CSTブログ: Lab Expectations

Cell Signaling Technology (CST) の公式ブログでは、実験中に起こると予測される事象や実験のヒント、コツ、情報などを紹介します。

細胞代謝パスウェイ

詳細を読む
投稿一覧

細胞の恒常性の維持は、いくつかの主要な代謝経路の統制された活性によって制御されています。糖代謝、脂質代謝、グルタミン代謝、ヌクレオチド代謝などのプロセスは、細胞のエネルギー状態を維持し、細胞の機能を正常に保つために必要な構成成分を供給します。また、このような代謝経路の多くは、細胞外シグナル伝達の制御を受けます。例えば、インスリンは受容体を介し、グルコースや脂質の代謝などの重要なエネルギー機能を制御する主要なホルモンとして機能します。

炭水化物代謝

炭水化物は炭素、水素、酸素 (CHO) からなる分子で、炭水化物代謝はこれらの合成、分解、相互変換を担う全ての生化学的プロセスを指します。これによって生細胞に継続的にエネルギーが供給されます。

  • グルコースは代謝の主要な基質で、小腸で血流に吸収され、体内の各組織を循環し、インスリンシグナルによって取り込みが調整されて、個体の日常的なエネルギー需要の大半を賄っています。
  • グルコースはさらに解糖系と呼ばれるプロセスを経てピルビン酸に分解され、細胞の重要なエネルギー源であるアデノシン三リン酸 (ATP) が産生されます。
  • 主に肝臓や骨格筋でグリコーゲン合成により多糖類であるグリコーゲンに変換され、非常用燃料として蓄えられます。グリコーゲン分解により遊離グルコースが放出されます。

α-アミラーゼのIHC解析α-アミラーゼは、長鎖の炭水化物または多糖分子をデンプンやグルコースなどのより小さな分子に分解することで消化を助けるカルシウム金属酵素です。上:パラフィン包埋したヒトの膵臓組織を α-Amylase (D55H10) XP® Rabbit mAb #3796を用いて免疫組織化学染色し解析しました。

インスリンシグナル伝達

インスリンはグルコースや脂質の代謝など、重要なエネルギー制御を担う主要なホルモンです。

  • インスリンは、インスリン受容体チロシンキナーゼに結合して活性化し、IRSファミリーのタンパク質を含む基質アダプターがリン酸化されてリクルートされます。この下流で主にPI3K/AKTERK1/2経路を介したシグナル伝達が開始されます。
  • 脂肪細胞や筋肉細胞によるグルコースの取り込みを促進し、肝臓でのグルコースの合成を抑えることで、グルコースの恒常性を維持します。
  • 血糖値によって膵臓からのインスリン分泌が調節されます。

インスリン受容体シグナル伝達経路_20-ODA-41951インスリン受容体シグナル伝達経路。インスリンはグルコースや脂質代謝などの重要なエネルギー制御を担う主要なホルモンです。

脂質代謝

脂質は脂肪酸とその誘導体を含む一群の有機化合物で、水に不溶で有機溶媒に可溶です。脂質代謝は脂質の合成や分解に関わる生化学的プロセスを指します。

  • 脂質は細胞の重要な構造体 (膜など) の構成成分であり、多くの細胞のシグナル伝達ネットワークで機能し、細胞の機能を支えるエネルギーが豊富な燃料源でもあります。
  • トリグリセリド (中性脂肪) と呼ばれる複合脂質は、口や小腸での消化の際にリパーゼと呼ばれる酵素によって分解され、リポタンパク質によって血液中で輸送されます。
  • 脂肪酸は細胞内のエネルギーの供給源であると同時に貯蔵庫でもあります。脂肪酸は細胞質でアセチル-CoAとNADPHから脂肪酸合成酵素によって合成されます。これらはその後、リン脂質に代謝されて細胞膜の主成分となるとともに、細胞内シグナル伝達経路にも機能します。

リン酸化アセチル-CoA カルボキシラーゼのIF解析

パラフィン包埋したマウスの肝臓組織をPhospho-Acetyl-CoA Carboxylase (Ser79) (D7D11) Rabbit mAb #11818を用いて免疫組織化学染色し、解析しました。

