CSTブログ: Lab Expectations

Cell Signaling Technology (CST) の公式ブログでは、実験中に起こると予測される事象や実験のヒント、コツ、情報などを紹介します。

500種類以上の抗体を提供:Simple Western検証済みCST抗体で発見を加速

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2022年以来、Cell Signaling Technology (CST) はBio-Techne社と協働し、Bio-TechneブランドであるProteinSimple社が開発したJess™などの全自動Simple Western™用の、業界最高クラスのCST抗体を提供しています。現在、500種類を超えるCST®抗体がSimple Westernで検証されており、これらの抗体は、より信頼性の高い結果のより迅速な取得を可能にする、これまでにないハイスループット解析機能を持つ全自動プラットフォームを介して革新を促進します。

弊社の広範な製品ラインナップには、標的タンパク質分解やCAR-Tシグナル伝達、神経変性などの重要な分野の研究をサポートする多くの弊社独自の修飾特異的抗体が含まれており、常に新たな抗体の試験と承認が行われています。弊社の検証済み抗体を、推奨される抗体希釈条件で使用することにより、重要な研究プロジェクトのリスクを軽減し、限られたサンプルや貴重なサンプルであっても躊躇うことなく実施して信頼性と再現性の高い結果を取得できます。

CSTのシニアプロダクトサイエンティスト、Chris LaBreck。Simple Western Jess機器と共に。

CSTのシニアプロダクトサイエンティストのChris LaBreckとJessです。Chrisは本ブログ記事の執筆者であり、Simple WesternでCST抗体を検証するスクリーニングプロセスの設計と実施に尽力しています。また、すべての試薬の試験と承認に直接携わっています。 

次のプロジェクトを計画する際に、「CSTの抗体はSimple Westernでどのように検証されているのだろうか?」と疑問に思うかもしれません。本ブログでは、各抗体に対して行う包括的な試験の一例となる検証プロセスを紹介し、さらに、抗体を安心してお使いいただけるように詳しく解説します。

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CST抗体はSimple Westernでどのように検証されるか?

CST抗体はすべて、特異性と再現性を確実にするために、弊社独自の基準を順守しながらアプリケーションごとに厳密に検証されています。そのため、弊社抗体は何年にもわたり、最も引用された研究用試薬であり続けています。弊社は、Simple Western用抗体についても同様の厳密な方法で検証しているため、Bio-Techne社の「Simple Western Antibody Database」に含まれる500種類以上のCST抗体がSimple Westernで機能することを、自信を持って保証しています (お客様による試験結果を受けてDatabaseに追加されたCST抗体は保証の対象外です)。

弊社は、ProteinSimple社と協働し、抗体の性能を5つの主な基準に照らし合わせて試験するスクリーニング方法を開発および実施しました。以下の図1では、その一例を紹介しています。まず、各抗体に対し、1:10、1:50および1:250の3段階の抗体のタイトレーションによる検証と、幅広いサンプル濃度を用いた試験を行います。試験はJessで行い、Compass™ for Simple Western softwareを用いて解析します。

Simple Western検証済み抗体として承認されるには、以下の基準を満たす必要があります:

  1. 標的特異性: 同じ濃度のサンプルで同様の特異的なピークが取得できる
  2. S/N比: S/N比が20以上で、ピークシグナルがサチュレーションしていない
  3. ピークの高さ: ピークの高さは1,000から300,000の間である
  4. ベースライン:ベースラインがピークの高さの20%以下であり、閾値が10,000以下である
  5. コントロール: 一次抗体とJessの内部標準物質、またはサンプルと二次抗体との間に交差性を示さない (これらの間に余分なピークがないかを確認)

これらの基準を組み合わせてSimple Westernでの抗体の性能を確認することにより、抗体濃度がサチュレーションする希釈範囲を特定して推奨することができるため、より一貫した再現性の高い結果の取得が可能になります。 

