本ブログ記事の執筆時点で、COVID-19の原因となるSARS-CoV-2ウイルスは、世界中で2800万人以上に感染しており、約100万人の死者を出しています (情報元:ジョンズ・ホプキンス・コロナウイルスリソースセンター)。SARS-CoV-2感染の特筆すべき側面の1つに、患者で報告されている症状の多様性があります。 1
CSTのウェブサイトで詳細な線維症メカニズムのインタラクティブパスウェイをご覧ください。
SARS-CoV-2は、2003年に発生したSARSと2010年に発生したMERSコロナウイルスと同様に、「急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)」を引き起こす呼吸器ウイルスとして最初に同定され、現在もそのように考えられています。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスは地球全体にとめどなく拡散しており、感染の影響が急性呼吸器感染症状に止まらないことが明らかになっています2。COVID-19に起因する、重篤となりうる症状には以下が含まれます:高血圧、血栓、脳卒中と塞栓などの心血管系合併症 3、心筋炎など、主に心筋の炎症に起因する心臓障害4、および味覚や嗅覚の低下から、眩暈、精神錯乱、昏睡などのより重篤な神経学的事象に至るまでの様々な影響を誘発する神経障害。5
ヒト集団において出現したのは比較的最近であり、急性感染時の影響も多様であるため、現在も長期的なCOVID-19の健康影響を予測するのは困難です。最も重篤な影響は高度の血管分布を伴う組織 (例えば、肺、心臓、腎臓、肝臓) に出現し、ウイルスが感染した組織に顕著な炎症応答を引き起こすことは明白です。6 重篤な炎症の際に惹起される創傷治癒応答が、線維症と呼ばれる瘢痕化のプロセスを通じて、永続的な組織および内臓障害につながりうることを、科学者は認識しています。SARSやMERSの場合と同様に、SARS-CoV-2に感染した患者においても、感染組織の線維症的な損傷が、ウイルス感染の期間を超えて持続する合併症を引き起こす可能性があることが分かってきています。6
線維症は基本的に病理学的な創傷治癒反応であり、細胞外環境の構造の顕著な再構成をもたらします。繊維症の主な結果として、組織の弾力性の低下が起こり、正常な機能に弾力性が必要な臓器 (肺や心臓など) に機能障害が起こります。線維症発症の主要なバイオマーカーには、筋線維芽細胞の活性化 (α-平滑筋アクチン)、コラーゲン (COL1A1、COL3A1、COL11A1など) やフィブロネクチン (FN-1など) などの細胞外マトリクス (ECM) タンパク質の蓄積、様々なマトリクス関連分子 (LOX、MMP、hydroxyproline) があります。線維症は、TNF-α、インターフェロン、インターロイキンなどの炎症を促進するシグナル伝達経路の活性化にも関与しており、創傷治癒反応を促進します。
線維症を研究するためのCSTの抗体製品
CSTには、線維症疾患および炎症を研究するための抗体試薬の強力な製品群があります。TGF-β Fibrosis Pathway Antibody Sampler Kit #77397は、最適なスタートポイントです。これらの試薬は研究者が線維症疾患の病因を理解し、その影響を最小化するためのより良い治療へとつなげることを助けるためにデザインされています。
参考文献:
- Kwon D. From Headaches to ‘COVID Toes’, Coronvirus Symptoms Are a Bizarre Mix. Scientific American, 18 May 2020.
- Liu et al., 2020. The Science Underlying COVID-19: Implications for the Cardiovascular System. Circulation 142(1): 68-78. PMID 32293910
- Clerkin et al. 2020. COVID-19 and Cardiovascular Disease. Circulation 141(20): 1648-1655. PMID 32200663
- Zheng et al. 2020. COVID-19 and the cardiovascular system. Nat. Rev. Cardiol. 17(5): 259-260. PMID 32139904
- Pryce-Roberts et al. Neurological complications of COVID-19 : a preliminary review. J. Neurol. 267(6): 1870-1873. PMID 32494853
- Pedersen and Ho 2020. SARS-CoV-2: a storm is raging. J. Clin. Invest. 130(5): 2202-2205. PMID 32217834
- George et al. 2020. Pulmonary fibrosis and COVID-19: the potential role of antifibrotic therapy. Lancet Respir. Med. 8(8): 807-815 PMID 32422178