研究が手詰まりになった状態を想像してみてください。新たなプロジェクトに着手したところなのかも知れませんし、既存のプロジェクトが思わぬ方向に向かってしまったのかもしれません。さらに調査を進めなくてはならないパスウェイがあるのは分かっているのに、どこから手をつければ良いのか分からない。そのパスウェイに関与するタンパク質全てに対する抗体を注文するほど資金は潤沢ではないし、仮にできたとしても、それら全てを適切に評価する時間は無い。このような場合、探索に割く労力を絞り込むにはどうしたら良いでしょうか。ぜひ、Antibody Samplerキットをお試しください。
Samplerキットには、特定のパスウェイの主要なタンパク質に対するお試しサイズの抗体が含まれており、時間と労力を大幅に節約することができます。研究分野の専門家が精選した、最も期待度の高い標的に集中することで、実際には必要ない抗体を大量に購入する無駄を省くことができます。
例えば、自然免疫系の探索を想定してみましょう。自然免疫系では、保存された病原体関連分子パターン (PAMP: Pathogen-associated molecular pattern) の検出に、生殖細胞系列にコードされたパターン認識受容体 (PRR: Pattern recognition receptor) が利用されます。PAMPが検出されることで、様々な自然免疫シグナル伝達経路が活性化され、病原体に対する免疫応答が開始されます。
Innate Immunity Activation Antibody Sampler Kit は、細胞が特定の病原体やPAMPに出会った後、どの自然免疫経路が活性化されるかを調べるように設計されています。お客様にとって重要な調査対象になるのはToll様受容体経路かも知れませんし、STING経路やインフラマソームのシグナル伝達経路が重要かも知れません。これを明らかにするために、このAntibody Samplerキットをご利用いただけます。このキットには、主要な自然免疫シグナル伝達経路の活性化の分岐点となる標的に対する、リン酸化抗体や総タンパク質抗体が含まれています。また、インフラマソーム経路の活性化の指標となる、切断型IL1bに対する抗体も含まれています。
このほか、上皮間葉転換 (EMT: Epithelial-mesenchymal transition) のプロセスも良い例となります。EMTは発生段階に必須のプロセスで、上皮細胞が間葉系の線維芽細胞様の性質を獲得し、細胞間接着が低下して運動性が向上します。ただし、これはあくまでEMTの1つのタイプです。
創傷治癒にもこのプロセスが利用されます。炎症を介してEMTプログラムが開始され、上皮細胞が間葉細胞に転換します。この間葉細胞が実際に傷を「埋める」ように移動します。創傷治癒におけるEMTが、慢性炎症のために遮断されない場合には繊維症の原因となり、患部組織が瘢痕化して厚くなることで臓器の正常な機能が阻害されることがあります。
EMTプロセスの3つ目のタイプはがんに関与しており、これが恐らく最もよく知られています。現在のところ、何故がんでEMTが誘導されるかは明らかになっていません。正常な発生におけるEMTは上皮細胞から間葉細胞への転換が目標で、明確な終着点が存在しますが、腫瘍細胞の場合はこれとは異なり、上皮と間葉のハイブリッド状態 (表現型) で存在する傾向があります。
Epithelial-Mesenchymal Transition (EMT) Antibody Sampler Kit は、タンパク質Xががんの進行においてEMTの影響を受けるのか、また、タンパク質XはがんにおいてEMTに寄与や影響があるのか、といったことを調べるように設計されています。 このキットには、上皮と間葉の両方のマーカーと、両方の転写因子が混在しています。このため、上皮マーカー遺伝子と間葉マーカー遺伝子をオンにする役割のある転写因子を調べることができます。また、このキットは繊維症の有無を判断するのにも役立ちます。
あるパスウェイから抗体の標的の選定を試みる場合や、調査を進めるべき下流パスウェイを決定する場合に手詰まりになったと感じたら、選択にストレスを感じて貴重な時間を無駄にする必要はありません。Sampler Kitセレクションをご覧ください。大きな課題の解決や労力の見直しに役立つ、何百もの精選された抗体セットがあります。Sampler Kitの全製品をご覧いただければ、役立つものがきっと見つかります。