それでは、弊社のPhospho-Akt (Ser473) (D9E) XP® Rabbit mAb #4060の検証試験から得られた結果の一部を、図1でより詳しく解説します(図に記載の赤色の数字は、上記の評価基準と対応しています)。この図では、3種類の異なる希釈率で希釈した抗体の性能を試験して得られた、SimpleWesternのレーンビュー (左) および電気泳動解析 (右) の結果を示しています。この#4060の例では、推奨濃度である1:10から1:50の希釈率でサチュレーションすることが分かります (図1の6のラベルを参照してください)。Simple Western Jessを用いたCST Phospho-Akt抗体の検証試験

図1:Simple Westernで行った#4060の検証試験の結果を示しています。左:Simple Westernの仮想レーンビューです。各抗体を、1:10 (青)、1:50 (緑)、1:250 (グレー) で希釈し、低濃度および高濃度のサンプルを用いて試験しています。右:3段階に希釈した抗体のタイトレーションの電気泳動結果です。3段階に希釈したCST抗体と幅広い濃度のサンプルを用いた電気泳動データを確認し、抗体のSimple Westernでの性能を評価します。

図1から、#4060が上記のすべての基準を満たしていることが分かります:

  1. 3種類の希釈率すべてが、予想される分子量と同じピークを示す
  2. 推奨希釈率で希釈した抗体のS/N比 (青と緑の曲線) が5,613またはそれ以上を示す
  3. 推奨希釈率で希釈した抗体のピークの高さ (青と緑の曲線) が100,000以上140,000以下の許容範囲内を示す
  4. ベースラインは10,000を大きく下回り、全ピークの高さの20%以下を示す
  5. 余分なピークがなく、交差反応性はごくわずかであることを示す(余分なピークがある場合、図1 (右) に色がティールやマジェンタの線が現れます。この例の場合、マジェンタの線は水平で、「5」のラベルの近くのベースラインにあります)

弊社は、標的の発現が陽性であることが既知のモデルを用いて各抗体の試験を行います。また、オミクスデータに基づいて標的の発現を決定し、直交的戦略を用いて社内でそれぞれ独立した検証を行います。#4060では、Jurkat細胞をCalyculin A (CalA) で処理したサンプルを使用しました。Jurkat細胞は、元々Aktを発現していますが、CalA処理によりリン酸化Aktの検出が高まるため、リン酸化Aktの発現制御の調査に有用なモデルとして知られています。

検証試験が完了した後、得られたデータが弊社の基準を満たした場合にのみ、その抗体のSimple Westernでの使用を承認します。アッセイの開始に必要な情報である承認された各抗体の推奨希釈範囲は、製品ウェブページの関連製品データシートに記載されています。

Simple Westernと抗CARリンカー抗体を用いた存在量が低いタンパク質の検出

Simple Westernは、サンプルをキャピラリー電気泳動で分離させた後、共有結合によるタンパク質の固相化を行い、免疫検出を用いて高度に管理された環境内でタンパク質を検出します。これにより、ピコグラムレベルの検出が可能となり、存在量の低いタンパク質を正確に定量できます。Simple Westernの高い感度と自動化により、従来のウェスタンブロッティングでは感度や特異性が不十分なため標的を正確に検出できなかった抗体でも、存在量の低いタンパク質を検出できます。以下では、弊社の抗CARリンカー抗体を用いた例を紹介します。

弊社の画期的な抗CARリンカー抗体は、フローサイトメトリーアッセイで幅広いscFv ベースのCARを検出できるように特別に設計されています。これらの抗CARリンカー抗体にはWhitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb #57710G4S Linker (E7O2V) Rabbit mAb #71645があり、様々な標識抗体として、またBSA&アジ化物フリー組成でも提供されています。

Whitlow/218リンカー抗体は、従来のウェスタンブロッティングでは検証試験で不合格となったため、当初はフローサイトメトリーでの使用のみに限定されていました。しかし、この抗体は、Simple Westernでは非常に優れた性能を示したため、これまでは不可能であったCAR-T細胞のシグナル伝達動態の正確な検出と定量的な特性評価が可能となりました (図2)。Whitlow/218リンカー含有のscFvベースのAnti-CD19 CARを発現するようにエンジニアリングされたJurkat細胞を、Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb #57710を用いてSimple Western解析しました

