従来、フローサイトメトリーは、細胞外または細胞表面マーカーの発現に基づいて、不均一な細胞集団内における特定の細胞タイプを同定するために使用されており、一般的には免疫表現型検査に用いられるアプリケーションです。しかし、この手法は、細胞内標的の検出にも適用でき、複雑なシグナル伝達経路の研究に活用できます。
したがって、細胞内フローサイトメトリーは、細胞表面マーカーの検出と組み合わせて用いると強力なプラットフォームとなり、表現型の異なる細胞集団内におけるシングルセルレベルでのシグナル伝達ネットワークの特性解析を可能にします。
フローサイトメトリーを用いた細胞内シグナル伝達解析の利点
- マルチパラメータ (複数の細胞内および細胞外標的、生存率、DNA量、サイトカインのプロファイリング解析など)
- 感度 (シングルセル解析)
- 定量的アウトプット
- ハイスループット(1秒あたり最大1000細胞を処理)
- 高速なデータ読み取り(データ作成は数分から数時間以内)
下のビデオでは、細胞内フローサイトメトリーの機能を紹介します。
ビデオの書き起こし
細胞プロセスは、複雑で動的な細胞内シグナル伝達ネットワークによって制御されています。細胞表面の受容体は、細胞質タンパク質を修飾することにより細胞内に情報を伝達します。これらの修飾には、リン酸化やメチル化、アセチル化などがあり、増殖や発達、アポトーシスなど幅広い細胞機能を制御しています。シグナル伝達ネットワークの破綻は、しばしば疾患につながります。
正常状態および疾患状態におけるシグナル伝達プロセスを理解するには、シグナル伝達タンパク質の同定と定量が不可欠です。フローサイトメトリーは、このような目的に適しています。フローサイトメトリーは、レーザーを利用した実験技術であり、表面マーカーの抗体を用いた細胞の表現型解析に広く利用されています。また、シグナル伝達タンパク質やその翻訳後修飾、エピジェネティック修飾、下流の転写因子を検出する抗体を用いて、複数の細胞内標的を同時に解析することもできます。
細胞内フローサイトメトリーの最初のステップは、タンパク質を固定して一過性のシグナル伝達イベントを保存するための、ホルムアルデヒドを用いた細胞の固定です。その後、細胞をメタノールや界面活性剤で透過化処理し、抗体が細胞内空間にアクセスできるようにします。最適な固定条件と透過化条件は、標的エピトープの位置と生化学的性質に依存します。特に、細胞表面タンパク質や細胞内タンパク質を同時に染色する場合には、抗原検出を確実に成功させるために、これらの条件を注意深く考慮する必要があります。フローサイトメトリーは、複数のシグナル伝達タンパク質と細胞表面の抗原を蛍光標識抗体で同定できるため、表現型が異なる集団内のシングルセルレベルでのシグナル伝達プロファイリングの特性解析が可能です。
これにより、細胞内標的間の関係を特性解析し、異種サンプル内の稀な細胞集団におけるシグナル伝達イベントの検出が可能になります。これらのタンパク質を標的とするマルチプレックス解析は、時間やリソースを節約し、同時に豊富なデータを含む結果をもたらすのため、細胞内フローサイトメトリーは、複雑な細胞シグナル伝達を解明するための貴重なツールとなります。フローサイトメトリー検証済み製品や最適化されたプロトコールについては、www.cellsignal.com/flowcytometryをご覧ください。