深夜までの作業、執筆の停滞などを乗り越え、申請書全体の最後の確認が終わりました。助成金申請書の初回提出あるいは改訂版の提出を行い、審査を受けた後、実際に助成金が得られるかどうかを待つ間は針の筵です。洗練され、内容も充実しており、仮説も合理的です。しかし、助成金に関する統計的な実際の数字はどのようになっているのでしょうか。
助成金の採択率
多くの財団は、助成金の統計について限られた情報しか公開していませんが、中には積極的に公開している財団もあります。例えばアメリカ心臓協会は、毎年各プログラムにおける採択率を公開しており、採択率は通常、応募件数の15 - 20%となっています。ただし、これはすべての民間団体に当てはまるわけではありません。
アメリカ国立衛生研究所 (NIH:National Institutes of Health) の場合も、様々な助成金制度の採択率に関する豊富なデータがあります。助成金の交付に関するデータや統計は、研究所やセンター (IC: Institute and Center) ごと、新規申請と競合的更新ごとなど、様々な指標で分類されており、これらは全てNIH Data Bookに掲載されています。
2020年、NIHは総額416億ドルの予算を獲得し、そのうち308億ドルが全ての競合的、非競合的研究助成プログラムに交付されました。これは56,169件の助成金交付で分配された金額です。研究所レベルを例にとると、2018年にはアメリカ国立がん研究所 (NCI:National Cancer Institute) は応募件数に対して11.3%、アメリカ国立眼病研究所 (NEI:National Eye Institute) は26.7%を採択しています。取り立てて驚くことではありませんが、NCIにはNEIの10倍の助成金の応募があります。その一方、NIH助成金の申請と交付については激しい議論が多く交わされますが、驚くべきことに過去10年間でNIHの全体の助成件数は増加しています。
実際には助成金のテーマと関係ない要因がNIHの助成金交付に影響する場合もあります。直近に開発されたNIHプログラムでは、新人や初期段階の研究者 (ESI:Early-stage investigators) の初回NIH Research Project Grant Program (R01)助成金獲得支援に重点が置かれています。過去にPIとして資金提供を受けたことがなく、最終学位を取得してから10年以内にPIとして応募した場合には、ESIとして扱われます。この指定には多くの利点がありますが、最も重要なことは、NIHの多くの研究所やセンターがESIのPIに優先的に助成金を交付することです。
新人研究者 (過去に資金提供を受けたことがない研究者) とEPIはともに、資金提供を受ける場合のペイラインが優遇されます。さらに研究部門は通常、新人またはESI PIが作成した申請書を、審査中の他の申請書とは別に検討し、要約シートの提供をより迅速に行います。このほか、NIH所長室 (Office of the Director) から、新人研究者向けの賞 (NIH Director's New Innovator Award) や早期独立向けの賞 (Director's Early Independence Award) も提供されています。
概して、NIH助成金の獲得は容易ではありませんが不可能でもありません。このため、申請書の作成に真摯に取り組み、説得力のある物語を構築することが成功への近道です。
ブログ投稿記事「助成金申請書を書く」シリーズはこちらからご覧いただけます:
- パート1:重要なことを先に
- パート2:重要性と革新性
- パート3:実験方法
- パート4:その他の追記事項
- パート5:申請書の細かい項目
- パート6:予算の正当性やサポートレターなど
- パート7:要約報告とレビュアーの評論の解釈
- パート8:採択の機会
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