CSTブログ: Lab Expectations

Cell Signaling Technology (CST) の公式ブログでは、実験台に向かう時間に期待すること、ヒント、コツ、情報などを紹介しています。

抗CARリンカーモノクローナル抗体:市場初のCAR-T療法用CAR検出試薬

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CST®抗CARリンカー抗体は、2023年のCiteAb Innovation Awardを受賞しました。その理由をご覧ください!

「(この) 革新的な新しい製品には、がん患者に大きな影響を与え、新しい治療法の開発や最適化に役立つ可能性があります。」 - CiteAb社

キメラ抗原受容体 (CAR) T細胞療法とは、生体内の自身の免疫系を活用して抗腫瘍効果を誘導する、革新的かつ急速に発展している養子細胞免疫療法であり、大きな期待が寄せられています。新しいCAR-T療法の開発において、細胞表面に発現するCARの特性解析用の検出試薬は、新しい治療法の検証や最適化に不可欠です。 

しかしながら、新規腫瘍抗原に対する新たなCARをデザインした場合、CARの細胞表面の発現を確認するための独自の検出試薬を開発し、その都度検証する必要があります。このプロセスは、コストと時間がかかるだけでなく、非特異的な検出による問題を引き起こし、開発のさらなる遅延につながります。

では、抗原の特異性に関係なく、CARの同定および発現を確認できる汎用性の高い検出試薬があるとしたらどうでしょうか?Cell Signaling Technology (CST) は、幅広いCARを認識できるようにデザインされた検出試薬のパネルを構築しました。それが抗CARリンカー抗体です。 

市場初となるこれらの試薬は、複数のパラメーターを検出するフローサイトメトリーパネルに組み込むことが可能であり、非臨床モデルにおけるCARの発現や輸送、持続性をモニタリングすることができます。

標識済み抗体などを含む、弊社のCARリンカー製品をご覧ください。

抗CARリンカーモノクローナル抗体

T細胞表面に発現するCARの検出に用いられる、現在のアプローチ

この新しいCAR検出技術の仕組みを理解するために、まずはCAR-T細胞の構造と機能をご紹介します。 

CARは、T細胞応答を調節して自己由来の腫瘍抗原を攻撃するように再設計された、改変型受容体です。その名の通り、この受容体は4つの主な構成因子からなるキメラタンパク質であり、細胞外標的抗原結合ドメイン (単鎖可変領域フラグメントまたはscFvなど) 、スペーサーまたはヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン (少なくとも1つは含む) に分けられます (図1)。これらの要素をうまく組み合わせることにより、CAR-T細胞は目的の抗原を認識し、腫瘍細胞を殺すことができるようになります1

リンカードメインを示したCARの構造図1:CARの構造の詳細:抗原を標的化するドメインやリンカー配列など 

科学者は、創薬や非臨床研究においてCAR-T細胞を設計する際に、CARの細胞表面の発現をモニタリングしてCAR-T細胞が機能していることを確認する必要があります。

現在は、scFvの重鎖可変ドメインや軽鎖可変ドメイン、またはヒンジドメイン内の特定の配列を認識する試薬を用いて、CARの細胞外ドメインを検出する方法が主流です。

用いるCAR-T検出試薬によっては、使用可能なソリューションでの特異性に欠ける、フローサイトメトリーパネルに組み込みにくい、単一のCARの検出にしか使えない、などの問題が生じます。 

リンカーを標的とする、汎用性の高い検証済みCAR検出試薬:どのように機能するのか?

CST抗CARリンカー抗体は、重鎖可変ドメインや軽鎖可変ドメイン、ヒンジドメイン内の配列を標的とする代わりに、scFvの重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの間にあるリンカー配列を標的とします。scFvをベースに設計されるCARのほとんどが、グリシン-セリンリンカー (G4Sリンカー) 配列の繰り返し、またはWhitlowリンカー配列2のいずれかを含むため、抗G4Sモノクローナル抗体および抗Whitlowモノクローナル抗体を用いれば、scFvをベースとしたあらゆるCARの細胞表面の発現をフローサイトメトリーでモニタリングすることができます (図2)。

G4SリンカーまたはWhitlowリンカーに結合するCSTの抗CARリンカー抗体

図2:CST抗CARリンカー抗体が認識する、G4Sリンカー配列またはWhitlowリンカー配列 

B細胞悪性腫瘍で高発現がみられる細胞表面分子のCD19抗原とCD20抗原を標的とするCARなど、あらゆるCARにこのリンカー配列が含まれています。

未標識抗体 (全製品リストは下の表をご覧ください):CiteAbのInnovationアワードを受賞した抗CARリンカー抗体

これらの抗体は、CSTのHallmarks of Antibody Validation (抗体検証における戦略) の原則に基づいて厳格に検証されており、様々な腫瘍抗原を標的とするCARを発現させた初代ヒトT細胞など、関連するモデルシステムを用いて試験されています。弊社は、3種の異なる標識を用いた標識抗体を提供しています。また、CSTのカスタム標識サービスを利用して、カスタム標識することも可能です。 全製品リストは下の表をご覧ください。

