CSTブログ: Lab Expectations

Cell Signaling Technology (CST) の公式ブログでは、実験台に向かう時間に期待すること、ヒント、コツ、情報などを紹介しています。

がんの特性:増殖シグナルの維持

詳細を読む
投稿一覧

がん細胞は自身の増殖を刺激します。これはすなわち、増殖シグナルを自給できるようになり、外部のシグナル (上皮成長因子EGF/ EGFRなど) に依存する必要がなくなることを意味します。細胞の増殖は、Akt、MAPK/Erk、およびMTORの3つの重要な経路に大きく依存しています。

がんの特性:持続的な増殖シグナル伝達Aktは、PKB (Protein Kinase B) としても知られる代表的なセリン/スレオニンキナーゼファミリーの1つで、Akt1、Akt2、Akt3の3つのアイソフォームが知られています。Akt1 (v-Akt) はがん原遺伝子として発見され、代謝や増殖、生存、転写、タンパク質合成など、様々な細胞機能の制御に重要な役割を果たしています。Aktは細胞内外の様々な刺激に応答して活性化され、この活性化に関与する最も重要な分子として脂質キナーゼPI3K (phosphoinositide 3-kinase) が知られています。PI3Kは細胞の生存維持の主要な制御因子で、アポトーシスを促進するパスウェイやタンパク質 (FoxO1など) を阻害します。

MAPK (Mitogen activated protein kinase) は、細胞の増殖や生存維持のシグナルを細胞表面の受容体から核へと伝える様々なシグナル伝達カスケードの中心的な役割を担っています。増殖因子による受容体型チロシンキナーゼ (RTKs) の活性化、インテグリンの作用、あるいは細胞のホメオスタシス変化 (ストレスなど) により、Erk (extracellular signal regulated kinase) やp38 MAPK、JNK (c-Jun N末端キナーゼ) のシグナル経路が活性化されます。それぞれのキナーゼはその後、c-JunやEts、Alk、ATFなどの細胞分裂や生存維持、修復、増殖を制御する転写因子の活性化を促進します。

mTOR (mammalian target of rapamycin) はプロテインキナーゼの一種で、ATPやアミノ酸のセンサーとして機能し、栄養素やエネルギーの供給状態と細胞増殖のバランスをとる役割を持ちます。mTORは、Akt、Erk、AMPKが関与する他のシグナル伝達経路によっても活性化または抑制されます。mTORは、一連の代謝酵素とその他プロテインキナーゼを制御し、脂質代謝や細胞増殖に関わる生合成、オートファジーなどを調節します。

増殖シグナルの維持に関わるパスウェイやタンパク質についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

がんの特性研究の標的に関する、完全なガイドをご覧ください。ダウンロードはこちら

がんの特性 (Hallmarks of cancer) はRobert Weinberg博士とDouglas Hanahan博士によって提唱され、Cell誌に発表されたものです1。彼らは、複雑ながんの性質を、より小さな特性に細分化して捉えることを提案しています。今回の記事では「増殖シグナルの維持」と題し、がんの特性の1つに関連する内容を記載しました。本シリーズの他の記事では、今回触れなかった他の特性についても解説します。

詳細は「がんの特性」シリーズのブログをご覧ください。

参考文献:

  1. Hanahan D, Weinberg RA. The hallmarks of cancerCell. 2000;100(1):57-70. doi:10.1016/s0092-8674(00)81683-9
  2. Hanahan D, Weinberg RA. Hallmarks of cancer: the next generationCell. 2011;144(5):646-674. doi:10.1016/j.cell.2011.02.013

    18-CEL-47850

Chris Sumner
Chris Sumner
Chris SumnerはLab Expectationsの主任編集者でした。疾患治療についての読み書きをしていないときは、森の中をハイキングしたり、ギターを弾いたり、世界で一番のロブスター・ロールを探したりしています。

関連する投稿

査読プロセス:査読の概要と査読者の推薦方法

査読とは、関連する学術分野の専門家が論文を独立して評価するシステムを指します。これは...
Kenneth Buck, PhD 2024年4月10日

パーキンソン病におけるオートファジー-リソソーム経路の特性解析

CSTは、PD研究を前進させるためにMichael J. Foxパーキンソン病財団 (MJFF) と...

従業員の意向を反映する世界各地への寄付活動:人道支援に15万ドルを寄付

寄付および助けを必要とする人をサポートするという考えが、Cell Signaling Technology (CST) の…
Krystyna Hincman2024年3月20日
Powered by Translations.com GlobalLink OneLink SoftwarePowered By OneLink