バイオマーカーは、正常な生物学的プロセスや病態の指標として使用することができる内因性の分子です。このためバイオマーカーは、診断と予後予測、治療効果を判定するための重要なツールとなります。異なるタイプのサンプルの間でバイオマーカーの発現を比較することで、疾患の発生や進行の下地となる複雑なメカニズムを明らかにしていくことができます。
がん研究の分野では、様々な免疫アッセイ技術を利用してバイオマーカーを検出します。その中でも免疫組織化学染色 (IHC) は、サンプルの溶解が必要な解析法とは異なり、腫瘍と周辺のがん微小環境 (TME) の空間的な関連性の情報が得られる点において大きなアドバンテージがあります。このため、IHCでバイオマーカーの発現と局在に基づく新たな知見が得られることが期待されます。
IHCによるバイオマーカーの正確な検出には、特異性が高く、厳格に検証された抗体が必要です。CSTは、自社のすべての抗体の品質を守るために、あらゆるアッセイにおける抗体の特異性、感度、機能を確認するための一連の補完的な戦略である、Hallmarks of Antibody Validation (抗体検証における戦略) を遵守しています。IHC用のがんバイオマーカー抗体の検証方法を慎重に調整することで、信頼できる結果を確保できます。
このCancer Biomarkers Guide for IHC (IHC向けがんバイオマーカーガイド) eBookでは、がん研究に最も重要なバイオマーカーを7つのカテゴリーに分類して、抗体の選択を効率化し、複数のバイオマーカーのタイプを並行して研究することの価値に注目します。がんの発達と進行における免疫細胞の役割を研究しているか、制御されない細胞成長などの古典的ながんの特徴を研究しているかに関わらず、Cancer Biomarkers Guide for IHC (IHC向けがんバイオマーカーガイド) をダウンロードして、今すぐご自身の研究に最適な抗体を見つけてください。
がんバイオマーカーのタイプ
多くの場合、がんバイオマーカーは、特定のがん種の直接的な評価項目として使われると共に、がんの発生にも関与しています。よく知られた例として、多くの乳がんの重要な治療標的となっているHER2 (Human epidermal growth factor receptor 2) /ErbB2 や、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を推定するために日常的に利用されているPD-L1 (Programmed death ligand 1) などがあります。
IHCで検出されるその他のがんバイオマーカーには、リンパ球や骨髄系細胞の表現型や機能を示すマーカーがあり、腫瘍やその周囲のがん微小環境に存在するさまざまな免疫細胞の位置を特定するのに利用されます。これらは通常、がんが血管、繊維芽細胞、細胞外マトリクス (ECM) 物質にどのような影響を与えているかをよりよく理解するため、FibronectinやKeratinなどのTMEマーカーと一緒に研究さます。
IHCで上皮間葉転換 (EMT) マーカーを検出することは、がんの進行を評価する上で不可欠です。EMTでは、上皮細胞が極性と細胞間の接着能力を失った後、間葉系の表現型の特徴である遊走性と浸潤性を獲得します。これによって転移が可能となるため、EMTがどの程度起こっているかをモニターすることが重要となります。細胞増殖とアポトーシスの異常はがんの古典的な特性であり、増殖や細胞死、細胞周期停止のマーカーを検出することでも腫瘍の攻撃性を評価できます。
無秩序な細胞増殖も、がんの特性としてよく知られています。これには、細胞分裂の速度を落とし、DNA損傷を修復し、アポトーシスを促進する機能を持つ、がん抑制遺伝子の変異や欠落が関与していることが多々あります。IHCを用いてがん抑制因子をモニターすることで、がんの発生や転移、治療介入への抵抗性の促進において、これらのタンパク質が持つ役割を調べることができます。
バイオマーカーのタイプ、組織や臓器タイプごとのがんバイオマーカーの特定には、 IHC用がんバイオマーカーのeBookをご活用ください。