Science誌と提携し、再現性の危機が叫ばれる中「責任ある科学」が意味することを探る5回シリーズのポッドキャストをお送りします。
「責任ある科学」シリーズのエピソード3では、研究室の外の現実世界に科学の恩恵をもたらすとともに利益も上げている会社について取り上げます。
科学産業における2人のリーダーとの対談です。
- Josh Ghaim, Johnson Johnson社Consumer RD部門CTO
- Roby Polakiewicz, Cell Signaling Technology社CSO
はじめに、情報の共有やアカデミアへの貢献といった観点で企業がいかに責務を負うとともに商業的にも成功できるかについて話し合いました。
Josh:「透明性が高ければ高いほど、より良い結果を得ることができます。例を挙げますと、数年前、私たちは全ての臨床データを公開することを決めました。これはJ&Jグループ内の製薬会社 (ヤンセンファーマ) から始まり、現在では他の部門でも行っています。私たちは実に多くの臨床試験を行っています。同業他社がそのデータを公開することは稀です。他社も臨床データを公開していると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、全てのデータが公開されているわけではありません。今回、私たちはより透明性を高める必要があると判断しました。公開された臨床データのいくつかが新たな発見につながるかどうかはわかりませんが、あなたもその責任を負うことができるのです。」
また、異なるモチベーションがどのように科学会のさまざまなステークホルダーを動かすかについて話しましたが、これは衝突や、ある決定に黒い意図があるなどと推測する必要があるというわけではありません。
Roby:「私たちのモチベーションは非常に異なっています。アカデミアの研究室の皆さんは知名度の高いジャーナルで論文を出版して、教授や准教授といったアカデミックポジションを得ることを目指しています。製薬業界の研究者は自身の担当するプロジェクトを進めることで、患者を助けるだけでなく、昇進も目指しています。ジャーナルはできる限り最良の論文を出版しようとしています。もちろん彼らには金銭的なモチベーションもあります。私たちは民間企業であり、アカデミア、製薬企業、ジャーナルなどと同様のモチベーションを持ちつつ、できる限り科学を推進しています。しかし、私たちは商業的な成功も目指しています。関心事は多少分かれているものの、私たち全員が同じフィールドにおり、全員が科学を正しい方向に推進しようとしています。」
また、活発なディスカッションは、どのような科学と商業化を重視するのが良いのか、公的機関と民間組織がどのように協力できるのか、にも集中していました。Joshは良いビジネスにつながり、周りの世界にも利益をもたらすことができる、という強力な見解を有していました。
「オーファンドラックの可能性についてお話ししましょう。私たちは公的機関と民間企業の間で度々不公平な取引をします。ある企業にとっては、オーファンドラッグを上市するのにかかるXドルは高く感じるかもしれません。資金に余裕のある人がアクセスできるようにしても、購入する人がいなければ、その化合物は無料提供されるか何らかの価格が付くことになります。こうした議論は進行中ですが、機会創出に繋がり得るものです。産業界が利益のすべてを得ようとすのでるはなく、また政府や公的機関が無料のものを得ようとするだけではないバランスの取れた公的機関と民間企業の関係を作る努力をしています。例えばエボラ出血熱の事例では、J&JやGSKなどの企業が先陣を切りました。私たちはこの件で一切の利益を上げていませんが、それは正しいことであったと確信しています。そして、両社と公的機関の協力により記録的な速さで臨床試験にまで進むという素晴らしい成果を挙げました。これは公的機関と民間企業という異なる業界が協力した素晴らしい事例です。競合他社同士が協力して迅速に結果を出せたことは非常に印象的でした。そして、残る課題は、危機が起こるのを拱いているのではなく、最大の課題に対処するために、どのようにしてこれを継続的にモデル化するかでしょう。」
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次回予告:できる限りオープンかつ責任感を持って科学や研究のプロセスを伝えるために熱心に働く人たちと話し、どうすれは科学の世界で起こっていることをより良く議論し、報告し、そして取り込んでいけるかという質問を問いかけます。責任ある科学:エピソード4はこちら。
「責任ある科学」の全シリーズはこちら:
- 責任ある科学:エピソード1 – はじめに
- 責任ある科学:エピソード2 - 撹乱者
- 責任ある科学:エピソード3 – 産業
- 責任ある科学:エピソード4 – 出版
- 責任ある科学:エピソード5 – 次世代