細胞が生化学的なエネルギーを栄養素からアデノシン三リン酸 (ATP) に変換する主要な代謝経路に、解糖と酸化的呼吸の2つがあります。
- アデノシン三リン酸 (ATP) は、全ての生細胞におけるエネルギーの主要な運搬体です
- ATPは次の3つの成分で構成されています:窒素塩基 (アデニン)、リボース (五炭糖)、三リン酸
- 加水分解によりATPがアデノシン二リン酸 (ADP) に分解されることでエネルギーが放出され、様々な細胞プロセスの燃料となります
解糖系の代謝における役割
解糖系はグルコースをピルビン酸に変換する代謝経路です。
- 解糖系は酸素に非依存的で、細胞質基質で起こります
- 解糖系の生化学反応で放出された自由エネルギーが、2分子のATPを純益として産生するのに用いられます
- 解糖系で産生されたピルビン酸は、通常の酸素条件下ではミトコンドリアに輸送されてトリカルボン酸 (TCA) 回路に入りますが、低酸素条件下では乳酸に変換されます
- 低酸素状態 (低O2)では、酸化的呼吸の減少を補い、細胞のエネルギー需要を満たすため、解糖系の速度が増加します
酸化的代謝と解糖系
酸化的呼吸は、細胞が栄養素 (主にグルコース) に蓄えられた化学的エネルギーを放出し、細胞活動の燃料とするための主要なメカニズムです。
- ミトコンドリアで起こり、その名の通り酸素を必要とします。
- 解糖系で産生されたピルビン酸分子からアセチル-CoAが産生され、TCA回路に入ってNADHやFADH2、ATPといった高エネルギー分子が産生されます
- 解糖系より効率が良く、酸化的呼吸ではグルコース1分子から30-36分子のATPが産生されます
正常細胞では酸化的呼吸が主要な代謝的エネルギー産生経路ですが、がん細胞では代謝のリプログラミングが起こり、酸素の存在下であっても解糖系に依存したエネルギー産生が起こり易くなります。この現象は、ワールブルク効果と呼ばれています。