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複数の抗体を用いた蛍光染色:マルチプレックス免疫蛍光染色の直接法と間接法の比較

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直接法および間接法によるマルチプレックス免疫蛍光染色 (mIF) は、特別な装置を用いることなく空間生物学を探索できる簡単な手法です。複数の抗体を1つのサンプル内で組み合わせて用いることにより、細胞タイプや細胞内構造体、細胞の機能状態を迅速に可視化して、組織内でどのようなタンパク質が共局在しているかや、これらの組織構造が疾患生物学とどう関連しているかを解析できます。

ロープレックスのIF実験の多くは、様々な方法で調製された細胞または組織で実施されており、使用する実験デザインに応じて二次抗体を用いた間接検出、または蛍光標識一次抗体を用いた直接検出のいずれかを用います。これらのアプローチは、一般的に用いられるIFワークフローや広視野顕微鏡、共焦点顕微鏡に適合しますが、パネルの構築やサンプルタイプ、今後開発されると思われるハイプレックス解析が可能なプラットフォームに用いる際にはそれぞれに利点や制限があります。

本ブログ記事では、同一アッセイにおける複数の抗体を用いた蛍光染色の実用的な2つの手法の違いを紹介し、キメラ抗体やSignalStar® Multiplex IHCアッセイのような新しいツールが、蛍光マルチプレックス技術をどのように進展させるかを解説します。

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間接免疫蛍光染色を用いた宿主種ベースのマルチプレックス染色

宿主種ベースのマルチプレックス化は、1つのサンプルで3-4種類のタンパク質を標的とするロープレックスのIF実験を設計する際に用いられる一般的なアプローチです。この手法では、異なる宿主種で作製された一次抗体 (例:ラビットとマウス) と各一次抗体の宿主種に特異的な、異なる蛍光を標識した二次抗体を検出に用います。これは、得られる蛍光シグナルが一次抗体ではなく二次抗体から発せられるため間接検出法と呼ばれます。

間接免疫蛍光染色法 ( 二次抗体を用いた宿主種ベースのマルチプレックス法 ) によるHeLa細胞のマルチプレックスイメージング。 間接免疫蛍光染色法およびキメラ抗体 ( 二次抗体を用いた宿主種ベースのマルチプレックス法 ) による新鮮凍結組織のマルチプレックスイメージング。 間接免疫蛍光染色法およびキメラ抗体 ( 二次抗体を用いた宿主種ベースのマルチプレックス法 ) によるFFPE組織のマルチプレックスイメージング。

間接免疫蛍光染色を用いた細胞や凍結組織、パラフィン包埋組織の宿主種ベースのマルチプレックス法 (IHC-P) 左:Chloroquine #14774で処理 (50 µM、一晩) したHCT 116細胞をLC3B (E5Q2K) Mouse Monoclonal Antibody #83506 (緑)、beta-Actin (13E5) Rabbit Monoclonal Antibody #4970DAPI #4083 (青) を用いて解析しました。

中央:凍結固定マウス小脳組織をbeta3-Tubulin (D71G9) Horse Chimeric Monoclonal Antibody #59820 (緑)、Iba1/AIF-1 (E4O4W) Feline Chimeric Monoclonal Antibody #87276(灰)、GFAP (E4L7M) Rabbit Monoclonal Antibody #80788 (赤)、DAPI #4083 (青)を用いて解析しました。ラビット一次抗体を、抗ラビットFc特異性二次抗体で検出しています。

右:パラフィン包埋ヒト扁平上皮肺がん組織をKI-67 (D3B5) Feline Chimeric Monoclonal Antibody #43021 (緑)、beta-Catenin Mouse Chimeric Monoclonal Antibody (黄)、Vimentin (D21H3) Rabbit Monoclonal Antibody #5741 (赤)、DAPI #4083 (青) を用いて解析しました。ラビット由来一次抗体を、抗ラビットFc特異性二次抗体で検出しています。

宿主種ベースのマルチプレックスを使う理由

宿主種ベースのマルチプレックス化の主な利点は、二次抗体を介して複数の蛍光色素が各一次抗体に結合してシグナルを増幅させるため、直接IF法よりも明るいシグナルが得られることです。また、この手法は実験デザインの自由度がやや高めであり、どの蛍光色素をどの一次抗体と組み合わせるかを選択できます。しかし、交差反応やバックグランドシグナルを回避するためには、高品質な二次抗体を用意し、プロトコールに二次抗体のインキュベーションステップを追加する必要があります。

