Science誌と提携し、再現性の危機が問われる中、「責任ある科学」とは何かを追求する5部構成ポッドキャストをお送りいたします。
「責任ある科学」シリーズのエピソード4では、科学普及産業の世界、すなわち最も効率的で公正かつ最適な方法で科学をより広い世界に効果的に伝達し、科学が発展し続けることができるようにすることを目的とする組織について、深く掘り下げたいと思います。
科学出版界における3人のリーダーとの対談です。
- Alison Mudditt, PLOS CEO
- Ivan Oransky, Retraction Watch共同創業者
- Richard Sever, bioRxiv共同創業者
私たちは、コミュニケーションの段階で科学が責任を持つことにおいて出版社が担うべき役割について話し合いました。
Alison:「科学界の報酬システムにおけるインセンティブには問題があり、最終的には研究機関やファンドによる対応が必要だと思います。しかし、出版社を含む私たち全員が、必ずしも優れた堅実な科学ではなく、刺激的で斬新な結果がはるかに発表しやすいシステムを存続させていることに重要な役割を果たしてきたことも事実です。出版社は、学術誌のブランドとインパクトファクターを利用して投稿を推進し、非常に高レベルの名誉あるジャーナルを作り上げてきました。 これがそのシステムに出版社が果たしている役割の一つです。」
また、論文の撤回が出版のエコシステムにどのように適合するのか、そして、これがアカデミアにおける貧弱なインセンティブ構造を修正するためのツールとして使用できるかどうかについても話しました。
Ivan:「経済学者たちは『人が悪なのではない、インセンティブが良くないのだ』と言います。これこそが日常的に科学の世界で起こっていることだと思います。論文の撤回自体は罪ではありません。科学論文が整理されるだけです。ですから、この良い行動がもっと奨励されてしかるべきだと主張したいです。例えば、死刑や厳罰は犯罪をなくすでしょうか?そんなことはなく、あくまで犯罪を制限しようとする取り組みの一つです。しかし、私たちは決して制限するつもりはありません。(科学における) 犯罪、不正行為や詐欺を完全に根絶することはありません。私たちができることは、少しでも減るように、あるいは起こった際に可視化できるように、多くの異なるツールや方法を開発することです。論文の撤回はそうした方法の一つではありますが、これは鞭であり、望まれる行動を奨励するには多くのアメが必要ですし、これこそが「責任ある科学」だと私は思います。」
最後に、プレプリントの重要性と、この種の出版物が、実際に科学者が論文内容に責任を持つことの妨げになるインセンティブ構造を打破するのにどのように役立つか、そしてこれが実際にスクープに打ち勝つのにどのように役立つかについてお話します。
Richard:「BioRxivは出し抜き防止装置とでも言えるものです。なぜなら、あなたが2018年1月1日に自分の業績をBioRxivに掲載すれば誰でもその情報を見られるようになり、他の誰かが同年6月にPNASに論文発表した場合、あなたの方が先で、他の誰かは6ヶ月遅れであることがわかるからです。良い事例が最近ありました。CRISPRに関する研究でJennifer DoudnaとBroad Instituteは競合関係にありました。彼らの論文は同じ日にサイエンス誌に掲載されましたが、Jenniferは何ヶ月も前にプレプリント版をBioRxivに掲載していたのです。そのため、最初にその発見をしたのが彼女であることが明白になったのです。」
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次回予告:次世代の科学界の撹乱者を取り上げます。彼らは研究者として、また起業家として、科学をより良く、より早く、より責任のあるものとすべく取り組んでいます。責任ある科学:エピソード5はこちら。
「責任ある科学」の全シリーズはこちら:
- 責任ある科学:エピソード1 – はじめに
- 責任ある科学:エピソード2 - 撹乱者
- 責任ある科学:エピソード3 – 産業
- 責任ある科学:エピソード4 – 出版
- 責任ある科学:エピソード5 – 次世代