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抗体の検証における戦略:直交的戦略

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抗体検証のための直交的戦略では、抗体ベースの結果を抗体ベースではない方法を用いて得られたデータに相互参照します。この方法は、既存の抗体検証データを確認し、その抗体に直接関連する効果やアーティファクトを特定するのに非常に重要です。このブログシリーズで概説されている他の戦略によって生じた結果を裏付ける追加の詳細なレベルを得るのに、直交的検証はしばしばパブリックドメインから得られるデータを利用します。

非抗体ベースの方法には、抗原標的に応じて、以前に公開された大量の結果の検索、オミクス技術 (ゲノミクス、トランスクリプトミクス、およびプロテオミクス) による発現解析の調査、およびin situハイブリダイゼーションやRNA-seqなど他の確立された抗体に依存しない方法の採用があります。

同様に、目的の標的に最も関連性の高い生物学的モデルが社内で実施される抗体の検証に使用されていることを、直交的戦略によって確かめることもできます。

最も簡易な形態の直交的戦略は、他の保証方法で得られた結果には非抗体ベースの検出方法による裏付け証拠が必要であるということを決定します。一例として、バイナリー戦略やレンジ戦略で得られた標的のポジティブあるいはネガティブな発現は、ノックアウトを確認する遺伝子シークエンシングや発現を確認するmRNAのトランスクリプトーム解析など、直交的アプローチによって常に確認する必要があります。

ここに記述した他の戦略と同様に、1つの情報源または個々の結果のみに依存するのはよい考えとは言えません。標的によっては、検証戦略のガイドとなる大量の発現や生物学的データ (相反するものもありますが) が利用できます。そうでない標的の場合は、抗体試験を裏付けるため適切な実験を社内で行う必要があるかもしれません。複数の信頼できるデータ源がある場合は、もちろん時間とリソースの節約になりますが、効果的な直交的検証を行うにはさらなる努力が必要です。

オミクスデータを用いた抗体検証

ウェスタンブロッティングや免疫組織化学染色などの確立された免疫染色技術は、抗体の特異性を迅速に視覚的に示しますが、これらの方法によって得られた抗体検証データは直交的な試験によって裏付けることが重要です。これを行う1つの方法としては、観察される免疫染色の結果が関連性のあるものかどうか、あるいは抗体に関連するアーチファクトによるものなのかを判断する助けとして、公表されているデータベース (CCLE、BioGPS、Human Protein Atlas、DepMap Portal、COSMICなど) からゲノムおよびトランスクリプトームのプロファイル情報を探し出すことがあります。

1つの例として、図1はNectin-2/ CD112 (D8D3F) rabbit mAbを用いた、多様な細胞株内のNectin-2のウェスタンブロッティングによる検出を示しています。RT4とMCF7では発現の上昇が目立っているのに対し、HDLM-2とMOLT-4での発現は最小限です。これらの結果は、RT4細胞ペレットとHDLM-2細胞ペレットの免疫組織化学染色による解析 (図2) にも反映されており、図3に示すように、2つの異なるアプリケーションからのデータは、ゲノミクスおよびトランスクリプトミクスデータに基づいて予測されるNectin-2の発現と非常によく相関することが明確に示されています。

様々なヒト細胞からの抽出物を、Nectin-2/CD112 (D8D3F) を用いてウェスタンブロッティングで解析しました。

図1:多様なヒト細胞からの抽出物を、Nectin-2/CD112 (D8D3F) (上) およびβ-Actin (D6A8) (下) を用いてウェスタンブロッティングで解析しました。

パラフィン包埋したRT4細胞ペレット (左) およびHDLM-2細胞ペレット (右) を、Nectin-2/CD112 (D8D3F) を用いて免疫組織化学染色で解析しました。図2:パラフィン包埋RT4細胞ペレット (左、高発現) およびHDLM-2細胞ペレット (右、低発現) を、Nectin-2/CD112 (D8D3F) を用いて免疫組織化学染色で解析しました。

正常化RNA発現

イメージング技法を用いて精製した抗体データの検証

様々なオミクス技術を補完するin situハイブリダイゼーション、RNA-seq、RNAscope®などの直交的手法によって、組織におけるタンパク質の発現や局在を検出することができます。これらのアプローチは、免疫細胞化学染色や免疫組織化学染色などのイメージング技術によって得た抗体データを検証するのに特に役立ちます。

図4は、Olfm4 (D6Y5A) rabbit mAbを用いたマウスOlfm4の免疫細胞化学染色による解析です。マウスの小腸でのポジティブ染色と結腸でのネガティブ染色を示しており、これはウェスタンブロッティングによって裏付けられています (図5)。観察された染色パターンは、in situハイブリダイゼーションを含む数多くの公開された直交的戦略と一致しています1,2。

パラフィン包埋した正常マウスの小腸 (左) および結腸 (右) を、Olfm4 (D6Y5A) を用いて免疫組織化学染色で解析しました。

図4:パラフィン包埋正常マウス小腸 (左) および大腸 (右) を、Olfm4 (D6Y5A) を用いて免疫組織化学染色で解析しました。

Olfm4を用いたマウスの免疫細胞化学染色による解析図5:マウス小腸 (ポジティブ)、マウス脾臓 (ポジティブ)、およびマウス小腸 (ネガティブ) からの抽出物を、Olfm4 (D6Y5A) (上) およびβ-Actin (D6A8) (下) を用いてウェスタンブロッティングで解析しました。

直交的戦略の成功の最も明確な基準は、遺伝子や標的タンパク質の既知あるいは予測される生物学的な役割と局在、およびその結果みられる抗体染色の間の一貫性です。これは、下流の実験で使われるモデルやアプリケーション内のすべての試薬の特異性と機能性を確認することの重要性を示しています。

ここに記述した他の保証方法と同様に、1つの検証戦略がそれだけで十分ということはありません。直交的戦略は、抗体の挙動が予測通りであるというエビデンスを提供するものですが、直交的戦略を他の方法と組み合わせ、抗体の性能に対する信頼を確実に得ることが重要です。

追加の抗体検証リソース

CSTの抗体の検証における戦略に関するその他のブログを読む:

参考文献

  1. Flier, G. V. D., Gijn, M. E. V., Hatzis, P., Kujala, P., Haegebarth, A., Stange, D. E., … Clevers, H. (2009). Transcription Factor Achaete Scute-Like 2 Controls Intestinal Stem Cell Fate. Cell, 136(5), 903–912. doi: 10.1016/j.cell.2009.01.031
  2. Flier, G. V. D., Haegebarth, A., Stange, D. E., Wetering, M. V. D., & Clevers, H. (2009). OLFM4 Is a Robust Marker for Stem Cells in Human Intestine and Marks a Subset of Colorectal Cancer Cells. Gastroenterology, 137(1), 15–17. doi: 10.1053/j.gastro.2009.05.035
Katie Crosby
Katie Crosby
Katie Crosbyは、Cell Signaling Technology抗体アプリケーションおよび検証部門のシニアダイレクターです。

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