宿主種ベースの間接IFは、培養細胞や凍結固定組織切片、様々なFFPE組織にマルチプレックスイメージングを導入するための優れた手法です。特に、既存の蛍光顕微鏡で2-4種類のマーカーを可視化したい場合に適しています。この手法用に構築されたパネルは、二次抗体や同様の間接検出方式を用いるハイコンテンツマルチプレックス空間生物学プラットフォームと基本構造が類似しているため、これらに適合する場合が多く、生物学的な解析をBio-Techne Spatial (旧Lunaphore) のCOMETシステムやその他のサイクリック免疫蛍光染色プラットフォームへと発展しやすくなります。

キメラ抗体を用いた宿主種ベースのマルチプレックス化の発展

これまで、宿主種ベースのマルチプレックス化には、ラビット以外の一次抗体の入手が困難であり、その品質が低いという制限がありました。しかし、十分に検証されたラビットモノクローナル抗体の結合ドメインをラビットとは異なる宿主種の脚部と結合させて作製されたCSTキメラ抗体により、この制限を取り除くことができます。各キメラ抗体は、元のラビットクローンと同じ特異性を示しますが、それぞれの異なる宿主種に特異的な二次抗体で検出が可能になるため、1回の実験でより多いチャンネルを使用できます。

ブログ:ラビット以外の抗体が使いたい:マルチプレックス解析にお勧めのキメラ抗体

CSTキメラ抗体は、一般的に用いられるIFやIHCのワークフローで機能するように設計されおり、凍結固定組織での使用が検証されているため、アッセイ条件やイメージング設定を変更することなく、既存の宿主種ベースのマルチプレックスパネルに追加できます。この柔軟性により、特異性と感度の高い抗体を用いた複雑なパネルの構築が可能になります。この手法は、神経科学や免疫学、その他の分野で確実なマルチプレックスイメージングを行うのに適しています。

間接IFプロトコールの概要 (宿主種ベースのマルチプレックス化)

以下は、異なる宿主種で作製された抗体 (例:ラビットやマウス) または代替的な宿主種のキメラ抗体、あるいはその両方を用いた間接IFの一般的なプロコールの概要です。実際には、製品ごとに推奨プロトコールが異なることに注意してください。

  • サンプル調製:製品ウェブページの推奨プロトコール、または各CST抗体のデータシートに従ってください。いくつかの最適化や追加試験が必要な場合もあります。

  • 抗原賦活 ( !! FFPE組織のみ !! ) :スライドを1X EDTA賦活化溶液に浸漬し、電子レンジで沸騰直前まで加熱してください。その後、沸騰直前の温度 (95-98°C) で15分間維持してください。冷却は不要です。
  • 洗浄:スライドを1X PBSで軽くすすいでください。

  • ブロッキング:二次抗体の非特異的な結合を防ぐために、ブロッキングバッファーで60分間ブロッキングしてください。

    • 注意: このステップは、1つのサンプルに異なる宿主種も特異的な複数の二次抗体を用いる場合に非常に重要です。

  • 一次抗体の希釈とインキュベーション:抗体希釈バッファーを用いて各一次抗体を製品ウェブサイトやデーターシートに記載の推奨希釈率になるように抗体希釈液で希釈してください。その後、サンプルからブロッキング溶液を吸引除去し、希釈した一次抗体を加えて4°Cで一晩インキュベートしてください。

  • 洗浄:1X PBSで3回洗浄してください (各5分間)。

  • 二次抗体の希釈とインキュベーション:二次抗体の希釈とインキュベート:各蛍光標識二次抗体を製品ウェブサイトやデーターシートに記載の推奨希釈率になるように抗体希釈液で希釈してください。その後、サンプルに希釈した二次抗体を加えて4°Cで一晩インキュベートしてください。

    • 注意:一次抗体の宿主種に特異的な二次抗体 (例:抗ラビットFc、抗マウス、抗ウマ、抗ネコ) を選択し、スペクトルの重複が最小限となる蛍光色素で標識してください。キメラ抗体を用いる際は、抗ラビット抗体ではなく抗ラビットFc特異的抗体を用いることが重要です。

  • 対比染色:対比染色を行う場合は対比染色用試薬 (DAPIなど) を使用し、褪色防止試薬で封入してください。

凍結組織用のパネルを構築する際は、固定方法や抗原賦活の条件がFFPE組織とは異なるため、IF-F (凍結組織用IF) で検証済みの、目的の生物種に対応した抗体を使用してください。同様の宿主種ベースのマルチプレックス戦略は、FFPE検証済み抗体を用いて適切な抗原賦活を行えば、FFPE組織にも適用できます。

