以前のブログ投稿「苦労しない発表:学術誌の抄録をどう書くか」では、学術誌の抄録を書くためのステップについてご案内しました。今回は、学会の予稿集のための抄録の書き方に着目したいと思います。論文と学会の抄録にはいくつかの類似もありますが、学会の抄録には、論文抄録とは異なる配慮とアプローチが必要です。
学会の抄録の目的
学術論文の論文と同様に、学会のための抄録は、あなたが学会で発表したい内容全体をまとめた、独立した要旨でなければなりません。しかし、あなたの発表を聴く人は、論文を読む人の2倍の人数がいます。あなたの抄録はまず、学会の評価委員によりあなたが学会発表に招待されるかどうかを決定するために使われます。また、どの演題が口演発表で、どの演題がポスター発表にふさわしいかを、評価委員が決めるための手助けともなります。第二に、その抄録は学会の予稿集に掲載され、参加者があなたの発表を全部聞きたいかどうかを決めるために使われます。
学会では、しばしば同時に多くのセッションが行われます。あなたもおそらく、参加したい多くのセッションの中からどれに参加するかを決めるために、予稿集を使ったことがあるでしょう。学術誌の抄録と同様に、どんな情報が あなたが このような決定をする際に役に立つかを考え、自身の抄録を書く際に心に留めてください。
予備的情報を集める
目的の学会を決めたら、Call for Papers (CRP) をよく読んで、応募に必要となる以下のような情報を得てください:
- アウトラインまたはテンプレート
- 書式の要件
- 単語数または文字数
- 補足的情報が必要なのか、あるいは任意か
- 応募の締切日
- 抄録の提出方法
- どのセッションを目標とするか
加えて、以前の何年かの学会予稿集を調べて、いくつかの抄録を読みます。あなたが興味を惹かれたり、学会に対して高いレベルの適応性を示す文章や情報があれば、メモしてください。これらの情報や文章は、評価委員も興味を惹かれ、その演題の受理につながった可能性があるのです。自身の抄録を書くにあたって、これらを参考にすることができます。
文字数の制限や、もしわかる場合には発表時間の情報を元にして、抄録と発表にあなたの研究内容のどのくらいを効果的に盛り込むことができるかを決めます。もし、あなたの研究全体を盛り込むことができず、一部のみしか発表できそうにない場合には、研究のどの部分が学会の趣旨に最も沿ったものであるかを決定し、それに焦点を当てます。
学会の抄録は、何よりも科学的な記述ではありますが、それを書くためのコツというのもあります。効果的に抄録を書けるようになるためには、時間と経験を要します。学会で初めて発表する場合には、研究室の同僚またはあなたの指導者にフィードバックを依頼してください。他の研究者に出し抜かれることが大いに懸念される場合には、どれだけのデータを載せるかを決めるにあたって、指導者や同僚からの助言が有用となるでしょう。最後に、現在進行中の実験について記載する際には、具体性と曖昧さのバランス (具体的な曖昧さ?) を見つけるための特別なコツがあります。
抄録のレイアウト
抄録では、4つの主な質問に答えなければなりません。
- あなたの研究が取り組んでいる問題や、データが不足している部分は何ですか?
- その問題を解決したり、データの不足を補うために、どんな方法を使おうとしていますか?
- どんなデータを取得しましたか? (あるいは取得している最中ですか?)
- 発表ではどのような発見について議論しますか?
抄録を書いている時にまだ研究が進行中の場合は、最後の2つの質問に答えるために、自分の研究計画と、現在までのデータの集積や評価を元にしてください。実際の発表の場では、新しい情報とデータを含めることができますので、このことについて悩みすぎて睡眠不足になる必要はありません。
ほとんどの学会の抄録は、以下の情報に加えて、その学会特有の要件が必要となります。各項目で示したセンテンスの数は、一般的なガイドラインであることに注意してください。あなたが応募する学会の要件に合わせて、文字数の制限を合わせてください。
イントロダクション (1 - 2文) 。タイトルの後、抄録の最初の文章では、読者の注意を惹きつけ、読み続けたいと思わせなければなりません。すぐに、あなたのトピックの最も深い部分に飛び込んでください。 慎重にゆっくりと近づく必要はありません!もし必要なら、そのトピックの最近の情報や興味について触れるために、第二の文章を付け加えます。
問題点 (1文) 。そのトピックに存在する問題点を明確に示しましす。それは、従来の研究方法の欠点や、より良い研究手法の必要性、データのギャップなどであるかもしれません。トピックスの理解を促すために、これらの欠点がなぜ問題を起こすのかを簡潔に述べてください。イントロダクションの最初の文章で、問題の提示を行うことも有効かもしれません。
解決方法 (1文) 。問題を解決するために何が必要かを述べます。
研究内容 (1 - 3文) 。あなたの仮説を述べ、研究デザインの概略を簡潔に述べます。
議論 (1文) 。あなたの研究がどのように問題の解決を助けるか、自分の見解を述べます。
結論 (1文) 。あなたの研究がどのようにトピックスの理解を深めるか、そして、将来の研究の方向性に影響を与えるかについて、強い結びの文章で仕上げます。
タイトル。抄録の草稿を作成した後で、それを読み直して、読者の注意を惹くために選んだ言葉とフレーズを選び出します。それらを、読者の注意を惹きつける効果的なタイトルを作成するために使います。良いタイトルは12語以下です。タイトルは、抄録の最初の文章と共に、学会の出席者がプログラムを探す時 (またはあなたのポスターの近くを通りかかった時) に、最初に見るものです。そのため、何が科学的に重要なポイントで、参加者に抄録を読んでみようという気にさせるのかを、多少の時間をかけて検証する価値があります。
抄録を書くためのステップ
学会の抄録を書くためのステップは、学術誌の抄録を書くためのステップと似ています:
- 書いているときに、編集したいという衝動にかられるかもしれませんが、我慢しましょう。編集は後で行います!
- 完成した草稿からしばらく離れ、それから改めて必要に応じてレビューと改訂を行います。
- 改訂した抄録を同僚にレビューしてもらいます。
- 校正に熟練した人に、最終的な抄録をレビューしてもらいます。
草稿を書く時には、それぞれの文章を簡潔、明確にし、読者があなたの発表の内容を知るために必要な最小限に絞ってください。草稿をレビューするときには、不必要な情報を削除し、スペルや文法の間違いを修正します。さらに、抄録を学会のガイドラインと照らし合わせ、抄録が要件に合致することを確認します。
抄録の提出に関する短いアドバイス:早ければ早いほど良いです!早く提出することで、あなたの専門性とその学会に対する熱意を示すことができます。また、締切日にサーバーがダウンしたり、インターネットの接続ができなくなってパニックを起こすことを避けることができます。
その他のリソース