汎用性の高い、検証済みCAR検出試薬を用いることにより、不必要で時間のかかるステップを省き、探索研究または医薬品開発のプロセスを加速することができます。

CAR-T療法の迅速な発見と開発

生体内の自分の免疫系を抗がん治療に使用することは、がん研究者たちの長年の夢でしたが、CAR-T療法によりその夢が現実のものとなりました。CAR-T療法は「Living Drug (生きた薬)」と呼ばれ、1回の投与で数十年にわたる治療効果が得られます。    

この革新的な治療法を用いた血液悪性腫瘍の治療が成功したことにより、主に固形がんや線維性肝疾患、糖尿病などの老化関連疾患における新たな治療法の開発への道が開かれました3-5。この非常に有望な治療法は、いまだ免疫療法の最前線にありますが、現在開発中の新しい治療法が、これまで選択肢が限られていたり、治療が困難であったがん患者にとって革新的なものになることは間違いありません。 

ご利用いただける抗CARリンカー抗体の標識と組成については、下の表をご覧ください。

  G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb Whitlow/218 Linker Rabbit mAb
PE標識 G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (PE Conjugate) #38907 Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (PE Conjugate) #62405
BSAとアジ化物フリー G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (BSA and Azide Free) #63670 Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (BSA and Azide Free) #66159
Biotinylated (ビオチン化物) G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (Biotinylated) #17621 Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (Biotinylated) #32523
Alexa Fluor® 488 G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #50515 Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #55809
Alexa Fluor® 532 G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 532 Conjugate) #90841 Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 532 Conjugate) #25186
Alexa Fluor® 555 G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 555 Conjugate) #18862 Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 555 Conjugate) #85651
Alexa Fluor® 594 G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 594 Conjugate) #39614 Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 594 Conjugate) #61465
Alexa Fluor® 647  G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #69782 Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #69310
Alexa Fluor® 700  G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 700 Conjugate) #40107     Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb (Alexa Fluor® 700 Conjugate) #72160

 

詳細はこちら: 

参考文献:

  1. Labanieh L, Majzner RG, Mackall CL. Programming CAR-T cells to kill cancer. Nat Biomed Eng. 2018;2(6):377-391. doi:10.1038/s41551-018-0235-9
  2. Whitlow M, Bell BA, Feng SL, et al. An improved linker for single-chain Fv with reduced aggregation and enhanced proteolytic stability. Protein Eng. 1993;6(8):989-995. doi:10.1093/protein/6.8.989
  3. Mohanty R, Chowdhury CR, Arega S, Sen P, Ganguly P, Ganguly N. CAR T cell therapy: A new era for cancer treatment (Review). Oncol Rep. 2019;42(6):2183-2195. doi:10.3892/or.2019.7335
  4. Li JH, Chen YY. A Fresh Approach to Targeting Aging Cells: CAR-T Cells Enhance Senolytic Specificity. Cell. 2020;27(2):192-194. doi:10.1016/j.stem.2020.07.010
  5. Tenspolde, M., Zimmermann, K., Weber, L. C., Hapke, M., Lieber, M., Dywicki, J., Frenzel, A., Hust, M., Galla, M., Buitrago-Molina, L. E., Manns, M. P., Jaeckel, E., & Hardtke-Wolenski, M. (2019). Regulatory T cells engineered with a novel insulin-specific chimeric antigen receptor as a candidate immunotherapy for type 1 diabetes. Journal of Autoimmun. 2019;103:102289. doi:10.1016/j.jaut.2019.05.017

CSTおよびCell Signaling TechnologyはCell Signaling Technology, Inc.の登録商標です。Alexa FluorはLife Technologies Corporationの登録商標です。All other trademarks are the property of their respective owners. Visit cellsignal.com/trademarks for more information. 22-BPA-10837

Amrik Singh, PhD
Amrik Singh, PhD
Amrik SinghはCell Signaling Technologyの免疫学分野のリサーチフェローです。彼は、ボストン大学医療センターとベス・イスラエル・ディーコネス医療センターで研修を受けた生化学者です。CSTでは、養子細胞療法の製品ラインナップを開発および管理し、特にCAR-T細胞の特性解析用の抗体やアッセイの開発に関心を寄せています。

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