蛍光標識一次抗体を用いた直接IF

直接IFでは、異なるスペクトルの蛍光色素が結合した複数の一次抗体を用いるため二次抗体は不要です。これは、特に使用するマーカーが2-3種類の場合に有効なマルチプレックス戦略であり、マルチプレックスイメージングを始めるにあたって、非常に効率的かつ効果的な手段となります。

蛍光標識一次抗体を用いた直接免疫蛍光染色によるHeLa細胞のマルチプレックスイメージング 蛍光標識一次抗体を用いた直接免疫蛍光染色法による新鮮凍結組織のマルチプレックスイメージング 蛍光標識一次抗体を用いた直接免疫蛍光染色法によるFFPE組織のマルチプレックスイメージング

蛍光標識一次抗体を用いた細胞、凍結組織、パラフィン包埋組織の直接IF 左:HaLa細胞をbeta-Catenin (D10A8) Rabbit Monoclonal Antibody (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #88187 (緑) 、MTHFD2 (E7A4L) Rabbit Monoclonal Antibody (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #64107 (赤)、DAPI #4083 (青) を用いて解析しました。

中央:凍結固定マウス結腸組織の切片を、E-Cadherin (24E10) Rabbit Monoclonal Antibody #3195 (赤) で標識し、その後、Rabbit (DA1E) Monoclonal Antibody IgG Isotype Control #3900を用いて、未結合の二次抗体結合部位をブロックし、beta-Catenin (D10A8) Rabbit Monoclonal Antibody (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #88187 (緑) および DAPI #4083 (青) で解析しました。

右:パラフィン包埋ヒト結腸腺がん組織をHLA-DRA (E9R2Q) Rabbit Monoclonal Antibody #97971 (Alexa Fluor® 750 Conjugate) (赤)、CD68 (D4B9C) Rabbit Monoclonal Antibody (Alexa Fluor® 488 Conjugate) #24850(黄)、Pan-Keratin (Type I) (E6S1S) Rabbit Monoclonal Antibody (Alexa Fluor® 647 Conjugate) #75435 (緑)、DAPI #4083 (青) を用いて解析しました。


直接IFのマルチプレックス法を使用する理由

直接IFのマルチプレックス化は、二次抗体ステップを省略した効率的なプロトコールを必要とする場合に適しています。作業時間を短縮し、ピペッティングのミスや二次抗体の交差反応などのリスクを軽減できます。1つの実験で同じ宿主種 (多くの場合ラビット) 由来の複数の抗体を使用することにより、種特異的な二次抗体の選択を気にする必要がなくなり、パネルの設計が簡単になります。

Virginia (Ginny) Bain博士 CST免疫蛍光染色グループリーダー

Virginia (Ginny) Bain
IFグループリーダー

「標識抗体を用いた直接IFは、非常に強力なツールであり、交差反応を気にすることなく同じ宿主種由来の抗体を用いてマルチプレックス解析できます。 

この手法では、すでに機能することがわかっている抗体を、より効率の良い方法で使用します。直接IFは、アッセイ設計を簡便化および効率化するソリューションです。」

 

直接IFでは、各蛍光標識一次抗体のシグナルを直接取得するため間接IFよりシグナルが弱くなりますが、標的の発現が中程度から高程度のレベルであれば多くの場合に十分なシグナルが得られます。直接IFは、標準的な広視野顕微鏡や共焦点顕微鏡で機能します。また、使用する抗体が該当するサンプルタイプ (凍結固定組織またはFFPE組織) においてIFで検証されており、選択した蛍光色素が使用するフィルターセットに適合している場合、培養細胞や組織切片のどちらにも適合します。これらのパネルは、使用する蛍光色素によってはLeica Microsystems社のCell DIVEマルチプレックスイメージングソリューションなどの一般的なイメージングプラットフォームでも使用可能です。

直接IFまたは間接IFのどちらを使用すべきか

  • 標的が低発現であり高い感度が必要な場合や、同じ一次抗体を異なる二次抗体と組み合わせて用いたい場合、キメラ抗体と二次抗体を用いた宿主種ベースのマルチプレックス染色に拡張する予定がある場合には、間接IF (宿主種ベースのIF) を選択します。

  • 標的が比較的高発現である場合やより短時間のプロトコールを希望する場合、マウスオンマウスのバックグランドを回避したい場合、1つの実験で複数のラビット抗体を組み合わせたい場合には、直接IFを使用します。

