代謝は糖尿病や心血管疾患、肥満、その他先天性/後天性代謝異常など、多くの疾患において中心的な役割を果たしています。多くの場合、細胞の健康と機能の維持に必要な必須栄養素が体内で過剰産生されたり、十分に産生されなかったりする場合に代謝異常が起こります。これらの症状は、主要な酵素やホルモンの欠乏、異常な代謝反応、肝臓や膵臓などの主要臓器の疾患、栄養不足などが原因となって起こります。
糖尿病
I型糖尿病とII型糖尿病は代謝疾患で、血糖値が生理的に健常なレベルを慢性的に超えることが特徴です。
- I型糖尿病は、膵島のβ細胞の欠落によって身体が インスリン を産生できなくなることで発症します。
- II型糖尿病の原因はインスリン抵抗性で、身体の細胞がインスリンに適切に応答できなくなります。多くの場合、遺伝的要因と環境要因の組み合わせが原因です。過剰な体重や座りがちな生活習慣が、II型糖尿病を発症させる要因となります。
I型糖尿病におけるインスリンの欠乏とII型糖尿病におけるインスリン抵抗性はともに、インスリンシグナル伝達や、最終的にはグルコース代謝に深刻な影響を及ぼします。CSTは、インスリン受容体β、Erk1/2、 AKT ファミリーキナーゼのほか、 AMPK や LKB1など、糖尿病に関与するシグナル伝達経路の主要な構成因子の発現レベルや活性の評価に利用できる、最高品質の抗体をご提供しています。
心血管疾患
心臓病、心臓発作、脳卒中、冠動脈疾患などの心血管疾患は、世界的に主要な死因です。
- 糖尿病や肥満などの代謝障害は、心血管疾患発症の危険因子です。
- 心臓細胞における細胞内代謝経路の障害は、心臓が機械的な機能を継続するために必要な高効率のATP産生と分解を損なう原因となり、これに起因する心不全や心血管疾患の原因にもなります。
肥満
肥満とは、体重を身長の2乗で割った値である体格指数 (BMI:Body-mass index) をもとに、性別や年齢に従って判定したもので、体脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。
- 遺伝的な代謝障害が肥満の原因となる場合もありますが、多くの場合は座りがちな生活習慣や食習慣などの環境要因が関与します。
- 世界人口の約40%が肥満であり、予防可能な主要な死因と考えられています。
- 肥満はインスリン抵抗性とII型糖尿病の発症に関与する主要な危険因子です。
- 肥満とインスリン抵抗性を結びつけるメカニズムとして、肝臓への異所的な脂肪沈着、アディポカインやサイトカイン産生の増加、ミトコンドリアの機能障害などが挙げられます。
AMPKは脂質代謝と糖代謝の中心的な制御因子であり、肥満や糖尿病、がんなどの治療標的となる可能性があります。
その他の代謝疾患
糖尿病や肥満のほかにも、多くの先天性代謝障害が確認されており、現在、広範な研究が進められています。このような疾患としてライソゾーム病、アミノ酸代謝異常症、糖代謝異常症などが知られています。
- ライソゾーム病は、リソソームにおける酵素消化が適切に機能せず、巨大分子が蓄積して毒性の原因となる疾患群です。ライソゾーム病の例として、グルコセレブロシダーゼの欠損により白血球やマクロファージにスフィンゴ糖脂質が蓄積するゴーシェ病や、多臓器に脂質が異常に蓄積するニーマン・ピック病などが挙げられます。
- アミノ酸代謝異常症には、フェニルケトン尿症やメープルシロップ尿症などがあります。一般に、アミノ酸が適切に分解されず、蓄積して毒性の原因となる遺伝子疾患です。
糖代謝異常症は、主に糖代謝に必要な重要な酵素の機能障害により、糖の異化や同化に影響を及ぼす遺伝子疾患です。糖代謝異常症の例として、糖原病や グルコース-6-リン酸脱水素酵素 (G6PD)) 欠損症が挙げられます。