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COVID-19と線維症:急性呼吸器症状の後にも持続する長期的損傷

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執筆時点で、COVID-19の原因となるSARS-CoV-2ウイルスは、世界中で2800万人以上に感染しており、約100万人の死者を出しています (情報元:ジョンズ・ホプキンス・コロナウイルスリソースセンター)。SARS-CoV-2感染の特筆すべき側面の1つに、患者で報告されている症状の多様性があります [Kwon, 2020]。

20-EMG-97563 Covidにおける線維症のメカニズム

SARS-CoV-2は、2003年に発生したSARSと2010年に発生したMERSコロナウイルスと同様に、「急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)」を引き起こす呼吸器ウイルスとして最初に同定され、現在もそのように考えられています。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスは地球全体にとめどなく拡散しており、感染の影響が急性呼吸器感染症状に止まらないことが明らかになっています[32293910]。重篤となり得るCOVID-19による症状には、次のようなものがあります。高血圧、血栓、脳卒中と塞栓などの心血管系合併症 [32200663]、心筋炎など、主に心筋の炎症に起因する心臓障害 [32139904]、味覚や嗅覚の低下から、眩暈、精神錯乱、昏睡などの重度の神経症状に至るまで、様々な効果を誘発する神経障害 [32494853に総説されています]。

           ヒト集団において出現したのは比較的最近であり、急性感染時の影響も多様であるため、現在も長期的なCOVID-19の健康影響を予測するのは困難です。最も重大な影響は、高度の血管新生を伴う組織 (肺、心臓、腎臓、肝臓など) に現れると考えられます。また、ウイルスが感染組織に顕著な炎症反応を引き起こすことが明らかにされています [32217834]。重度の炎症中に引き起こされる創傷治癒反応が、線維症とよばれる瘢痕化のプロセスを介し、組織や器官の永続的な損傷の原因となることが分かっています。SARSやMERSの場合と同様に、SARS-CoV-2に感染した患者においても、感染組織の線維症的な損傷が、ウイルス感染の期間を超えて持続する合併症を引き起こす可能性があることが分かってきています [32422178]。

           線維症は基本的に病理学的な創傷治癒反応であり、細胞外環境の構造の顕著な再構成をもたらします。繊維症の主な結果として、組織の弾力性の低下が起こり、正常な機能に弾力性が必要な臓器 (肺や心臓など) に機能障害が起こります。線維症発症の主要なバイオマーカーには、筋線維芽細胞の活性化 (α-平滑筋アクチン)、コラーゲン (COL1A1COL3A1COL11A1など) やフィブロネクチン (FN-1など) などの細胞外マトリクス (ECM) タンパク質の蓄積、様々なマトリクス関連分子 (LOXMMPhydroxyproline) があります。線維症は、TNF-α、インターフェロン、インターロイキンなどの炎症を促進するシグナル伝達経路の活性化にも関与しており、創傷治癒反応を促進します。

           CSTは、線維症疾患および炎症の研究にご利用いただける、抗体試薬の強固な製品ラインナップを構築しています。これらの試薬は繊維症疾患の病因を解明し、その影響を最小化する治療法の開発をサポートします。SARS-CoV-2ウイルスが世界中に蔓延し、多くの命を悲劇的に奪っていく一方、生存者にも長期的な合併症のリスクを負わせています。このような中、繊維症の病因解明と治療法の開発は、今まで以上に緊急性を増しています。

参考文献

Kwon D. From Headaches to ‘COVID Toes’, Coronvirus Symptoms Are a Bizarre Mix. Scientific American, 18 May 2020.

Liu et al., 2020. The Science Underlying COVID-19: Implications for the Cardiovascular System. Circulation 142(1): 68-78. PMID 32293910

Clerkin et al. 2020. COVID-19 and Cardiovascular Disease. Circulation 141(20): 1648-1655. PMID 32200663

Zheng et al. 2020. COVID-19 and the cardiovascular system. Nat. Rev. Cardiol. 17(5): 259-260. PMID 32139904

Pryce-Roberts et al. Neurological complications of COVID-19 : a preliminary review. J. Neurol. 267(6): 1870-1873. PMID 32494853

Pedersen and Ho 2020. SARS-CoV-2:a storm is raging. J. Clin. Invest. 130(5): 2202-2205. PMID 32217834

George et al. 2020. Pulmonary fibrosis and COVID-19: the potential role of antifibrotic therapy. Lancet Respir. Med. 8(8): 807-815 PMID 32422178

Antony Wood, PhD
Antony Wood, PhD
Antony (Tony) Wood博士は、CST製品デザイン・戦略部シニアダイレクターです。カナダから移住してきた彼の趣味は、サイクリング、冒険旅行などで、唐辛子の入った食べ物が大好物です。

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