実際には、多くの研究室でこれら手法は組み合わせて用いられています。例えば、低発現の表現には間接法を用い、同じサンプル内の高発現のマーカーには直接法を用います。ただし、蛍光色素の選択やイメージング条件は慎重に設定する必要があります。直接法と間接法を組み合わせた複雑なパネルの設計については、こちらのブログをご覧ください:直接法と間接法を組み合わせたマルチプレックスIF:蛍光標識抗体を用いた戦略

異なる蛍光色素で標識された複数の抗体を用いた直接IFプロトコール

以下は、異なる蛍光色素で直接標識された複数の一次抗体を用いた直接IFの一般的なプロトコールの概要です。詳細は、各製品のデータシートのの具体的な推奨事項を必ず確認してください。

  • サンプル調製:製品ウェブページの推奨プロトコール、または各CST抗体のデータシートに従ってください。いくつかの最適化や追加試験が必要な場合もあります。

  • 抗原賦活 ( !! FFPE組織のみ !! ) :スライドを1X EDTA賦活化溶液に浸漬し、電子レンジで沸騰直前まで加熱してください。その後、沸騰直前の温度 (95-98°C) で15分間維持してください。冷却は不要です。
  • 洗浄:スライドを1X PBSで軽くすすいでください。

  • ブロック:ブロッキングバッファーで60分間ブロッキングしてください。

  • 抗体の希釈とインキュベーション:抗体希釈バッファーを用いて各一次抗体を製品ウェブページやデータシートに記載されている推奨希釈率になるように希釈してください。その後、サンプルからブロッキング溶液を吸引除去し、希釈した一次抗体を加えて4°Cで一晩インキュベートしてください。

  • 洗浄:1X PBSで3回洗浄してください (各5分間)。

  • 対比染色:対比染色を行う場合は対比染色用試薬 (DAPIなど) を使用し、褪色防止試薬で封入してください。

直接IFパネルを設計する際は、顕微鏡に適合する励起および放射のスペクトルが分離可能な蛍光色素を選び、スペクトルが重複しないように注意してください。CSTは、一般的な蛍光を含む幅広い直接標識モノクローナル抗体を提供しているため、基本的なマルチプレックス実験用の2-4色のパネルを簡単に構築できます。

まとめ:マルチプレックス空間生物学の次のステップ

間接法および直接法のマルチプレックスIFは、既存の顕微鏡や標準的なワークフローを用いてマルチプレックス組織イメージングや空間生物学の解析を始めるための最も手軽な方法です。宿主種ベースの間接IFおよび直接IF、またはそれらの組み合わせから適切な手法を慎重に選択してください。また、より多くの宿主種が必要な場合には、キメラ抗体を活用することにより特殊な装置を用意することなく、意義のある結果が得られるロープレックスパネルを構築できます。

研究課題がより複雑になり、FFPE組織でより多くのマーカーを検出したい場合または低発現の機能的標的を測定したい場合には、ロープレックスのIF以外にミッドプレックスな空間生物学プラットフォームが必要になることがあります。そのような時は、SignalStar Multiplex IHCアッセイをご検討ください:この技術は、オリゴヌクレオチドベースの増幅を採用しており、FFPE切片に含まれる複数の表現型マーカーおよび機能マーカーを同時検出が可能であり、ワークフローを繰り返し行うことなくわずか2日間で最大8プレックスのシグナルを増幅させた結果を取得できます。

関連ブログ: 抗体適合性に影響する3大要素:空間生物学の信頼できる知見を取得するためのマルチプレックス戦略の選択

初めて3色のIF実験を設計する場合でも、より高度なハイプレックス空間生物学への移行を計画している場合でも、使用目的に適した検証済みの抗体を選び、各アプリケーションで検証された抗体を選択し、サンプルタイプやイメージング環境に適合させて、将来的なプラットフォームの互換性まで考慮することが、信頼性の高い、生物学的に意義のあるデータを得るための確実な方法です。免疫蛍光染色やキメラ抗体、マルチプレックス空間生物学に関するCSTのリソースは、パネルの設計やプロトコールの最適化、またはロープレックスな顕微鏡解析からSignalStar技術などのミッドプレックスな空間プラットフォームへの移行に至るまで、各ステップをサポートします。

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Alexandra Foley
Alexandra Foley
Alexandra (Alex) Foleyは、複雑な研究を、実世界での応用するための魅力的な物語に翻訳することに情熱を持ったCSTのサイエンティフィックライターです。学部課程で分子生物学と英文学を学習した後のAlexのキャリアーは、ヘルスケアや科学における様々な領域に渡ります。Alexは、多くのトピックスについて学び、刺激的で魅了的なストーリを紡ぐことを楽しんでいます。

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