図2:親株のJurkat細胞 (黒線) とWhitlow/218リンカーを含むscFvベースの抗CD19 CARを発現するように改変したJurkat細胞 (Jurkat/CD19 CAR) (赤線) のライセートを、Whitlow/218 Linker (E3U7Q) Rabbit mAb #57710を用いてSimple Westernで解析しました。仮想レーンビュー (左) では、1:10で希釈した一次抗体を用いて検出した標的のバンドを示しています。対応する電気泳動解析 (右) では、親株のJurkat細胞 (黒線) およびWhitlow/218リンカーを含むscFvベースの抗CD19 CAR (Jurkat/CD19 CAR) を発現するように改変したJurkat細胞 (赤線) を1:10に希釈した一次抗体を用いて解析して得られた化学発光シグナルを、分子量別にプロットしています。両細胞株から調製したライセートで、134 kDaの非特異的なピークがみられます。この実験は、還元条件下で、Jessの12-230 kDa分離モジュールを用いて行いました。

これは、CST抗体をSimple Westernに用いることにより、従来のウェスタンブロッティングの限界をいかに超越できるかを示す非常に興味深い例です。Simple Westernは、存在量の低いタンパク質の検出感度が高いため、リン酸化などの修飾を正確に定量し、バックグラウンドノイズを低減したクリアなシグナルを提供できます。さらに、Simple Westernは必要とするサンプル量が少ないため、患者由来のCAR-T細胞や神経細胞集団のような量が限られたサンプルの研究が可能となり、従来のウェスタンブロッティングにおけるデータのばらつきや感度の低さなどの課題を克服できます。

Simple Western:従来のウェスタンブロッティングに代わる、より迅速な全自動プラットフォーム

Simple Westernに馴染みがありませんか?Simple Westernは、従来のウェスタンブロッティングに代わる、より迅速な結果の取得と定量を可能にする全自動プラットフォームです。キャピラリー電気泳動を用いているため、サンプルに含まれるタンパク質の分離と、ピコグラムレベルといった非常に感度の高い免疫検出が可能です。また、手作業のステップや人為的なエラーを大幅に削減可能であり、3時間以内に結果が得られます。

従来のウェスタンブロッティングは、数日かけて行うことが多い実験であり、いくつかの手作業のステップが必要なため、実験のエラーが生じる可能性が高くなります。さらに、従来のウェスタンブロッティングにおける化学発光ベースの検出は、定量が難しく、精度に限りがあります。Simple Westernでは、わずか3µLのサンプルで、より正確で再現性の高い結果が得られます。

従来のウェスタンブロッティングに用いられるCST抗体は、Simple Westernにも容易に適応させることができ、Simple Westernに関連する論文の4分の1以上に使用されています。ProteinSimple社とのパートナーシップの締結により、業界最高クラスの弊社抗体の性能を、全自動のSimple Westernワークフローにおいても保証できるようになりました。弊社の目的を明確にした検証は、Simple Westernアプリケーションに特化した最適な抗体希釈範囲の提供を可能とし、お客様のアッセイ開発の合理化をサポートします。

信頼できるSimple Western実験用の抗体

Simple Western検証済みCST抗体は、存在量の低いタンパク質やバイオマーカー、一過性の翻訳後修飾のハイスループットで再現性のある検出を可能にします。これは、創薬や個別化医療、限られた臨床サンプルを用いた疾患研究などに不可欠です。弊社抗体の感度と全自動のSimple Westernにより、実験間で一貫性のある結果が保証された、少量または貴重な患者サンプルの解析が可能になります。

全自動のSimple Westernで検証された500種類以上のCST抗体の幅広い製品ラインナップは、従来のウェスタンブロッティングを上回る結果を取得するのに役立ちます。また、弊社の目的を明確にした検証は、JessなどのSimple Westernプラットフォームでの、感度の高い、より迅速で再現性のあるアッセイ開発を可能にし、科学的発見を進めるための強力なツールを提供します。

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その他のリソース

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Chris LaBreck, PhD
Chris LaBreck, PhD
Chris LaBreckは、CSTのシニアプロダクトサイエンティストです。部門を超えて、様々な抗体製品の管理や開発、特性評価に携わると同時に、テクニカルサポートチームの一員でもあります。

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