもない事実です。例えば、日本のプラスチックのリサイクル率は84%です4。曜日ごとに異なるリサイクル品の回収を行い、回収容器は色分けされて直感的に分別し易くなっています。ここでも、分別システムの詳細なガイドが多数用意されています。しかし、このシステムはユーザーあってのもので、日本の市民は分別するだけでなく、リサイクル品を持ち込む前の準備にも責任を負います。例えば、予め瓶の蓋やラベルを外しておく、廃棄前に缶を潰しておく、混合包装の紙とプラスチックを分けておくなどです。
このようなリサイクルの準備のステップの多くは、日本だけでなく地球全体のリサイクル活動においても重要です。廃棄物の量が増加する中で、リサイクルは地球社会の廃棄物の取り扱いにおける重要なツールとなっていきます。最終的に個人が責任をもってリサイクルの習慣を身につけることは、持続可能な地球社会を支える重要な要素です。また、ホテルの石鹸をリサイクルして発展途上国に届け、衛生状態を改善する「The Global Soap Project」のような、環境に配慮した団体も増えています。廃棄物となってしまうものを再利用する取り組みを行う企業を支援することは、地球のグリーンアップのための優れた方法です。最後に、地域社会の廃棄物に関する法規制の情報収集を続けることも重要です。企業は廃棄物の最大の要因であり、だからこそ改善の機会に最も恵まれていると言えます。可能であれば、廃棄物の素になる過剰な包装をしない企業にお金を使うことを検討してください。
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参考文献
- LastWeekTonight. (2021, March). Plastics: Last week tonight with John Oliver [Video]. HBO.
- EPA, 2017. National Overview: Facts and Figures on Materials, Wastes and Recycling | US EPA https://www.epa.gov/facts-and-figures-about-materials-waste-and-recycling/national-overview-facts-and-figures-materials
- European Environment Agency, 2013. Recycling Rates in Europe. https://www.eea.europa.eu/about-us/competitions/waste-smart-competition/recycling-rates-in-europe/image_view_fullscreen
- Management, P.W., 2003. Plastic Waste Management Institute. Waste Manage. 139–143 http://www.pwmi.or.jp/ei/index.htm