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Cell Signaling Technology (CST) の公式ブログでは、実験中に起こると予測される事象や実験のヒント、コツ、情報などを紹介します。

モノクローナル抗体の歴史パートI

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 抗体の境界

モノクローナル抗体は、非常に普遍的な研究ツールです。実際、冷凍庫にモノクローナル抗体が入っていない研究室を見つけることは難しいでしょう。組織内のタンパク質の局在 (IHCなど)、多くのタンパク質が含まれた複合体から特定のタンパク質単離 (WB、IPなど)、または組織環境からの特定の細胞集団の分離 (FACSなど) を含め、多数の用途があります。このような手法は、多くの研究において大変基礎的な部分を成しており、必要不可欠です。しかし、驚くべきことにモノクローナル抗体の使用が始まってからそれほど時は経過していません。

...1975年のイギリス、ケンブリッジでの出来事を振り返ってみましょう...

抗体の歴史

この時すでに研究者たちは、動物が異物で有害な可能性のあるタンパク質(バクテリアやウイルスなど)に直面すると、特殊な免疫細胞(B細胞)が動き出し、複雑な抗体を送り出して、その脅威と結合して排除するということに関する研究を行っていました。生理学的な視点からすると、動物はこのポリクローナル抗体により、侵入してきた種を払いのける最大限の努力をしていると言えます。しかし、実験的な視点からすると、ポリクローナル抗体の集団がどのように招集され活動するのかという機序を詳細に解明することは困難です。1974年、Cesar Milsteinの研究室では、体細胞の遺伝子変異が抗体の高頻度可変性領域の原因であると仮説を立てており、骨髄腫 (脾臓腫瘍) 細胞株から変異体をクローニングし、シーケンシングすることにより、その仮説を検証していました。

高頻度可変性領域に関連する変異を見つけることはできませんでしたが、これらの細胞内の体細胞変異率が全体的に高いことから、彼らは何かの糸口に近づいていることが示唆されていました。( 糸口について - 詳細はこちら)。Georges Kohlerがラボに入所したのはこのときでした。MilsteinとKohlerは共に、正常なB細胞の抗体分泌の性質と骨髄腫細胞の変異率と寿命を組み合わせることができれば、継続的に分裂し続ける細胞株ができ、単一の抗体クローン ( モノクローナル抗体) を生産することができると考えました。

このような研究ツールを使えば、、抗体の個々の体細胞変異がどのように発生するか調べることができます。このような完全に異なる細胞を、それらの性質を保持しつつ融合させることは難しく思われたものの、なんとか成功しました。重要なことに、彼らはすぐに、新しい「ハイブリドーマ」系統が、自分たちの研究室で行われている課題よりも幅広い問題に答えるために利用できる研究ツールであることに気付きました。  その他の研究者たちも同様に気づき、早速ハイブリドーマの時流に乗りました。その続きは皆さんもご存じのとおりです。

著者注:この話には他にも興味深い点がたくさんあるります。全容を知りたい場合には、Cesar Milsteinのノーベル賞受賞講演をぜひご確認ください。また、今回の話題に関する新しい本も出ています。 

 

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