助成金に応募しようと考えていますか?あるいは指導者から、助成金への応募を勧められていますか?そのような場合、何から始めたら良いのでしょうか?
はじめに:助成金の応募先を決定する
すでに助成金の応募先が決まっていますか? 例えば、K01:Research Scientist Development Award、K08:Clinical Investigator Award、NIH Research Project Grant Program (R01)、NSF Graduate Research Fellowship Program (GRFP) Fellowship、またはAmerican Heart Associationなど。 その場合は、問題ありません!もしまだ応募先が決まっていない場合は、国または民間の財団から提供されるものを含め、適切な助成金がどこであるかを検討する必要があります。
次に、助成金の申請書は、単なる研究提案書ではありませんので、必要な書類や締め切りなどのチェックリストを作成する必要があります。これらは、略歴、推薦書、所属機関で必要となる書類、所属機関内でのレビューなどを含みます。 (通常は、実際の助成金の締め切り前に、所属機関内での締め切りが設定されています。) 申請の準備という大きな仕事を、貴重な時間を割いて手助けしてくれる人たちのことを考え、彼らに感謝し、説明責任を果たす必要があります。レビュアーは、あなたが適切な支援、研究環境や設備、提案研究をやり遂げるためのチームメイトを持っているかを考慮します。すなわち、研究内容だけでなく、助成金に関わる全ての要因を重視する必要があります。
申請書全体を作成するために必要な時間を、慎重に見積ります。それができたら、まずは研究目的のページに取り掛かりましょう。あなたが、今まさに助成金の申請書に取り掛かろうとしている段階であれば、申請書の最も重要な部分が研究目的のページであることは、すでに耳にしたことがあるはずです。研究目的は、研究提案全体の基礎となり、ほとんどの場合、レビュアーの印象を大きく左右します。
研究目的を書く
研究目的のページは、一般的に4つのセクションから成り、以下に要約されます。
具体的な研究目的を記載するパラグラフでは、(以下の順序で)次のことを伝えなければなりません:
- 提案内容と、助成金機関の使命 (基礎研究、疾患、疾患や治療による死亡、医療関連コストなど) との関連性。例えば:
- 米国における肥満の蔓延は、冠動脈疾患や脳卒中、心筋梗塞、高血圧を含む循環器疾患のリスクを増大させている。このことにより、米国単独で1,000億ドルを超える医療費の負担をもたらしている。
- このトピックについて、現在知られていること:
- 肥満には、白色脂肪組織および褐色脂肪組織が、それぞれ異なる影響を及ぼす。白色脂肪組織 (WAT) とは異なり、褐色脂肪組織 (BAT) では高度に毛細血管が集中し、ミトコンドリアに富み、酸素消費量が多い。ヒト成人に活性BATが存在することが近年証明され、BATの量は年齢および肥満度と負の相関性を持つことが示された。胸部大動脈を取り囲む血管周囲の脂肪組織は、形態学的および生化学的にBATと類似している。マウスとヒトの両方で、血管拡張促進因子がこの脂肪組織から放出される。非侵襲的なイメージングにより、血管周囲のBATの量が、メタボリック症候群や冠動脈アテローム性動脈硬化と逆相関することがわかっている。
- 重要な未知の知識:
- しかしながら、既存の研究のほとんどが、内臓および腹部血管周囲のWAT様脂肪組織に着目したものであり、血管周囲BAT貯蔵脂肪中でのVEGF-A (血管内皮増殖因子-A) の正確な役割についてはほとんど知られていない。
次のパラグラフでは、関連する幅広い事項の説明から始まり、提案研究の焦点へと絞り込んで行く情報を記載します。このパラグラフでは、以下のことを明確に記述しなければなりません:
- 研究の長期的な目標
- 研究のすべての目的
- 研究の中心となる仮説
- 研究の論理的根拠
それでは、具体的な目標をリストアップしましょう。ここでの記載は、説明的であったり、目的同士がお互いに依存するものであったり、過度に野心的なものではいけません。たとえば以下の文章をご覧ください:
- 褐色脂肪細胞においてVEGF-Aを除去した新規マウスモデルの特徴を調べる。
上の表現は以下のように書き換えると、より良いものとなります:
- 褐色脂肪細胞由来のVEGF-Aの、BAT熱産生機能およびグルコース恒常性における役割を決定する。
それぞれの目的は、研究の中心的な仮説を導くための、作業仮説に沿ったものでなければなりません。また、実験方法や予想される結果についても簡潔に記載しなければなりません。
最後に、期待される結果のパラグラフを記載します。これは期待される結果と同時に、研究分野に与えるポジティブな影響を記載しなければなりません。例えば:
- 総括すると、我々の研究によってVEGF-Aの機能や褐色脂肪細胞におけるシグナル伝達を理解することにより、肥満やインスリン抵抗性の治療における新規のターゲットの同定につながることを期待している。さらに、新しいモデルマウスを利用することで、褐色脂肪細胞由来のVEGF-Aが血管機能に対して果たす役割を決定するだけでなく、肥満やその併存疾患の治療法やターゲットについての洞察を深めることが可能である。
もし可能であれば、提案の概要を図で示すことも、レビュアーの理解を深めるために有用です。レビュアーは、あなたの申請書と同様に綿密に作成された申請書を10本も読むことになるということを頭に入れてください。もしも、レビュアーがあなたの研究目的が合格レベルに達していると判断しなかった場合には、申請書全体のレビューが後回しにされてしまいます。そのため、第一ページ目の研究目的から、読みやすく良い印象を与えることが非常に大切です。
自身で納得のできるドラフトができたら、研究目的のページを、可能な限り多くの指導者と同僚に見てもらい、批評してもらうことが極めて重要です。この批評にかかる時間や書き直しにかかる時間も、必ずタイムラインに組み込んでおいてください!
ある賢明な教授は、17回のドラフトを作成しない限り研究目的のページは完成されない、と述べたことがあります。実際に17回必要かどうかはともかくとして、説得力のある研究目的のページを作成し、助成金を得るためのチャンスをできる限り大きくするためには、このくらいの努力を必要とします。このような知識を身につけた上で、さあ書き始めましょう!
ブログ投稿記事「助成金申請書を書く」シリーズはこちらからご覧いただけます:
- パート1:重要なことを先に
- パート2:重要性と革新性
- パート3:実験方法
- パート4:その他の追記事項
- パート5:申請書の細かい項目
- パート6:予算の正当性やサポートレターなど
- パート7:要約報告とレビュアーの評論の解釈
- パート8:採択の機会
追加的な助成金申請書の書き方のリソース
キャリアに関するアドバイスや、科学的なコツやヒントはCell Mentorポータルでもご覧いただけます。
申請書の記入例は、国立アレルギー感染病研究所 (National Institute of Allergy and Infectious Diseases) から提供されています。これは、どのような申請書が助成金を得ることができたかを知るのに良い例となります!