抗体を購入するときは、検討しなければならない要素が多数あります。例えば、自分の細胞または組織モデルで使えるかどうか、使いたいアプリケーションで試験されているかどうかなどです。選択肢があまりなく必要なものを見つけるのが困難なこともあれば、実験で使えそうな試薬が複数あることもあります。
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、リコンビナント抗体
同じ標的でモノクローナル、ポリクローナル、リコンビナント抗体の選択肢がある場合、どのようにすべきでしょうか?これらの違い最も優れたものがあるのでしょうか?それとも異なる目的のためにデザインされたものなのでしょうか?これは複雑ですが、問う価値のある問題です。
ポリクローナル抗体とは?
ポリクローナル抗体は、同じ免疫原内の異なるエピトープを検出する異なるBリンパ球集団に由来する抗体の異種混合物です。ポリクローナル抗体は通常ラビットで製造しますが、研究者の必要性に応じて、有蹄動物 (ヒツジ、ヤギ、ウマなど)、齧歯類、ニワトリなどから製造することもできます。ポリクローナル抗体の製造は、通常、免疫付与された動物由来の血液を採取後、免疫グロブリンの単離、そして非特異抗体集団を除去するためのアフィニティー精製により行われます。ラビットは、より大きな抗体の多様性と、さらに、翻訳後修飾 (PTM) の有無に関わらず、低分子やペプチドなどの多様な抗原に対して免疫反応を生じうることなどから、他の種と比較して大きな利点があります。
モノクローナル抗体とは?
モノクローナル抗体は、免疫原内のエピトープ1つを検出する単一のB細胞クローンに由来する均質な抗体です。すべてのモノクローナル抗体は、ポリクローナル抗体のプールとして始まりますが、目的の一価のクローンを同定し、展開するために、選択またはクローニングプロセスを経て単離されます。モノクローナル抗体は通常、動物種や必要な抗体の種類に応じて齧歯類、ラビット、ラクダ科の動物より様々な方法で製造されます (詳細は下記を参照)。従来、モノクローナル抗体は、マウスに注射し腹水を収集するか、B細胞が発現する抗体を培養し上清を回収することにより、不死化したB細胞から安定したクローンとして生成されます。さらに最近では、免疫反応性B細胞から免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の遺伝子を組換えクローニングを行い、哺乳類細胞株のリコンビナント抗体の発現と製造ができるようになりました。
抗体製品
上述したように、抗体の製造方法は多数あります。一般的にポリクローナル抗体は、免疫付与された動物の血清から精製されます。モノクローナル抗体は、多数の異なる方法で製造できます。モノクローナル抗体の大半は、抗体を産生するB細胞ハイブリドーマを培養し、細胞から上清を回収することにより製造されます。この方法で生成した抗体は、抗体の力価と親和性に応じて、使用前に追加の精製が行われる場合もあります。
代替方法には、B細胞ハイブリドーマを適切な宿主の腹膜腔に注射し、一定時間後腹水を回収するというものなどがあります。この方法には、大量の抗体を短時間で製造できるというメリットがありますが、動物宿主を必要とし、脂質やその他の不純物を除去するための追加の精製ステップが必要であるというデメリットもあります。
代替方法としては、さらに、モノクローナル抗体の免疫グロブリン重鎖と軽鎖を発現ベクターにクローンし、抗体の製造に適した哺乳類の細胞株にトランスフェクトし、異所的に発現させ回収し精製することもできます。抗体の組み換え製造は、本質的に一貫性が保たれることや、抗体の遺伝子改変が可能となることから、抗体メーカーの間でますます多用される傾向にあります。
クローン性や製造方法に関わらず、すべての抗体は、実験で使用する前に目的とするアプリケーションで適切に検証する必要があります。クローン性、宿主種、アイソタイプに関わらず、どんなに優れた抗体であっても、使用方法を間違えると偽陽性や誤解を招く結果が得られる可能性があります。
ポリクローナル抗体 | モノクローナル抗体 | |
開発費と製造費 | 開発費と製造費が安い | 開発費は高いが製造費は安い |
開発と製造に必要な技術的専門知識 | 低 | 高 |
開発時間 | 短い (免疫付与から精製ポリクローナル抗体まで4ヶ月以内) | 長い (単離し均一性が得られるまで複数回のクローニングと選択が必要) |
検証にかかる時間 | 最初の検証後、新しいロットは一貫性を確保するために再検証が必要 | 一貫性のより高い製造方法だが製造ランの間の再試験が強く推奨される |
宿主動物種 | ラビット、ヒツジ、ヤギ、ウマ、トリ | マウス、ラット、ラビット、モルモット、アルパカ、ラマ |
製造方法 | 上清からの回収および精製 |
- 腹水または培養細胞上清からの回収および精製 - 哺乳類細胞株における重鎖と軽鎖の組換え発現 |
感度 | 複数のエピトープの組換えによる感度の上昇 (存在量の少ないタンパク質に最適) | 感度は抗体の標的エピトープに対する親和性に依存し、クローンの大半は親和性と機能性に基づき選択される |
特異性 | 多価であるために、標的以外とも反応する可能性あり | 一価の相互作用のため、特異性が高い |
性能の一貫性 | 抗原ドリフトなどの要因によるロット間変動のリスク | 選択方法と製造方法によるロット間の高い一貫性 |
親和性 | 抗体の不均一性により推定のみ可能 | エピトープと抗体が一価の特性を有するため測定可能 |
色素やその他の官能基への結合の可能性 | Yes | Yes |
安定性 | 高 |
ラビットモノクローナル抗体:高 |
関連診断製品または臨床診断製品として使用 | まれに | Yes |
治療薬として使用 | まれに | Yes |
抗体を遺伝子レベルで改変する能力 (ヒト化など) | No | Yes |