脂肪酸合成酵素 (FASN) は、アセチルCoAとマロニルCoAからの長鎖脂肪酸の合成を触媒します。HeLa細胞をFatty Acid Synthase (C20G5) Rabbit mAb #3180を用いて免疫蛍光染色しました (緑)。アクチンフィラメントはDY-554 phalloidin (赤) で標識しました。DRAQ5™ (DNA蛍光染色試薬) の染色像を青の疑似カラーで示しています。

グルタミン代謝

アミノ酸であるグルタミンは、急速に増殖する細胞の重要な代謝燃料となります。

  • グルタミンは、血中と細胞内プールに最も豊富な遊離アミノ酸です。
  • 分裂中の細胞で高まるATP、生合成前駆体、還元剤の需要を満たすための基質として機能します。
  • 特異的なアミノ酸トランスポーターによってグルタミンは細胞内に入り、ミトコンドリアでグルタミン酸に変換され、TCA回路の中間体であるα-ケトグルタル酸の前駆体となります。
  • がん細胞はエネルギー需要の増加に対応するため、グルタミン代謝に依存していることが多いです。

グルタミン代謝経路_20-ODA-41951グルタミン代謝経路。グルタミンは、急速に増殖する細胞で需要が増加するATPや生合成前駆体、および還元剤を供給する重要な代謝燃料です。 

ヌクレオチド代謝

ヌクレオチド代謝は、核酸 (DNA、RNA) の基本構成成分の合成と分解に必要な一連の生化学的反応です。

  • ヌクレオチドには大きく分けて、プリン (アデニン、グアニン) と、ピリミジン (シチジン、ウリジン、チミジン) の2種類があります。ヌクレオチドはすべて、リン酸基と五炭糖から成り立っていますが、プリンとピリミジンは大きさと窒素塩基が異なります。
  • ヌクレオシド三リン酸 (ATP、GTP、CTP、UTP) の形のヌクレオチドは、アミノ酸やタンパク質の合成、細胞遊走や細胞分裂など、多くの細胞機能に必要な化学エネルギーの貯蔵庫としての役割を果たしており、リン酸の除去によってエネルギーが放出されます。
  • 環状ヌクレオチド (cGMPおよびcAMP) は、多くの細胞シグナル伝達カスケードにおいて重要なセカンドメッセンジャーとして機能し、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼと呼ばれる一群の酵素によって修飾されます。

CNPase_IF_20-ODA-41951ラットの小脳組織をCNPase (D83E10) XP® Rabbit mAb #5664 (緑) およびα/β-Synuclein (Syn205) Mouse mAb #2644 (赤) を用いて免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡で解析しました。DRAQ5® #4084 (DNA蛍光染色試薬) の染色像を青の疑似カラーで示しています。

その他のリソース

代謝関連の研究を可能とするシグナル伝達経路、ワークフロー、および製品リストを含む、弊社の細胞代謝のパンフレットをご覧ください:

eBookのダウンロード

20-ODA-41951

Chris Sumner
Chris Sumner
Chris SumnerはLab Expectationsの主任編集者でした。疾患治療についての読み書きをしていないときは、森の中をハイキングしたり、ギターを弾いたり、世界で一番のロブスター・ロールを探したりしています。

最近の投稿

正確なフローサイトメトリーデータの作成に不可欠な細胞調製のヒント

正確なフローサイトメトリーデータの作成には、特異性と感度の高いフローサイトメトリー検証済み抗体だけでなく...
Andrea Tu, PhD2024年11月6日

500種類以上の抗体を提供:Simple Western検証済みCST抗体で発見を加速

2022年以来、Cell Signaling Technology (CST) はBio-Techne社と協働し、Bio-Techneブランドである...
Chris LaBreck, PhD2024年10月23日

Menin-KMT2A阻害剤:急性骨髄性白血病 (AML) の有望な治療法

成人の急性白血病の約80%を占める急性骨髄性白血病 (AML) は、クローン性造血幹細胞および前駆細胞の無秩序な...
Homa Rahnamoun, PhD2024年10月16日
Powered by Translations.com GlobalLink Web SoftwarePowered by GlobalLink Web